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荻上チキ責任編集
“α-Synodos”
vol.124(2013/05/15)
基本に戻って問い直す
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★今号のトピックス
1.対談/湯浅誠×大西連
社会的な綱引きを超えて――これからの生活困窮者支援
2.政治家アウンサンスーチーをどう見るか
………………………根本敬
3.さらさら。
………………………大野更紗
4.東日本大震災――いま、もう一度確認したいこと/目を向けたいこと
………………………標葉隆馬
5.「第三者による検証」という言葉をとらえ直す――事故や災害の検証を行うべきは「誰」なのか
………………………八木絵香
○編集後記・・・山本菜々子
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chapter 1
湯浅誠×大西連
社会的な綱引きを超えて――これからの生活困窮者支援
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ミクロはマクロと相いれないものなのか
生活困窮者支援に携わる二人が
熱い議論を交わし合う
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◇外に伝える
大西:お久しぶりですね。ぼくと湯浅さんは「もやい」で活動していた時期はあまりかぶっていませんが、同じような問題意識をもっているし、同じような問題にコミットしているということで、ぜひ、ゆっくり深いお話をしたいと思っていました。
湯浅さんは今、主に政治決定プロセスに関わっているかと思いますが、一番取り組みたいことというのはどのようなことでしょうか。
湯浅:いくつかありますね。短期のものと、中期のものと、長期のものです。短期は、参院選に向けて。中期は対人社会サービス、それは「もやい」がやってきた領域でもあるんだけど、それを地域活性化の4本目の柱にしていくための取り組み。長期は、民主主義の課題、「政治を語る作法」を豊かにするというプロジェクトをはじめています。
大西:短期の部分で、参院選はすごく大きなターニングポイントになると思いますが、湯浅さんとしてはどうコミットしていくつもりですか。
湯浅:難しいですね。「これだ」と一番言いづらいのが短期の課題です。安倍政権の支持率も高いし、参院選で自分が望む結果がだせるのかというと難しい状況なのかもしれない。たとえば、参加型民主主義の問題を広めたり、選挙とか政治について語れる空間を増やしたり、非常にコアな部分ではある特定候補を応援したりと、その中でできることを模索しているという状態です。
大西:中期では、地域活性化の「4本目の柱」に対人社会サービスを、とのことでしたが、その「4本の柱」とはなんでしょう。
湯浅:日本の地域活性化は、伝統的にカンフル剤として公共事業が使われて来ました。最近、補正予算で、20兆円もの予算がついたけど、それはあくまでもカンフル剤で、長続きするものではありません。
そんな中、公共事業に変わる地域活性化には3本の柱があると言われています。古くから言われているのが、農業・漁業の六次産業化です。2本目は、観光産業で、平泉を世界遺産にするなどさまざまな取り組みが行われている。そして最近は3本目の柱に自然エネルギー産業が言われています。この3つで、地域経済の新しい形の自立をつくっていこうという動きが起きているんです。
そんな中、4本目の柱として、対人社会サービスをすえられないかと考えています。医療・介護や子育てだけではなく、私達がやってきたような、制度に頼れず貧困に陥ってしまうような人達も含めたものです。最近はすごくリスクが個人化されています。親の介護があったら仕事を辞めざるを得なくなって、介護をずっとやっていくうちに介護鬱になってしまったりだとか。
大西:生きづらく、より困難な社会になっているということですよね。
湯浅:そうですね。たとえば、介護サービスの手が届かないところに、宅配サービスをやるような事業展開をしたり。さまざまな試みが始まっていて、これが都心部から遠い、いわゆる田舎にいけばいくほど、上手くいけば費用対効果というのは極めて高いんです。
大西:産業にもなりますよね。
湯浅:成功している事例もあります。私のイメージだと、山道に舗装道路をはじめて通した時のような費用対効果の高さです。みんな乾いているので、大地に水がしみこむように取り組みが浸透していく。極めて費用対効果の高い事業なんだけども、まだまだ一般的には財政負担としか思われていない。支出すればするほど、負担が増えていくだけだと思っています。ここを転換して、4つ目の柱として位置づけていくというのを、3年~5年位かけてやっていきたいと思っています。それが、中期的な目標です。
大西:ぼくも新宿でホームレス支援をやっていて、同じようなことを感じています。でも、どうやってやったら上手くいくのかなというのは悩んで考えているところです。湯浅さんの中で、答えは見えてきていますか。
湯浅:そのことに関心がない、接点がない、負担でしかないという人達に、どう届けていくのか、それが事業として自立しうるもので、実は費用対効果も高い。だから、あなたが恐れているように、財政負担にはならないし、あなたの負担が増えていくわけではないと、伝えるということが大事だと思います。
1つは、地域の成功事例を連載し世の中に伝えるというのがあります。対人社会的な取り組みが、財政負担だとしか思っていないのは、こうした分野に接点が今までたまたまなかった中間層の人だと思うんです。この人達には、事業として自立しうるものなんだと示さなければならない。そのために、ビジネス紙に成功している事例を紹介していくという連載を考えています。それを積み重ねていって、どこかの時点で書籍化したいですね。
2つ目は、今、費用対効果が高いというのは、あくまでも私の意見なんです。なので、研究者を集めて、研究会をし、数字的に裏付けられるということを試算する。
3つ目は、マスメディアなどと協力し、地域の先進的な事例を日本地図に落とし込んでいくようなイメージを広げたいです。
このようにコーディネートして全体の機運を盛り上げていきたいですね。私以外にもそういうことを言っている人は沢山いるし、メディアでもそういう話が出始めているんだけど。やっぱり知らない人の方が圧倒的に多いので。外に届けていくということをしていきたいし、その準備をしています。
◇感じる違和感
大西:ホームレスのおじさんと接していたり、相談の電話を受けたり現場のミクロな部分で動いている一方で、最近たとえばシノドスなどの媒体に文章を寄稿するようになったり、他の団体と接するようになったりと、湯浅さんのやっているマクロの取り組みの意義をすごく理解できるようになったと思っています。
でも、だからこそ少し違和感を覚えることもあったりして。マクロの取り組みの大切さはわかった上で、湯浅さんはミクロな取り組みについて、どう考えているのかなと。
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