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「新しいリベラル」のための月刊誌
“α-Synodos”vol.299(2022/5/15)
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〇はじめに
いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。編集長の芹沢一也です。最新号をお届けします。今号も大変熱量の高い原稿を掲載することできました。
01.金山準「プルードンと会社のコモン化」
2022年10月1日から、「労働者協同組合法」が施行されます。組合員が出資し、事業に従事することによって、事業に組合員の意見が反映されることを目指すこの法律は、労働者の経営参画を通して、「ディーセント・ワーク」(働きがいのある人間らしい仕事)を実現しようとするところにその意義があります。これは思想史的には、「自主管理(autogestion)」の名で19世紀以来探求されていたもので、その一源流にそびえるのが、アナーキズムの祖として知られるプルードンです。金山準さんに、プルードンの自主管理論とそのアクチュアリティについて論じていただきました。
02.柿埜真吾「資本主義と自由(1)大きな政府が招く自由の危機」
「私人の財産権は最も基礎的な人権であり、強制立ち退きはつまり、基本的人権の剥奪なのだ。…完全な財産権がなければ、公平な取引の権利もない」。ノーベル平和賞を受賞し、中国共産党の弾圧のもと非業の死を遂げた劉暁波の言葉です。資本主義という言葉を聞くと条件反射で批判的な人が、とくにインテリのあいだに多いですが、これはとても残念な傾向です。歴史を紐解けば、そして現在の世界を見渡せば、資本主義が保障する経済活動の自由が、基本的人権を支える不可欠な役割を果たしているのは明らかです。なぜ財産権が重要なのか、柿埜真吾さんに論じていただきました。
03.荻野幸太郎「表現の自由と、表現の場をめぐる自由の現在と未来」
「表現の自由」や「集会の自由」を実質的に支えているのは、言論の生起を可能にするインフラです。しかし近年、このインフラの使用をめぐって軋轢が起こっています。自治体が設置した会議室やホールをイベントに貸し出すときに、イデオロギー的に対立する勢力がさまざまに圧力をかけたりするのは、もはや見慣れた風景となりました。法理論的にはすでに論じつくされたこの問題ですが、しかし、行財政改革によって「公の施設」のあり方が大きく変わってきたために、「教科書通り」の対応が今後難しくなっていく可能性がある、このように荻野幸太郎さんは指摘します。
04.加藤博章「湾岸戦争後の国際貢献の一形態――小沢一郎の人的貢献論を中心に」
戦後日本はいくつかの画期をもっていますが、そのうちの一つを画したのは間違いなく小沢一郎だと思います。とくに政治制度改革と冷戦終結後の安全保障構想を考えるとき、小沢一郎は欠かすことのできない人物です。この記事では、加藤博章さんに、小沢一郎の安全保障構想がどのようなものだったのかを解説してもらいました。小沢の構想は実現しませんでしたが、現在、国連が機能不全に陥るなかで、ふただひ世界が分断されようとするなか、日本がどう振舞うのかを考えねばならないとき、振り返っておくべき「歴史」だと思います。
05.橋本努「今月の一冊――『アセンブリ』(アントニオ・ネグリ=マイケル・ハート)」
かつて福祉国家的な規律権力を批判することが、左派の支配的なモードでした。このモードは90年代の国民国家批判まで持続したように思います。しかし、国家あるいは権力がそれに対抗するかたちで新自由主義的な振る舞いを採用し、国民の生存への配慮を後退させる中で、規律権力批判はその思想的なポテンシャルを失っていきました。そして、ご存じのように左翼は新自由主義批判一色になるのですが、新自由主義を乗り越える社会ヴィジョンを打ち出せていません。橋本努さんの『アセンブリ』の紹介を読むと、本書のメッセージは「新自由主義の理念を、もっと徹底的かつ根源的に追求せよ」ということにあります。このラディカルな呼びかけが展望する世界はどのようなものなのでしょうか?
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