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【ストーリー解析】シドニアの騎士 第九惑星戦役 第5話「願望」

2015/05/13 04:07 投稿

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シドニアの騎士 第九惑星戦役第5話「願望」のストーリー解析を行う。原作未読。→前回
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■評価
★★ ミスマッチング


[ニコニコ本編]http://www.nicovideo.jp/watch/1431317784

■総評
第5話は、つむぎの復帰回。メインストーリーに接続されていないシーンが多く、ストーリーの強度は今ひとつ。ただし、その点を補完するとテーマ性は豊かで、結構面白いストーリーとも言える(下で解説)。つむぎに関するストーリーとイザナに関するストーリーをもう少し強調した方が良かったか。

■基本情報
原作 - 弐瓶勉(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督 - 瀬下寛之
シリーズ構成 - 村井さだゆき
脚本 - 村越繁
アニメーション制作 - ポリゴン・ピクチュアズ
→Wikipedia

■登場人物
[主人公たち]
  谷風 長道(たにかぜ ながて) - 逢坂良太
  科戸瀬 イザナ(しなとせ イザナ) - 豊崎愛生
  緑川 纈(みどりかわ ゆはた) - 金元寿子
  仄 焔/煉(ほのか えん/れん) - 喜多村英梨
  白羽衣 つむぎ(しらうい つむぎ) - 洲崎綾
[シドニア幹部]
  小林(こばやし) - 大原さやか
  落合(おちあい) - 子安武人
  科戸瀬 ユレ(しなとせ ユレ) - 能登麻美子
[岐神開発]
  岐神 海苔夫(くなと のりお) - 櫻井孝宏
  岐神 海蘊(くなと もずく) - 佐倉綾音
[寮母]
  ヒ山 ララァ(ひやま ララァ) - 新井里美
[衛人操縦士]
  サマリ・イッタン - 田中敦子
  弦打 攻市(つるうち こういち) - 鳥海浩輔
  勢威 一郎(せいい いちろう) - 坪井智浩

■ドライバー分析
第5話のメインドライバーは2つ。

1.つむぎが回復し、長道とイザナが喜ぶ(E-G、F-L)
2.長道とイザナがつむぎに居住区を見せる((L)-F-L)

また、サブドライバーとして

3.イザナが義手と義足で回復する(P=E-G)
4.長道がイザナの家に泊まりに行く(P-L)
5.弦打がサマリに抱きつきぶっ飛ばされる(P=L)
6.小林が新しい兵器を準備する(P)

などがある。
第5話のメインストーリーは、つむぎの回復。ただし、単発的なシーンが多く、ストーリーは散漫な印象。過酷な戦闘からのクールダウンという目的があるにしても、もう少しエモーショナルラインをはっきりさせるストーリー強化が必要だろう。

第5話で最も問題なのは、1つ1つのエピソードが、メインストーリーに接続されていないこと。それが第5話がまとまりを欠く原因になっている。

例えば、弦打がぶん殴られるシーン、イザナが義手、義足になったシーン、纈に怒られるシーン、通路で長道が振り回されるシーンは、メインストーリーにきちんと接続されているとは言いがたい。

これらのシーンをメインストーリーに組み込むことで、第5話はもっとはっきりとした形を持つだろう。今回は、これらを補った上で、メインストーリーを分析してみよう。

まず、第5話には「イザナとつむぎの負傷(E)」という分かりやすいストーリー上の問題がある。冒頭の回想や、イザナの搬送シーン、つむぎの状態の説明シーンなどは、それらを明確に示している。

[負傷したつむぎとイザナ]

しかし、それに対し、「イザナやつむぎの回復(G)」は比較的容易になされている。イザナは機械式の腕や足を選択しすぐに復帰したし、つむぎも時間はかかったが、復帰に困難は無かった。

だから、単に「傷が治る(E-G)」というのはメインストーリーとしてはあまり強度を持たない。別な言い方をするなら、イザナとつむぎに関するストーリーは、「傷が治るかどうか」に力点が置かれているわけではないということだ。

