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【ストーリー解析】シドニアの騎士 第九惑星戦役 第10話「進入」

2015/06/19 13:19 投稿

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シドニアの騎士 第九惑星戦役第10話「進入」のストーリー解析を行う。原作未読。→前回
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■評価
★★★ ストロング


[ニコニコ本編]http://www.nicovideo.jp/watch/1434350146

■総評
第10話は、イザナの救出に向かう長道とつむぎの戦い。王道かつスリリングな展開で、ストーリー強度は高い。終盤に紅天蛾が登場したことで、ストーリーに高いテーマ性が加わり、さらに盛り上がってきた。長道たちには、是非ともハッピーエンドを迎えてもらいたい。

■基本情報
原作 - 弐瓶勉(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督 - 瀬下寛之
シリーズ構成 - 村井さだゆき
脚本 - 山田哲弥
アニメーション制作 - ポリゴン・ピクチュアズ
→Wikipedia

■登場人物
[主人公たち]
  谷風 長道(たにかぜ ながて) - 逢坂良太
  科戸瀬 イザナ(しなとせ イザナ) - 豊崎愛生
  緑川 纈(みどりかわ ゆはた) - 金元寿子
  白羽衣 つむぎ(しらうい つむぎ) - 洲崎綾
[シドニア幹部]
  小林(こばやし) - 大原さやか
[岐神開発]
  岐神 海苔夫(くなと のりお) - 櫻井孝宏
  岐神 海蘊(くなと もずく) - 佐倉綾音
[東亜重工]
  丹波 新輔(たんば しんすけ) - 阪脩
  佐々木(ささき) - 本田貴子
[衛人操縦士]
  サマリ・イッタン - 田中敦子
  弦打 攻市(つるうち こういち) - 鳥海浩輔
  勢威 一郎(せいい いちろう) - 坪井智浩
[ガウナ]
  紅天蛾(べにすずめ) - 洲崎綾

■ドライバー分析
第10話のメインドライバーは2つ。

1.長道とつむぎが、イザナの救出に向かう(E-G)
2.惑星ナインで、長道たちが紅天蛾と邂逅する(E)

また、サブドライバーとして

3.イザナがガウナからの追撃を振り切る(E-G)
4.つむぎが長道とイザナを応援する(L)

などがある。
第10話は、ガウナに襲われたイザナを、長道とつむぎが救出に向かうという極めて王道的なストーリー。第1期の強敵・紅天蛾が再出現し、惑星ナインという新しい舞台で緊張が続く。

第10話には、ストーリーの強度を支えるいくつかの要素がある。今回は、それらを1つ1つ分析していくことにしよう。

まず、1つ目は、これが王道的なストーリーであるということ。ここで言う「王道的」とは、ストーリーの基本形式に沿っているか否かを指している。

(ストーリーの基本形式は、E-G、E-E、L-L、L-F、P-Lの5種類である。ただし、ここではあまり深入りしない。)

分析的には、第10話のストーリーの主構造は、「長道たちがイザナを助ける(E-G)」という問題解決型のストーリー「E-G」に分類される。

ただし、この型に沿うこと自体は珍しくないし、イコール強度が高いというわけでもない。重要なのは、その明確性である。

第10話のおける問題は、「イザナが死の危険にさらされている」ことである。問題の中でも死に関するものは、極めて明確な問題と言えるだろう。そして、これは見せかけの死の危険ではなく、実質的な死の危険に近い。

[ガウナから逃れるため、惑星ナインに降下するイザナ]

多くの場合、主要登場人物は、ストーリーの展開上「死なない」ことを保証されている。もし、主要人物が死んでしまってはストーリーが成り立たないからだ。(多くの場合、「主人公は死なない」。)

例えば、長道が継衛改二で墜落したとき、長道が死んだのではないかと心配した視聴者はほとんどいないだろう。そういう意味では、長道に実質的な死の危険は迫っていない。(これは改二の説明と見た方がしっくりくる。)

