“α-Synodos” vol.264(2019/06/15)
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“α-Synodos”
vol.264(2019/06/15)
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〇はじめに
みなさま、こんにちは。シノドスの芹沢一也です。「αシノドス」vol.264をお届けましす。
最初の記事は「今月のポジだし」。畠山勝太さんに「日本の教育政策」をテーマにご提案いただきました。日本の教育政策はいったい誰が立案しているのか。そこには「海外の一流大学や大学院の卒業者、著名な研究者、著名人等」が並んでいますが、なんと「高等教育や教育政策で学位を取得した専門家」はいません。極端な言い方をすれば、素人が教育政策をつくっているわけです。こうした現状をどうすれば変えられるのでしょうか?
ついで、穂鷹知美さんに「ヨーロッパにおけるメディアのトレンド」についてレポートしていただきました。日本でも同様ですが、ヨーロッパでも伝統的なマスメディアは衰退しつつあります。インターネット上のコンテンツと読者のアテンションの奪い合いをしなければなりませんし、また有料購読件数は広告収入も減少しています。こうしたなか、マスメディアを支持し擁護する新しい動きが現われています。メディアの未来はどこにあるのでしょうか?
ついで「知の巨人たち」。今回は大賀祐樹さんにリチャード・ローティを取り上げていただきました。自らの立場を「ポストモダン・ブルジョワリベラリズム」と呼んだローティ。対立しあう相容れない複数の「正しさ」が併存するポストモダン社会あるいは後期近代社会であるからこそ、寛容なリベラルの必要性が高まる、こう説くローティは、ますます分断と対立が進む今こそ読み返されるべきではないでしょうか。
「学び直しの5冊」。今月は西山隆行さんに「アメリカ」をテーマに選書いただきました。アメリカについては日本でもたくさん情報があふれています。しかし、アメリカの制度や歴史といった背景を踏まえた情報はそれほど多くありません。また多くのアメリカ通がいますが、しかし彼らは自分たちが訪れた時期のアメリカのイメージに拘束されている嫌いがあります。アメリカを立体的かつ構造的に把握するために、ぜひ今回の5冊をお役立てください。
ついで、先日、『〈ヤンチャな子〉らのエスノグラフィー』を出版した知念渉さんにインタビューしました。知念さんの本で一番印象に残ったのが、厳しい家庭環境にある「ヤンチャな子」が、「でも、アフリカの子どもに比べたらまだましだ」と、自らの境遇を肯定する語りをしているシーンでした。一般的にはこうした語りは自らの境遇の問題性を覆い隠すものと受け取られがちですが、もっと違った解釈がありうるのではないかと、知念さんにお話を聞いていて思いました。みなさんも、ぜひ考えてみてください。
日本ではシングル・マザーの問題がとても深刻です。みなさんご存知のように、多くのシングル・マザーが貧困状態にあります。では、この問題をどう解決することができるのか。それを考えるためには現状をデータにもとづいて正確にとらえる必要があります。驚くべきことに、就労支援をするとシングル・マザーの貧困はより深刻化すると桜井さんは説きます。こうした事態が生じるのは世界でただ日本だけです。まずはこの事実をぜひ共有してください。
最後は鈴木崇弘さんの連載「自民党シンクタンク史」の第8回目です。小泉政権の政治改革の後押しもあって誕生した自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」。順調な船出に見えましたが、つぎの第一次安倍政権の支持率低迷と、参議院選の自民党の苦戦のなかで、早くも危機的な状況を迎えます。やはり思うのは財源です。「シンクタンク2005・日本」は独自財源を確保するために、さまざまな工夫をしたのですが、やはり財団などのバックアップがないと、シンクタンクという存在は成り立ちえないのではないか。この点、日本はどうクリアすればよいのか。悩みどころだと思います。
次号は7月15日配信です。お楽しみに!
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