夢からはじまる短編小説集
「臓器くんコンニチワ」第1回 作・末満健一
肝臓の部屋をノックする。
返事がないのはいつものことだ。扉を開けると、彼はデスクに向かって黙々と仕事をしていた。
私が部屋に入ったことには気づいているだろう。邪魔はしないでくれ、と背中が言っている。彼はいつも多くの仕事を抱えていた。いまもデスクには膨大な書類が積み上げられていて、彼を逃がさないために造られた壁のようだった。部屋のあちこちには、専門的な機械が並んでいる。装置には夥しい数の計器が備えられていて、どれがなんの数値を表しているのか、私には見当もつかなかった。隅にはいくつもの箱が積み上げられている。最初にこれを見たときは、あまりの物量に眩暈がした。肝臓はそのすべてを把握しているらしい。彼は文句のひとつも言わず、弱音を吐くこともなく、与えられた仕事に従事している。
「お、やってんなぁ」能天気な声の主は、胃だ。
胃は、抱え
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