だが、イザナの場合、星白のように死んでしまう可能性は決して0とは言えない。今までも、山野、赤井班、烽、星白など、ストーリー上の要請があれば、登場人物は戦死してきたからだ。

[象徴的な星白の死(第1期第7話)]

積極的に言えば、極限まで持ち上げられたイザナが死ぬなら、今しかないだろう。なぜなら、それは大きな悲劇となるからだ。

この見せかけではなく、実質的な死の危険を伴うイザナの問題は、非常に明確で、また、それを救うのが、長道とつむぎといったトップ3の登場人物たちであることは、ストーリーの強度を高める要因になっている。「主人公が恋人を救う」ストーリーを王道と言わずして何と言おう。

[イザナ救出に向かう長道とつむぎ]

続いて、2つ目は、これが冒険的ストーリーであるということだ。ここで言う、冒険的ストーリーとは、「登場人物と視聴者の持つ情報が等しいストーリー」であると定義する。

シドニアの騎士は、今までの数話の間、どちらかというと逆の「登場人物より視聴者の方が多くの情報を持つストーリー」を繰り広げてきた。

例えば、視聴者はイザナの気持ちや、つむぎの気持ちを知っている。ユレが千秋郷の計画を立てたことも知っているし、つむぎたちが影から観察していたことも、イザナが誤解をしていることも知っている。

だからこそ、登場人物同士の誤解や、気持ちの通じ方を、俯瞰的に見ることができる。こういった手法は、群像劇や、ラブストーリーと親和性の高い描き方だ。

[長道とイザナの動向に食い入るつむぎと纈]

(加えて、シリアスパートの重力子放射線射出装置に関するストーリーも、主人公たちより視聴者の方が真相を良く知っているストーリーであった。)

それに比べて、前回からの惑星ナインにまつわるストーリーは、完全に未知の状態で始まっている。このストーリーの質の違い、落差が、ストーリーの強度を高めているように見える。

「未知の惑星ナイン」、「不可視化したガウナの出現」、「紅天蛾の出現」は、主人公たちにとっても視聴者にとっても未知の世界であり、何が起こるか分からない冒険的なストーリーと言えるだろう。

[惑星ナインは見ているだけでわくわくする世界だ]

さて、最後の3つ目は、紅天蛾にまつわる星白のテーマの復活である。第1期第12話で紅天蛾が倒されたことによって、また、第2期第1話で長道がエナ星白と引き離されたことによって、そして、第2期でイザナが恋人役として躍進したことによって、星白に関連するストーリーは減少していた。

しかし、ここにきてそのテーマが、再び大きな壁として現れる。

紅天蛾の存在は、シドニアの作戦上の脅威だけでなく、長道にとっての恋や、星白の死と向き合うストーリーと密接な関係にある。恋という点では、長道とイザナが両思いになったタイミングでの登場は、まさにベストタイミングであると言えるだろう。

[星白の操縦士番号702をつけた紅天蛾]

第1期においても、紅天蛾の撃破の背後には長道を助け負傷したイザナの危機があった。もし、長道が紅天蛾を撃破するなら、長道にとって正式にイザナと結ばれる出来事となるかもしれない。

一応、紅天蛾についておさらいしておくと、

(1)連結型ガウナ討伐戦で星白が戦死(第1期第7話)

(2)連結型ガウナ討伐戦で残存したガウナが浮遊惑星に逃げ込む

(3)対惑星誘導飛翔体で浮遊惑星を破壊すると、星白機を模した3体のガウナが現れる(第1期第7話)

(4)内2体(ガ489、ガ491)を撃破し、ガ491からエナ標本(エナ星白)を回収する
(5)残る1体は離脱し、紅天蛾と命名される(第1期第8話)

(6)小惑星型ガウナ討伐戦で、紅天蛾が再出現(第1期第11話)

(7)かろうじて長道が紅天蛾を撃破する(第1期第12話)

という流れで、長道は一度紅天蛾を撃破している。(泡状分解も確認できる。)しかし、それはあくまで敵としての撃破であり、長道の恋の終わりや、星白との別れにはなっていない。

(細かく見れば、エナ星白についてのストーリーも未解決のままだ。長道とエナ星白の恋は、融合固体開発によって中断され、その身柄は岐神開発に拘束されている。こちらはどうなるのだろうか?)

