TRUMPシリーズ短編小説『ドナテルロ回顧録』
白濁した瞳は光があたると銀色に輝いて見えた。
僕はその瞳を見ているといつも気分が悪くなった。濁った瞳からは感情というものが欠落しているように思えたからだ。
彼がはじめてクランの食堂で暴れたあの冬の日。暖炉の石炭をかくために置かれていたデレッキ(火掻き棒)で、彼は反撃にあった。デレッキの尖った先端は、運悪く彼の片目に突き刺さってしまった。反撃したのは彼の寮でのルームメイトで、つまりは僕だ。デレッキの爪の先は眼球の中程まで突き刺さり、治療の甲斐なく彼の目は機能を回復させることはなかった。
光の加減で銀色に見えるその瞳は、彼がのちに「シルバーアイ」という通名で呼ばれる由縁となる。
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