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“α-Synodos”
vol.257+258(2018/12/20)
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○はじめに
1.2018年、今年の一冊!
2.羽田野真帆、照山絢子、松波めぐみ「障害のある先生たち」
3.橋本努「なぜリベラルは嫌われるのか?(3・終)」
4.藤本龍児「「進化論」論争に見るアメリカの基盤――トランプ政策に煽られる文化戦争」
5.鈴木崇弘「自民党シンクタンク史(2)――東京財団の時期・前編」
6.久木田水生「遠隔戦争の論理と倫理」
○はじめに
みなさま、こんにちは。いつもαシノドスをお読みいただきリありがとうございます。今年最後のαシノドスをお届けします。
最初の記事は「2018年、今年の一冊!」です。平成という時代と生きづらさから、タコの心身問題まで、とてもバラエティに富んだ選書となっています。各選者の文章はそれ自体がひとつの論考ともなっており、読み応え十分かと思います。ぜひ年末年始の読書案内としてもご活用ください。
ついで、羽田野真帆、照山絢子、松波めぐみ各氏へのインタビュー「障害のある先生たち」です。障害のある生徒たちについてはたくさんの議論がありますが、障害のある先生たちについての話はぼくも初めて触れました。障害のある子どもと健常の子どもを一緒に同じ教室で学ばせるインクルージョン教育が盛り上がる一方で、職場としての学校のインクルーシブな労働環境という話がまったくなされてこなかったという発言に、たしかにそうだとうなづきました。「障害のある先生」という新たしい視点から、教育の労働環境をとらえなおすというのはきわめて新鮮な試みだと思います。
そして、社会哲学の橋本努氏によるミニ連載「リベラルはなぜ嫌われるのか?」、今回が最終回となります。前回まで日本でリベラルとされる勢力がなぜ嫌われるのかがさまざまに検討されてきましたが、それではいかにして「新しいリベラル」の理念を構築することができるのか? 「保守」と「リベラル」を二分して、二大政党制のための意識的な基礎をつくるような議論に向けて、LGBTへの配慮、日米関係と東アジア共同体、反原発論議という三つのトピックが検討されています。
つづいては、社会哲学の藤本龍児氏による「「進化論」論争に見るアメリカの基盤――トランプ政策に煽られる文化戦争」です。アメリカではよく知られている通り、創造論を信じる人たちが数多くいて、進化論を受け容れている人たちと対立しています。しかし、進化論を信じているという人がアメリカ人の57%なのですが、じつは進化論を認めつつも、進化の過程は神によって導かれたと考える人が38%ほどいます。科学的に進化論ということのできる、神の介入なしで進化してきたと考える人は19%しかいません。つまりアメリカ人の8割が神の介在を信じているわけです。そうなると、これは国民を二分する論点というよりは、アメリカ人に共通する基盤として扱ったほうがよいということになり、この問題の見方が一変するかと思います。
そして、公共政策の鈴木崇弘氏による連載「自民党シンクタンク史」の二回目、今回は「東京財団の時期」となります。日本に本格的なシンクタンクが立ち上がっていく経緯が、その中心的な当事者によってリアルに描写されていきます。今回はあの竹中平蔵氏が登場しますが、なぜ彼が東京財団のシンクタンクの「顔」となったのか、その理由が明かされます。また1997年前後は、多くの政策シンクタンクが設立された時期だということにもぜひ注目してください。
最後は技術哲学の久木田水生氏による「遠隔戦争の論理と倫理」です。とくにドローンという兵器をめぐって、その倫理的な問題点が考察されています。アメリカの基地でドローンを操縦している兵士は、スクリーンの前に座り、ドローンのカメラから送られる映像を通じて、テロリストだとされる人々を追跡、監視します。そして、許可が下りるとミサイル発射の引き金を引き、その人物を殺害するのですが、決まった勤務時間が終わると自宅に戻り、日常生活を送ります。この圧倒的な非対称性を前に、我々はどのように考えればよいのでしょうか?
今年もαシノドスをご購読いただきありがとうございました。次号は1月15日配信です。どうぞお楽しみに!
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