前回の構造図の中で、投資信託と不動産が抜けている、と書きました。
投資信託は「広い意味の仕組商品」で、不動産は「企業がオフバランスする場合には、リートなどに買われます」と書きました。そうして倉庫やオフィスビルなどが投資対象資産になるのです。
しかし不動産に関しては、そういうものより「自宅の購入や土地を相続した」といったことの方が身近な話です。
住宅購入と投資の関係
実際、自宅を買うのが人生最大の買い物とも言いますし、働いている期間のほぼ全てに渡って、住宅ローンの支払いやら家賃の支払いやらが憑いて来ます。あぁ「付いて」の間違いでした。
では、不動産を買うのは、投資でしょうか、消費でしょうか。
これは、両方の面があります。例えば、景気が悪くて地価が安い時に都心部にがんばって自宅マンションを買い、景気が回復して値上がりしたら、これを売って郊外の戸建てに移るということをした場合、この不動産の売買は投資の色合いを帯びてきます。
地価の推移も、株や為替の動きと一緒で、経済の動きを反映して値動きがあり、それはなかなか予測できないという点(投資リスクがある)でも株などと同じ考え方を使って検討することが出来ます。
一方で、住まないで暮らせる人は一般的にはいない(ホテル住まいしている大金持ちなどを除く)ので、誰でもどこかに住居を構え、そこに住んでいるでしょう。
その場合、自宅であるか、借家であるか、たいていはいずれかです。たまに職場が提供した仮住居にいるとか、ずっと放浪生活しているので寝袋が自宅、というような人もいるかもしれませんが、この連載のこれ以降は、特に必要がない限り、そういった特殊な事例は無視して話を進めます。
住宅購入に関わるリスク
自宅を保有している場合は、相続や現金購入で借金がない人と、住宅ローンを組んで購入した人がいるでしょう。住宅ローンはいずれ払い終われば、銀行の担保設定も取れ、完全に自分のものになります。
借家の人は住宅ローンがないかわりに、借りている期間中ずっと家賃を払い続けることになります。やがて親の家屋敷を相続するあてのある人は、それまで借家住まいでもよく、そうでない人は、将来的に自宅を購入するか、死ぬまで家賃を払い続ける選択をするか、ということになります。
これらの条件の違いが、投資判断全般に影響してくるのです。
これをみると、将来自宅購入の意思があるのに、まだ購入できていない人が一番多くのリスクを負っていることがわかります。地価上昇、家賃上昇、金利上昇のリスクです。
コストの面でも重いです。というのは、現在は家賃を払い続けているのに、それに加えて将来の自宅購入の頭金などの積み立てもしなければならないからです。
生涯借家であれば、周辺が人気化して家賃が上がってきたら、別の場所に引っ越してもいいです。ただし、引退して所得が亡くなってから死ぬまでの間の家賃を予め貯めておかねばなりません。
長生きすると、貯めたお金が足りなくなってしまうかもしれません。
不動産を保有していたり、相続の予定がある場合には、土地の値上がりは有利です。これから購入するなら、いざという場合の売却可能性を考えて、値上がりしそうな土地を買うべきです。
でも、実際には、そういうところは手が届かなかったり、値上がり予想が外れたりもします。そうすると分不相応な借金を抱えて、身動きがとれなくなります。
リスクからは逃れられない?
既にローンを組んでいる人は、変動金利の場合、金利上昇リスクを負い、固定金利の場合は高い金利コストを払い続けることになります。
また、将来の所得減少リスクを負っています。失業したり、不況で給料やボーナスが下がってしまったら、ローンの支払いが立ち行かなくなるかもしれません。
一方で、負債の額は変わらないので、インフレで名目所得が増加すれば、相対的に借金が楽になります。
当たり前のことですが、ローンがなく、自宅を所有している人は最も有利です。ただし、地価下落があると、資産の額が減ってしまいますので、結局はリスクから無縁という訳ではないのですね。
さて、それでは地価の動きはどうなっているのでしょうか?
それはまた次回。