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「教養」と「リテラシー」を高める月刊誌

“α-Synodos”vol.316(2023/10/15)

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01 シノドス・オープンキャンパス「計量社会学」筒井淳也


筒井淳也 

立命館大学産業社会学部教授。専門は家族社会学、計量社会学、女性労働研究。1970年福岡県生まれ。一橋大学社会学部、同大学院社会学研究科博士課程後期課程満期退学、博士(社会学)。著書に『仕事と家族』(中公新書、2015年)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書、2016年)、『社会学入門』(共著、有斐閣、2017年)、Work and Family in Japanese Society(Springer、2019年)、『社会を知るためには』(ちくまプリマー新書、2020年)、『数字のセンスをみがく』(光文社新書、2023年)など。


データサイエンス系学部の隆盛

 

本稿の目的は、計量社会学への招待なのですが、これから大学へ進学することを考えておられる方々を念頭において、最近目立ってきた大学学部の動向についてまずは触れさせてください。

 

2023年度、一橋大学が実におよそ70年ぶりに新学部を開設しました。「ソーシャル・データサイエンス学部」です。ここ最近、新設される大学の学部の多くが、データサイエンスに関連する学部です。以降、横浜市立大学、名古屋市立大学、京都女子大学などが続き、新たにデータサイエンス系学部を設置しました。2024年には、明治学院大学が、当大学初めての理系学部である「情報数理学部」を開設予定です。データサイエンスを専門とする学部内のコース(学科)の設置を含めると、新規設置の数はかなりのものになります。

 

データサイエンス系の学部の設置のはしりは、2017年の滋賀大学による「データサイエンス学部」で、意外に思われるかもしれませんが、統計学やそれに関連する学問が核となる学部の設置は、これが日本で初めてのことでした。これまで日本では、計量分析の方法は各学部(理系学部の情報科学系コース、経済学における計量経済学、社会学部における調査統計、その他心理学や経営学など)においてバラバラに行われてきたのです。

 

この動きからは、二つのことが読み取れます。一つは、これまでの計量分析教育が、学部・研究科内での講義の設置でなんとかなってきた、あるいは「それでよい」と考えられてきたことです。計量分析は何らかの対象(労働でも教育でも家族でも)について研究するための「方法」なのであって、それだけを学ぶことは不自然だと考えられてきたこともあるでしょう。