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『君の名は。』を想う 奥寺ミキ。もう一人の三葉

2016/11/19 07:00 投稿

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 「君の名は。」のキーワードは「美しくもがく」であると考えています。
 「美しくもがく」を「もがく姿は美しい」と言い換えてもいいかもしれません。
 「困難に立ち向かい、もがき苦しむ。その事が美しく貴い
 作者はこの事を伝えたいのだと感じています。
 当ブログでは、この「美しくもがく」をキーワードに「君の名は。」について書いていきたいと思います。

奥寺ミキ。もう一人の三葉
 奥寺ミキと宮水三葉には、符合する点が幾つもあります。
 ・ミキの「ミ」の字と三葉の「三」の字の相似。
 ・奥寺ミキは瀧より年上。時間をならすと三葉も瀧より三歳年上。
 ・ミキ=神酒、口噛酒との符合
 ・糸守探訪一日目の奥寺と三葉の行動・心情の相似
 ※糸守探訪二日目、瀧は口噛酒を飲んで星の降る日の三葉と入れ替わります。
  ですから、糸守探訪一日目は、三葉の時間では星の降る日の前日に相当します。
  この日の奥寺と三葉の行動・心情は驚くほどよく似ています。
  奥寺:瀧が他の好きな子(=三葉)に合いに行くことが気になり、糸守探訪に同行。
      瀧の気持ちが三葉に移ったことにショックを受け、やめていた煙草に火をつける
  三葉:瀧と奥寺のデート(実は三年ずれている)が気になり、瀧に会いに東京に行く。
      自分を覚えていない瀧にショックを受け、髪を切る。

 これらの符合から
 奥寺ミキは「君の名は。」のもう一人の主人公。もう一人の三葉なのではないか。
と考えています。
 以下、このことについて書いていきます。

糸守探訪まで
 奥寺が瀧を好きだった事は、糸守探訪時の独白があるので確実。
 三葉入り瀧が奥寺と瀧との仲を取り持ったのも事実。
 ですが、奥寺の好意の対象が三葉入り瀧なのか、素(す)の瀧なのかは判然としません。
 初デートの日、奥寺は飛騨の風景に心奪われる瀧に対し
 「今日はなんだか別人みたい」
 と発言していますが、これも
 ・飛騨の風景に心奪われる瀧が、素の瀧とは別人
 ・デートしている素の瀧が、三葉入り瀧とは別人
 のどちらとも受け取れます。
 そのデートの別れ際に
 「瀧くんは昔わたしのことを好きだったでしょ。そして、今はほかに好きな子がいる」
 と瀧の心情を正確に言い当てています。
 この「昔わたしを好きだった瀧」と「今はほかに好きな子がいる瀧」は、素の瀧の事です。
 ですから、奥寺が指摘しているのは素の瀧の心情の変化ということになります。
 この流れから、先の別人発言も、素の瀧が飛騨に心奪われる様子から三葉の存在を感じての発言、と推測できます。
 これらから、奥寺が関心を寄せているのは、もっぱら素の瀧の心情であって、奥寺の好意の対象は素の瀧なのではないかと考えられます。

 奥寺がいつから瀧を好きになったのかは映画からは分かりません。
 好意とは言えないかも知れませんが、三葉が瀧に入る以前から、奥寺が瀧に関心を持っていた可能性はあります。
 瀧は初登場の時点で頬に傷を負っており、奥寺はその傷の原因を知っているようです。
 スカート事件の際も、奥寺は瀧とチンピラの間にすかさず割って入りますし、それに絡めて頬の傷の原因になった以前の行為をたしなめています。
 瀧がスマホで撮った奥寺の写真も笑顔ですし、奥寺は瀧に対して全く無関心という訳ではなく、むしろ関心があったようです。その関心がいつ好意に変わったのかは分かりません。

糸守探訪
 初デートの後、三葉と瀧の入れ替わりはなくなります。
 瀧は三葉の所在を探す事で頭が一杯になり糸守探訪を決心しますが、奥寺はそれに無理やり同行します。
 この時の奥寺の心理は微妙です。
 瀧がほかの好きな子(=三葉)に会いに行くことを予感し、
 矢も楯もたまらなくなった。というところでしょうか?
 瀧と三葉の仲を邪魔したい訳ではありませんが、何か行動を起こさずには居れなかった。
 場合によっては、自分の気持ちを瀧に伝えておきたかった、ということでしょう。
 しかし、糸守探訪の中で、奥寺は瀧の気持ちが決定的に三葉に移っていることを知ります。
 奥寺にとって絶望的な現実です。奥寺はやめていた煙草に火をつけることになります。

5年後
 糸守探訪の三日目を境に、瀧は三葉に関する記憶を失くします。
 しかし、忘れてはいけない誰か(=三葉)への思いは瀧の心に深く刻まれます。
 もう、瀧の心に奥寺が入り込む余地はありません。

 5年後、結局のところ奥寺は瀧を諦めざるをえず、他の男性と結婚する道を選びます。
 そして、奥寺は結婚を控えた身で単身瀧を訪ね時間を共にします。
 かつて自分好意を寄せていた瀧、かつて自分好意を寄せていた瀧。
 奥寺の心にどのような思いが去来したのでしょうか?
 あるいは、瀧の好意が再び自分に向けられる事に、一縷の望みを賭けたのかもしれません。

美しくもがく奥寺ミキ
 映画パンフレットの奥寺ミキの項には、”中身が三葉の瀧に好意を抱く”
 と書かれています。これって公式見解?
 瀧と奥寺の関係の公式設定は知りませんが、これから書いていく設定の方がシックリいくような気がします。

 奥寺は瀧を好きだった。瀧も奥寺を好きだった。本来なら瀧の運命の人は奥寺ミキだった。
 しかし、三葉と瀧の入れ替わり(出会い)があり、瀧と三葉が結ばれる運命に書き換わる。
 奥寺はその書き換えられた運命に抗います。
 瀧の糸守探訪に無理やり同行したのも、結婚を控えた身で単身瀧を訪ねたのも、運命に抗う姿、奥寺にとっての「美しくもがく」姿なのだと思います。
 けれど、奥寺の恋はハッピーエンドに結びつきませんでした。

 冒頭で「君の名は。」のキーワードは「美しくもがく」だと書きました。
 ですが、「君の名は。」は「美しくもがいた結果が救いを約束する」物語ではありません。
 奥寺に限らず、「美しくもがく」結果が、必ずしもハッピーエンドになるとは限らない。
 それでも尚。
 いや、それだからこそ尚。
 結果ではなく、「困難に立ち向かい、もがき苦しむ。その事こそが美しく貴い」
 作者は、そう言いたかったのではないでしょうか?

 そして、それを伝えるため三葉の対比として奥寺ミキを登場させたのではないでしょうか?
 三葉と同じように瀧に好意を抱き、三葉と同じように運命に抗いながら、ハッピーエンドにならない登場人物、奥寺ミキの存在が必要だったのではないでしょうか?
 その意味で、奥寺ミキは「君の名は。」のもう一人の主人公であり、
 もう一人の三葉。ということになります。

 書き換えられた運命に抗い、瀧との幸せを求めた奥寺ミキ。
 他の男性と結婚し、今はその人との幸せのために美しくもがいているであろう奥寺ミキ。
 そんな切ない役回りを演じた奥寺ミキに幸せが訪れることを、せつに願ってやみません。


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