【上演台本】舞台『幽悲伝』 作・末満健一


■登場人物

海里(かいり)
都月(つづき)
陽向(ひなた)
出雲(いずも)
真多羅(まだら)

因旛(いなば)
猿美弥(えみや)
富士丸(ふじまる)
陸奥(むつ)
凪大王(なぎのおおきみ)
淡島毘流古(あわしまのひるこ)



■序章

五年前、夜の宮廷の庭。激しい雨が地を打っている。
傷を受けた従者が逃げている。
そのあとを刀を手にした凪が追う。
凪に睨まれ、恐怖で身動きの取れなくなる従者。
その従者の腹を凪の刀が貫くと同時に雷鳴が轟く。
雨に濡れた地に崩れ落ちる従者の体。

衛兵 「大王! なにをなされているのです!」
衛兵 「大王がご乱心なされた!」

雷鳴。狂気の張りついた凪の顔が稲光に照らし出される。
衛兵たちは怯えて、凪に近づくことができない。

衛兵 「……取り押さえろ」
衛兵 「待て!  玉体に傷をつけてはならん!」
衛兵 「しかし、どうすれば……」
  「……」

衛兵のひとりの腹を刺す凪。

衛兵