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“α-Synodos”
vol.280(2020/10/15)
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〇はじめに
いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。Vol.280をお届けします!
湖北省武漢市で原因不明の肺炎のクラスターが発生したことが、保健当局によって報告されたのが昨年の12月。早いものでもうすぐ1年が経ちます。パンデミックが収束する気配を見せないなか、世界はどのように2度目の冬を迎えようとしているのでしょうか? ドイツ、イギリス、カナダの状況について、平井和也さんに海外の報道をまとめていただきました。「二回目の冬を前にして欧州やカナダで感染拡大するコロナ」です。これを読むと、日本の入国制限の緩和は時期尚早な気もしますね。
コロナ危機によって、都市化にすっかり水が差される形になりました。都市の魅力やクリエイティビティを構成している要素が、一転してリスク要因になってしまいました。移動自体が厳しく制限され、ソーシャルディスタンスが不可避となるなかで、都市のモビリティのあり方に変容が迫られています。穂鷹知美さんに、ここ半年間に生じたヨーロッパ都市のモビリティの変化をレポートしていただきました。「コロナ禍を機に変化するヨーロッパの都市のモビリティ――この半年間を振り返って」です。
みなさんは、「環境美学」という学問をご存じでしょうか? それは「人間が住む環境も含めた幅広い環境において、私たちの感性がいかに働くのかについて、多角的に論じる分野」です。先日、『環境を批評する――英米系環境美学の展開』を出版した青田麻未さんと、シノドスではおなじみの環境倫理学者の吉永明弘さんが、「環境を美的に鑑賞する」という営みをめぐって対談しました。「環境を美的に鑑賞するということ――環境美学と環境倫理学との対話」です。
コロナパンデミックによって、近年の世界貧困削減の進歩が逆転し、貧困状態にある人々の数が急増しかねない状況が危惧されています。それによって、さまざまな社会病理的な現象が顕在化するでしょう。そのうちの一つとして「人身売買」があります。被害者の経済的、社会的に脆弱な立場を利用し、より劣悪な環境のもとで「商品」として扱い、搾取するこの人身売買とはどのような問題なのでしょうか。中村文子さんに解説いただきました。「何が人身売買を生み出すのか?」です。
今月の学びなおしの5冊は、大山匠さんに「人工知能」をテーマにお願いしました。挙げられている5冊の解説を読むだけで、とても楽しい記事に仕上がっています。今日のコンピュータの原型と呼べる、世界初の四則演算が可能な自動計算機を完成させたライプニッツから、人工知能と社会の関りを論ずる科学技術社会論(STS)まで、流行に左右されることのない繰り返し読むに値する5冊の良書をご紹介いただきました。
最後は石川義正さんの連載「東日本大震災以降の「崇高」(上)──現代日本「動物」文学案内」。今回取り上げられるのは山尾悠子の長篇『飛ぶ孔雀』です。震災後文学として読み解くために、ゴシックロマンス文学が召喚され、そしてエドマンド・バーグの崇高論が参照されます。そうした文学の歴史と思想の網の目にテキストを位置づけながら、テキストの「真実」をあぶりだしていく批評的な手続きは、いつ読んでもスリリングですね。
次号は11月15日配信です。どうぞお楽しみに!
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