[ガ491由来エナ標本。通称エナ星白(第2期第3話)]

また、紅天蛾の登場は、ガウナの謎というテーマにとっても、大きな意味がある。

今回の紅天蛾戦が前回と大きく違うのは、つむぎがいることだ。エナ星白から産まれたつむぎと、紅天蛾がどういう関係にあたるのかは形容しがたいが、それらが人類にとって友好的かは対照的だ。

つむぎは、千秋郷のエピソードで長道とイザナの関係を知り、それを絶対に守り通さなければならないものだと心に決めている。それは大切なものを守りたいという人間愛に近い。

[長道とつむぎの掌位は、恋愛ではなく2人の協力関係を象徴する新しい意味を持つ]

しかし、ストーリー展開上、単につむぎが紅天蛾を撃破するという展開には違和感がある。そこには長道と星白や、ガウナの謎といったテーマがないからだ。

つむぎは、自分の出生の秘密(エナ星白が母であること)や、その元となった星白が長道の恋人であったことを知らない。紅天蛾とつむぎの邂逅は、人間とガウナの関係につながるような大きな影響をつむぎにもたらすかもしれない。

[初めて紅天蛾と出会うつむぎ]

ストーリー展開的には、紅天蛾の出現は、長道と星白に関するストーリーの一部として、またガウナの謎についてのストーリーの一部として位置づけられるだろう。

紅天蛾の出現と、その撃破がストーリーにもたらす意味は多様だ。それらはイザナを救うという基本構造の上に、多くのストーリーを積み重ねている。

(もし出現するのが紅天蛾ではなく、新型の由来を持たないガウナであったなら、テーマ上の魅力はほとんどなくなってしまうだろう。)

このまま決着するのか、最終回に持ち越す撤退があるのかは分からない。だが、いずれにせよ以降も強力なストーリーが続くだろう。

■補足:紅天蛾の謎について

上で触れたように、紅天蛾は第1期第12話で一度長道に倒され泡状分解している。そのため、今回の出現は今までのガウナの性質では説明がつかない。ちょっと理由を考えてみよう。

①仮説1:元々3体ではなかった
第1期第7話において、連結型ガウナの残存ガウナを追撃した際、3体の星白機を模したガウナがいたが、実は3体ではなかった説。これは次の2つの点で否定的だ。

(1)ガウナのエナ干渉波の固有パターンがガ490とほぼ一致する
(2)高い機動性、惑星に潜む、知性を持つような戦術がガ490と一致する

ストーリー展開的にも、今回のガウナが紅天蛾である可能性は高く、別の個体であるということは考えにくいだろう。

②仮説2:泡状分解がフェイクだった
それでは、泡状分解がフェイクだったのか?もし、紅天蛾が本物で、かつ「泡状分解したガウナが元に戻ることはない」のなら、泡状分解がフェイクだということになる。泡状分解したのが、別のガウナだった場合だ。

[泡状分解する紅天蛾(第1期第12話)]

しかし、紅天蛾のような小さなガウナに対し、個体数が正確に判別できなかったとは考えにくい。それに本体が隠されていたなら、観測されるのは、外側のフェイクの方の固有パターンになるはずだ。この説もやや無理があるかもしれない。

③仮説3:ガウナ偏在説
となると、もし、泡状分解が事実なら、紅天蛾は生まれ変わったと見るべきなのかもしれない。その場合、紅天蛾の固有性が維持される何らかの機構が必要だろう。