先に、つむぎに関するストーリーから考えてみよう。(イザナについては後述する。)

つむぎに関するストーリーは、第2話の「人間と仲良くなりたい(L)」というつむぎの願望から始まっていると言える。その想いは、第2話や第3話を通じて、長道やイザナ、纈といった主人公たちには受け入れられてきた。しかし、まだシドニア全体とまではいっていない。

このメインストーリーに接続するなら、序盤の弦打がぶん殴られるシーンは改変する必要がある。本編では、勢威とサマリが融合個体の話をした後、弦打が出てきてぶん殴られているが、これはサマリと弦打の関係に重点を置いた構成と言える。(一般に、1つのシーンの導入と終わりでは、終わりの方が強い意味を持つ。)

しかし、第5話で重要なのは寧ろ前者であり、ここは順序を入れ替えるべきだろう。そうすると、このシーンは「つむぎはシドニアを救った(P)」ことの確認、あるいは「サマリや勢威たちもつむぎを気にかけている(F)」シーンとして位置づけられる。

[融合個体に救われたと話すサマリと勢威、ぶっとばされる弦打]

第4話のガ550との戦闘によって、つむぎはシドニアをヘイグス粒子砲から救った功労者として、シドニアの民に受け入れられるきっかけを得た。このストーリー上では、つむぎの負傷は、傷が治るかどうかというよりも「つむぎの傷が治って欲しい(L)」あるいは「つむぎが傷を負って悲しい(F)」という周囲の反応に重きが置かれている。

[つむぎを心配する長道と、岐神開発入り口のお見舞いの品]

これは、つむぎに関するストーリーが、つむぎの願望に対応する結末、「つむぎがシドニアの民に受け入れられる(L)」というハッピーエンドに向かうストーリーであるからだ。だから、傷が治ったとしても、つむぎに関するストーリーは終わらない。今回は周囲からつむぎへのアプローチになっている。

ストーリー後半で、つむぎが居住区を見るまでの展開は、長道達の助力により、直接的ではないものの、シドニアの民とつむぎの距離が近づくエピソードと言えるだろう。(ただし、完全な結末はまだ迎えていない。)

[本があるから平気と言いながら、“ため息”をつくつむぎ]

長道が、自分の過去と重ね合わせているのも、シドニアの民に受け入れられるかどうかという同じストーリーを歩んできたからだ。

この流れの中では、纈に怒られるシーンもまた改変が必要だろう。現状では、長道たちが怒られるというギャグ的なエピソードになっているが、これではメインストーリーと繋がらない。

纈が第3話でつむぎを含めた4人で掌位を組んだ事を思い出してほしい。纈もまた、つむぎを心配し、復帰を願う一人であったはずだ。だから、纈は司令補という立場と同時に、長道たちの気持ちも理解できるだろう。

[長道とイザナに怒る纈(第5話)と、掌位を組んだ際の纈(第3話)]

「つむぎを居住区に入れることはできない」という安全上の理由と、「つむぎの気持ちに応えたい」という相反する理由の折衷案として、配管作戦があるなら、それはとても面白いストーリーだ。

現状では、纈に怒られた長道達が、秘密裏に配管を通じてつむぎに居住区を見てもらう計画に変更したという流れのようだが、管理局の配管図を手配したのが纈、あるいは長道たちの行動の意図を知りながら纈は黙認したという展開の方がうまくマッチする。(アイデア自体を纈が出した事にしてもよい。)

[配管図を頼りに通路を進む長道とイザナ]

このような纈の板ばさみを描く事が出来たなら、第5話のクライマックスである長道、イザナ、つむぎが居住区を見つめるシーンは、「まだ、この距離が限界だけれども、みんなそれを望んでいる」という、つむぎへのメッセージを表す事になるだろう。画だけでも十分に美しいシーンだが、そういった背後関係があるとストーリーはより明確な意味を持つだろう。

[初めてシドニア居住区を見るつむぎ]

