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「教養」と「リテラシー」を高める月刊誌
“α-Synodos”vol.318(2023/12/15)
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01 シノドス・オープンキャンパス「メタ倫理学」佐藤岳詩
佐藤岳詩
北海道岩見沢市生まれ。専修大学文学部教授。博士(文学)。専門はメタ倫理学、応用倫理学。主な著作に『メタ倫理学入門』(勁草書房、2017)、『「倫理の問題」とは何か メタ倫理学から考える』(光文社新書、2021)、『心とからだの倫理学――エンハンスメントから考える』(ちくまプリマー新書、2021)など。
はじめに
メタ倫理学という学問のことを知っている人は、どれくらいいるでしょうか。おそらくほとんどの人は名前も初めて聞いたのではないでしょうか。そもそも、倫理学でさえ何だかよく分からないのに、それにメタが付くとますます意味が分からないと言われてしまうかもしれません。ですが、たとえば次のような会話を考えてみてください。
A 「ねえ、○○社って、商品はすごく安いけど、それは児童労働とかでコストを下げてるからなんだって。とんでもない悪徳企業だよ」
B 「ふーん、でも児童労働の全部がそんなに悪いことなの? 小学生はともかく中学生くらいなら、本人の意志で働いたって悪いとは限らないんじゃない?」
A 「そんなことないよ。中学生だってまだまだ身体的にも精神的にも未熟だし、学業にも差し障るんだから、児童労働は大人による不正な搾取だよ」
B 「そうかなあ。そうだとしても、それってAの意見だよね。倫理観なんて人によって違うんだから、それを他人に押しつけるのは違うんじゃない?」
A 「そんなこと言ったら、暴力とか虐待が悪いかどうかも人それぞれってことになっちゃう。そんなのおかしいよ。誰にとっても悪いものは悪いはずだって」
B 「はあ、でも悪い悪いって言うけど、だいたい、悪かろうと悪くなかろうと、虐待をする人はするし、結局、儲かるなら子どもを働かせる企業はなくならないでしょ。結局、法律で許されているかどうかが大事なんであって、悪いかどうかなんてたいした問題じゃないんだよ」
A 「そりゃそうだけど、でも中にはそれが本当に悪いことだって分かってない、って場合もあるだろうし、それは悪いことだって前提があるから、法律で規制する、って話にもつながるんでしょ。やっぱり悪いか悪くないかは大事だよ」
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