元々、ガウナは孤立しているようでいて、シドニア側の兵器に対する学習能力も見せている。この特性は、何らかの形でガウナ同士が情報を伝達、共有していなければ不可能だ。

雲を掴むような話ではあるが、今までの枠組みでは捉えられない、何らかの偏在性、あるいは復活の秘密がなければ、紅天蛾の再出現は説明しにくい。

紅天蛾の再出現は、いまだ謎に包まれたガウナの性質に関係しているのかもしれない。

■残された謎

①紅天蛾はどうやって復活した?
②落合とつむぎはどうやって通信しているのか?
③落合の研究室にいた小さな騎士は何か?
④落合はなぜ100年前、極端な行動に出たのか?
⑤ガウナとはどういう生物なのか?
⑥カビとは何か?
⑦市ヶ谷総一郎とは誰か?
⑧星白の体には秘密が?
⑨星白が衛人操縦士を目指した理由とは?
⑩有機転換炉には秘密が?

■おまけ、今週の司令補
エンディングを飾っていた継衛改二が登場。カッコいいです。

[早く帰って、作らなきゃ……(使命感)]

■ストーリー詳細

(第9話回想)

L 長道とイザナが千秋郷を訪れる。
E イザナが惑星ナインの偵察任務で出撃し、ガウナに襲われる。

(回想終わり)

(惑星ナイン/シドニア)

E 偵察隊4機の内、2機が大破。隊長機が中破する。
E 隊長機と無事なイザナ機は惑星ナインにガウナを逃れ、惑星ナインに降下し、連絡が途絶える。

E 長道とつむぎはイザナを心配し気が気ではない。
E しかし、小林は纈に「偵察隊は放置して、ガウナ討伐作戦を立案しろ」と命じる。

G 落合はつむぎへの影響を懸念し、継衛改二と融合個体の連携テストという形で2人を出撃させることを提案する。
G 継衛改二の開発元・東亜重工の佐々木も、これを受け入れる。

G かくして、長道とつむぎが惑星ナインに向けて出撃する。

(惑星ナイン、大気内)

G イザナと隊長機がが隼風の分離装甲を利用し、大気圏に突入する。
E しかし、大気圏内にまでガウナが追ってくる。

E ガウナに弾体加速装置が落とされる。

G イザナはガウナが弾体加速装置の人工カビを追っていく現象と過去を振り返って、ガウナがカビだけではなく、高濃度のヘイグス粒子に引かれるのではと仮説を立てる。

G イザナが燃料を投棄し、ガウナからの追撃をかわす。

E ただし、燃料を失った2機は、隼風の翼を使い滑空する以外手段が無くなる。

(惑星ナイン、衛星軌道上)

G イザナとつむぎが惑星ナインに到着する。

EG 心配する長道をつむぎがケアする。

EG 2機は出現した大量のガウナを倒す。

E しかし、突然、2機は大気内からヘイグス粒子砲で狙撃される。
E 長道が大気内の浮島に墜落する。

(惑星ナイン、大気内)

G 大きな衝撃だったが、長道 と継衛改二は無事だった。

E つむぎとの連絡がつかず、長道は慌てる。

GE つむぎとの通信が回復するが、謎のガウナと交戦している。

E そのガウナは高い運動性能があり、地形を把握しているかのような動きをする。
E 次第に、それが紅天蛾であることが判明する。
P 長道は驚愕する。

E つむぎは長道をかばい、紅天蛾との近距離戦に突入する。

(つづく)

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コメント

へちょん
No.1 (2015/06/23 03:00)
紅天蛾の再出現は
④実は倒してなかった
らしいです

原作だと明らかにボディ残して撤退していく様子に描写されていた+ナインで再遭遇するまでにだんだん星白に近くなっていく様子のカット、があったそうで
アニメでも一期ラストの問題のシーンでオペ子さんからの「胞状分解を確認!」の台詞が無かったらしいです(未確認)
ginji (著者)
No.2 (2015/06/23 11:46)
>>1
貴重な情報ありがとうございます!となると、泡状分解はしていなかったというわけですか。アニメ一期で、一応終われる構成にしたということなのですかね。
アニメ本編では謎が残ることになりますが、倒していたと思っていた分、原作よりも出現のインパクトが大きくなったかもしれません。
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