おくやまです。
今回は、私が気になった記事のご紹介から始めます。
つい先日のことですが、アメリカのラスベガスで毎年開催されて
「ブラックハットUSA」というハッカーに関する国際会議の場で、
自動運転の機能がついた車をハッキングした実演画像が流されたそうです。
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▼自動運転の車乗っ取りも 遠隔操作、米の会議で「実演」 |日経新聞
自動運転中の乗用車が遠隔操作で乗っ取られる――。
そんなSF映画のような犯罪が現実に起きるかもしれない。
米ラスベガスで6日開催されたハッカーに関する世界最大級の国際会議
「ブラックハットUSA」で、新たなサイバー攻撃の危険に注目が集まった。
実際に市販されている車の制御システムに外部から侵入を試みたのは、
情報セキュリティーに詳しい米国のチャーリー・ミラー氏とクリストファー・バラセク氏。
両氏は、車が前方の障害物をセンサーで感知すると、
衝突を回避するため自動的に停止する機能を遠隔操作で妨害する実験を紹介。
路上に積み上げられた段ボール箱の手前で停止するはずの車が、
スピードを緩めないまま突っ込む映像が映し出されると会場から驚きの声が上がった。
両氏は「車の性能が高度になるほど、安全の問題も増える」と警鐘を鳴らした。
サイバー問題の専門家は自動車業界で広く採用されているアクセルやブレーキ、
エンジン回転数などの情報を伝える車内の回線は
「不正な侵入を想定していない古い技術だ」と指摘する。
本格的な無線機能を搭載した車種の登場や、
ハンドル操作なしで自動的に駐車できるような技術が進歩していることも、
リスクを高める要因になっているという。
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この手の「高性能マシンがコントロールに不能になる」という話は、
映画やテレビドラマなどでは何度も登場する定番のテーマです。
軽く思いつくかぎりでも、
たとえば「西部警察」や「ナイトライダー」(古い!)、
それに映画「ステルス」などでの例があります。
ですが、私がこのニュースを知って、気になった理由は、
この記事のメインテーマである「ハッキング」という話そのものではありません。
実はこの話、「戦略論」の知見を使って分析することが出来るのです。
「またまた、奥山さん!車のハッキングと戦略論にはどこに関係がっ???」
ですね?
なので、もう少し説明させてください。
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このハッキングのデモンストレーションの件が示しているのは、
「車の自動化による安全性の追及が、かえってリスクを増やしている」
ということなのです。
つまり、コンピューターにより自動化された、
いわば「絶対安全なはず」の自動車が、
そのコンピューターへの依存度が高まるにつれ逆に、
ハッキングなどの攻撃に対する脆弱性を、むしろ高めてしまう・・・。
なんとも皮肉なことになってしまっています。
このように、
「メリットを目指していったら、かえって潜在的なデメリットが増えてしまった」
という現象は、実は国際政治や大戦略・軍事戦略のレベルではよくあることです。
たとえば、国際関係論の有名な概念に、
「安全保障ディレンマ」(セキュリティ・ディレンマ)というものがありますして
これは、
「自国の安全を目指して軍備を強化したのに、
そのことに刺激されて、相手国も軍備を強化をしちゃった・・・
何の事はない、安全どころか、ますます状況が悪化してしまいました・・・」
という、まさしく「ディレンマ」ですね、これを表したものです。
ちなみに、この<セキュリティ・ディレンマ>については、
毎週やっております、私の生放送の番組中でも解説しておりまして、
Youtubeにその動画がUPしてあります。
合わせてご覧頂くと、より深くご理解頂けるかと。
▼戦略用語解説【Security Dilemma】 - Youtube【無料動画】
さて、冒頭で紹介した、自動運転車のハッキングの例も同じで、
コンピューターによる自動化を追及していったら、
かえってそれがアダになって安全じゃなくなった・・・
ここで、読者の皆さんは既に鋭くお気付きのことと思いますが、
これはまさに「パラドックス」なのであります。
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読者の皆さんにはもうお馴染みかと思いますが、
この「パラドックス」という概念、拙訳『自滅する中国』
(http://goo.gl/JNi87b)の著者でもある、
エドワード・ルトワックという戦略家がプッシュしたものです。
彼は、主に軍事的な観点から、
「軍隊は勝ち続けるために、
進撃を続けつつ、兵站や補給が必須である。
しかし、ある「極限点」を越えてしまうと、
その「兵站や補給」の継続のために
軍事的には、帰って弱体化してしまう。」
この現象をもって、「パラドックス」と呼んでおります。
この話だけでは、「・・・ん~、なんだかよくわかりませんなぁ・・・」
となってしまいますが、ここでちょっと考えてみると、
競争社会である現代において、実のところ、
このような「パラドックス」に我々は日々直面していると言えます。
この戦略の「パラドックス」のエッセンスを端的に言ってしまうと、
「成功しすぎると失敗する」/「成功体験こそが、実は失敗の原因」
ということであり、更に単純化してしまうと・・・、
「成功は失敗のもと、失敗は成功のもと」
という、お馴染みの結論になりまして、ここで確実に、
「は?そんなの当たり前じゃないですか?」
と言われてしまうであろうことを確信しております。(笑)
それを承知であえて今回の議論を進めてみたわけですが、
長年、「戦略」というものに親しんでいると、
このような、当たり前で単純な「戦略の基本」さえ、
なかなかどうして人間は気づかないことが多いのです。
世間の評判を集めた著名人や、業績好調な企業が、
あっという間に凋落してゆく様子は、
直近の例をいくつかすぐに思いつくほどに(特に今年は・・・ですが)
よくあることです。
最近の国際政治の話題にしても、
あのアメリカですら、1991年の湾岸戦争の成功体験があり、
逆に、2003年以降のイラクでは失態を演じて、
さらに現在、再び彼の地に介入せざるを得ない事態に陥っています。
そして、自らのことを思えば、
第二次大戦の緒戦の日本軍の大成功なども、
その後、アメリカに大敗北を喫したことを考えると、
大いに示唆するところがあるわけです。
「成功体験」というのは非常に危険であり、失敗のもとになります。
この、ルトワックの説く「パラドックス」については、
今月末の特番でも詳しく論じます。
▼特番|奥山真司の「アメリカ通信」LIVE|STANDARD JOURNAL
http://live.nicovideo.jp/gate/lv189088073
↑ 番組の視聴予約も出来ます。
▼8月27日(水)21:00~
世界3大戦略家 ルトワックのオフレコ話、生放送 -Youtube【無料動画】
今月末に発売される「文藝春秋スペシャル」という季刊誌の中で、
ルトワック氏に私がインタビューを行っているのですが、
その時の様子や、紙面には書けなかった裏話なども交えて、
じっくり解説しますので、8月27日(水)21:00~からの生放送をぜひ御覧下さい。
( おくやま )
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「リアリスト宣言~日本人よ、リアリストたれ!」|THE STANDARD JOURNAL
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米国最強戦略家が激白、中国、韓国。そして日本は何を為すべきか。|THE STANDARD JOURNAL
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スタンダードジャーナル編集部
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