“α-Synodos” vol.285(2021/3/15)
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〇はじめに
いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。編集長の芹沢一也です。最新号のvol.285をお届けします。
Chapter-01「新型コロナウイルスをめぐる陰謀論」平井和也
陰謀論が広まるという現象自体は決して新しいものではありません。理解を超える出来事が発生したり、社会的な大変動に渦中にあるとき、陰謀論はそれこそウィルスのように拡散します。しかし、近年は、そこにSNSが絡み合って、その様相がより劇的なものになっています。今後、健全な民主主義の最大の敵のひとつとなることは間違いないでしょう。われわれは陰謀論のメカニズムを真剣に学ぶ必要があります。
Chapter-02「ヨーロッパのゴミ最前線――テイクアウト、店頭、ネット通販でゴミを減らすには」穂鷹知美
日本に暮らしいているあまりピンときませんが、ヨーロッパでは環境問題への危機意識はきわめて高く、政治、企業、そして市民が一丸となって、多様な活動に取り組んでいます。そうした中、「ゴミ問題」は喫緊の問題のひとつです。コロナでステイホームが常態化し、テイクアウトやオンラインで商品を購入することによってゴミの量が増えたと報じられていますが、ゴミの削減をめざしてさまざまなクリエイティブな方法が試みらてれいます。
Chapter-03「朝鮮半島有事と在韓邦人保護問題――日本政府は自国民を救えるのか」松浦正伸
韓国には常時8万人を超す日本人がいる。そして、ひとたび朝鮮半島で有事が起これば、大半の在韓邦人は戦火にさらされ、見捨てられる――。紛争や治安の悪化、政情不安などにより、国外から自国民を退避させる軍の活動を「非戦闘員退避活動」と言いますが、この邦人保護活動を遂行するためには、日韓関係の再構築が不可欠です。韓国不要論を唱える保守の妄想とは異なって、日韓関係は安全保障上きわめて重要なファクターなのです。
Chapter-04「「哲学」することと「哲学史」を学ぶこと――高校倫理から学びなおす哲学的素養(2)」池田隼人
哲学カフェという試みがあります。哲学的教養がない市井の人でも「哲学する」ことができる、というのがうたい文句ですが、しかし哲学とはそれほど安易な学問なのでしょうか? 哲学とは過去の思考の歴史を咀嚼しつつ乗り越えていく運動でしょう。新たなアイディアも真空の中で生まれるのではなく、歴史が織りなしてきた思考の網の目の中に生成します。現代的な問題を哲学的に考えるために、先人の思考の営みを振り返ることが大事なのです。
Chapter-05「食農倫理学へのいざない」太田和彦
食農倫理という学問は、応用倫理学の新しい分野です。食べ物の生産・加工・包装・流通・調理・消費・廃棄という一連のプロセスを通じて、私たちが他者にどのような影響を与えているかについて倫理的に検討します。ところでみなさんは、「良い食」と聞いて何を思い浮かべますか? この記事を読む前にぜひやってみてください。食習慣や食選択は、社会や生態系といかに密接につながっているかが実感できると思います。
Chapter-06「ローティの文化左翼批判をアップデートするならば」大賀祐樹
90年代に哲学者のローティは文化左翼批判を行いました。シニカルなポストモダンな言葉遊びと、アイデンティティ・ポリティクスにかまけて、貧富の格差の是正など、政治や社会と現実的な関りを失った左翼を批判したものですが、しかし、キャンセルカルチャーなどにみられるように、昨今の左翼は政治化しています。とはいえ、深まるばかりの社会の分断状況に対しては、ローティの提言はいまだ有効性を持ちうるのではないでしょうか。
次号は4月15日配信です。お楽しみに!
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