昨年(2013年)に官民で議論が重ねられてきた「携帯電話の電波が心臓ペースメーカーに与える影響」について、総務省から新たな調査結果の発表および指針の改訂が発表されました。
従来は「LTE端末を含む現行の携帯電話の電波は心臓ペースメーカー機器に影響しない」ところまでが指針に盛り込まれていましたが、今回は携帯電話と無線LAN(Wi-Fi)を同時に使用した場合の影響について調査が実施され、これについても「影響なし」との結論に至ったのだそう。
これまでの経緯と、今回の調査・指針についてもう少し詳しく追ってみましょう。
これまでの経緯
電波出力が強力だった旧世代の2G携帯電話に合わせた指針が、3G向けに刷新されたのが2013年のこと。これによって携帯電話とペースメーカーの離隔距離は従来の22cmから15cmに改められました。ここでのWi-FiやPHS、RFID(電子タグ)などについての調査結果は関連記事でどうぞ。
普及が進んできたLTE端末についても、2013年末には総務省で影響測定を実施し「LTE端末による植込み型医療機器への影響はない」と発表されました。上の関連記事には、実験の詳細な資料へのリンクもあります。
携帯電話とWi-Fiの電波が同時に発射された際の影響
これまでの経緯を踏まえて、今回は携帯電話(W-CDMA方式)とWi-Fi(IEEE802.11n無線LAN)の電波が同時に発射された際の心臓ペースメーカーへの影響測定が実施されました。現行の各社スマホ端末はWi-Fi内蔵が当然となっているので、時流に即した動きと言えるでしょう。
30台の心臓ペースメーカーを用いて測定した結果、携帯電話端末実機からの影響はゼロ。実機テストより条件の厳しいスクリーニング測定では2台のペースメーカーにレベル2(動機、めまい等の原因になりうるが、その場から離れる等、患者自身の行動で現状を回復できる)の影響が出たとのこと。
とはいえ、影響が出た機器も、実機での再測定では影響が見られなかったのだそう。さらに影響の要因の大半はWi-Fiではなく、携帯電話側の電波であったといいます。
いずれにしろ、普段使うスマホからの健康や医療機器への影響について、こうして科学的なデータが発表されるのはありがたいことですね。きちんと理解することで生活の安心感につながります。
平成25年度電波の医療機器等への影響に関する調査結果及び当該結果に基づく「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」の改訂 [総務省]
「電波の医療機器等への影響に関する調査」 報告書 (PDF)
「各種電波利用機器の電波が植込み型医療機器へ及ぼす影響を防止するための指針」 新旧対照表(PDF)
(ワタナベダイスケ)