〇はじめに
いつもαシノドスをお読みいただきありがとうございます。シノドスの芹沢一也です。今年最後のαシノドスをお届けします!
最初の記事は「今月のポジだし」。小峯茂嗣さんによる「こうすれば異文化交流は共生社会につながる――協働から育まれる共生社会」です。今年は韓国と日本の外交関係がきわめて悪化してしまいました。そうした中、小峯さんが紹介する日本とコリアの大学生の交流活動である「日本コリア未来プロジェクト」はひとつの希望です。2005年にはじまったとのことですが、こうした地に足の着いた活動を積み重ねていくことが、確実に韓国と日本の未来を切り開いていくと信じています。
次いで松本俊彦さんへのインタビュー「依存症は治る、けれども再発しやすい」です。松本さんが先日、編者としてお出しになった『「助けて」が言えない SOSを出さない人に支援者は何ができるか』を中心にお話を伺いました。他人に「助けて」を言えない人たちが抱えている人間不信のあり方や、自尊心の低さがもたらす心理的な悪循環について、とても分かりやすくご説明いただきました。また、今年は薬物問題がメディアを騒がせましたが、改めて薬物依存について松本さんにお聞きしました。
そして、穂鷹知美さんの連載「教育現場のジェンダー――平等パラドクスと男性を必要とする「女性の仕事」です。男女同権が進めば、職業におけるジェンダーギャップが解消されて、理工系分野にも女性が進出するようになっていく、と思い込んでいたのですが、データをみると決してそうではないようです。フィンランドやノルウェー、スウェーデンのようなグローバル・ジェンダー・ギャップ・インデックスで上位に位置する国々において、むしろ理工系分野に女性が進まないという現象が観察されています。これはなぜなのか? いくつの原因があげられていますが、どれも確かになるほどなあ、というものです。
「学び直しの5冊」、今月は安田陽さんによる「エネルギー問題を考える5冊教育現場のジェンダー――平等パラドクスと男性を必要とする「女性の仕事」です。グレタさんのようなヒロインの登場によって、気候変動に高い関心が集まっていますが、もちろん311を経験した日本人にとってもエネルギー問題を考えるのは最重要課題です。エネルギー問題は、科学や技術だけでなく、法学、経済学、経営学、政策学、社会学などさまざまな分野を横断する問題です。つまり、性根を据えて取り組まなくてはならないのです。「不確実性」、「外部性」、「イノベーション」という三つの軸から、5冊の推薦本をご解説頂いきました。
そして、稲葉振一郎さんによる「『ナウシカ解読・増補版』補論――作者自身による二次創作」。『ナウシカ解読・増補版』さんを出版した稲葉さんが、そこで「あえて論じなかった問題」である「二次創作」について語っています。しかも、たんなる「二次創作」ではなく「作者自身による二次創作」です。ちょうど桐野夏生の「村野ミロ・シリーズ」の最終作「ダーク」を困惑しながら、つまり登場人物のあまりの変容に居心地の悪さを持ちながら読んでいたので、「作者自身による二次創作」という言葉がすっと入ってきました。この概念を念頭におきながら、シリーズものを読むと、また違った読書体験が生まれると思います。
最後は井上慶子さんによる「長期化するシリア人道危機の今と課題」。現地提携団体とともにシリア国内で活動を実施している特定非営利活動法人ピースウィンズ・ジャパン(PWJ)にて、シリア事業調整員として活動する井上さんに、現在のシリアの人びとの状況をレポートしていただきました。写真も多く、よりリアルなイメージをもって、シリアの現在が伝わると思います。ぼくはとくに、内戦で荒廃した学校の写真と、修復された学校の写真のコントラストに目を奪われました。生活と人生の底が抜けるということがどういうことであり、また日常が何によって支えられているのかが、きわめて鮮明にビジュアル化されていると思います。
最後にひとつ宣伝を。シノドスのような活動をしていると、日々、社会が閉塞していっていることをひしひしと感じます。こうした閉塞を打破するために、いまいろいろと考え、行動に移そうとしているのですが、その一環として英会話スクールをはじめました。日本人が英語でコミュニケーションできるのが当たり前になれば、多様性が尊重される社会に一歩でも近づけるのではという思いからです。ぼくが責任をもって教えますので、興味がある方はぜひ紹介ページを覗いてみたください。
それでは、どうぞよいお年をお迎えください! 来年もどうぞよろしくお願いいたします!
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