現状では分離している、サマリ、勢威、纈を組み込むことで、このメインストーリーは強化される。そうすれば、第5話のメインストーリーはよりまとまりがあるものになる。

さらに言えば、つむぎが活躍したことを、一般船員に知らせたのは小林の指示だろうということも指摘しておこう。つむぎへのお見舞いの品の中には子供の字で書かれたものまであり、おそらくシドニアを救ったことが大きく報道されたのだろう。

[子供が書いたらしいメッセージ]

そこには、融合個体をシドニアの民に受け入れさせたいという為政者の思惑がある。(暴走したといった危険な事は報道されていないと思われる。)背後にそういう関係がある事も、ストーリーを豊かにする要因だ。そこも、もう少し強調しても良かったかもしれない。

[大シュガフ戦との戦闘に備えて兵器の開発を急ぐ小林]

このようにつむぎに関するストーリーは、勢威、サマリ、纈、小林らをメインストーリーに接続する事で、より強固なストーリーにする事ができる。そこまで含めると第5話は中々よいストーリーである。

■イザナに関するストーリーについて

さて、少々長くなるが、イザナに関するストーリーについても分析しておこう。イザナのお風呂シーンには、大満足ではあるものの、現状の流れではやや唐突感がある。

イザナに関するストーリーは、シリーズの初期の頃から「イザナの恋(L)」という形で進行している。今回のお風呂のシーン(長道が泊めてくれと頼むシーン)も、このイザナの胸キュンストーリーの一部といえる。だが、そこに至るまでのストーリーは、必ずしもそうではない。それが唐突感の原因だ。

ストーリーの序盤で、イザナが義手や義足(機械式の治療)を選択したとき、イザナは「おばあちゃんに薦められて」と言っていた。また、長年機械式の右手を使うヒ山も「便利だしね」とそれに賛同した。

しかし、恋する女の子としてみたとき、機械式の腕や足というのは、少なからず抵抗があるようにも思える。中性のイザナにとって、女性らしい体は憧れかもしれないし、機械式の体はそれには反する。

[イザナの最初の表情は少し暗い]

だが、イザナは「生体再生は時間がかかる」という理由もあり機械式を受け入れた。これはイザナにとって、女性的な魅力よりも、早い復帰や、強い体の方が優先順位が高いということを表しているように見える。それは恋のストーリーから言えば、「その方が長道の役に立てるから」という理由なのかもしれない。

[次第に明るい表情を見せるイザナ]

実際、今までイザナは恋人としてではなく、長道を助ける立場として長道のそばにいた。長道のパートナーとして、かわいくあるか、強くあるかは、中性のイザナが持っている面白いテーマだ。(もっとはっきり言うなら、「男性的」か「女性的」か。)義手、義足の選択では、イザナは強くあることを選んだ。

この流れを踏まえると、ストーリー中盤の、長道とイザナが配管を巡っている2つのシーンは改変が必要だろう。

現状では、イザナが驚いた拍子に長道を右手(義手)で吹っ飛ばしてしまったり、シドニアの減速に伴う重力変動で吹っ飛ばされた長道とイザナがはしごに引っかかり、イザナの左足(義足)が長道を締め上げるというシーンになっている。(はしごに足をかけたのは長道である。)

[重力変動ではしごから落ちかける長道とイザナ]

しかし、これらは長道が痛い目にあうというギャグ的なシーンであり、メインストーリーとはあまり関係がない。(弦打がぶっ飛ばされたり、纈に怒られるシーンと同じ。)

そこで、これらのシーンは、イザナの気持ちに反して「機械式の手足が長道をぶっとばしてしまう(L-F)」シーンと、イザナの気持ちに沿って「機械式の手足で長道を助けることができた(E-G、L-L)」という2つのシーンにするべきだろう。そうすれば、きちんとイザナの恋のストーリーに組み込むことができる。

それを踏まえると、ストーリーの終盤のイザナとユレの通話シーンは非常に面白い。セリフを書き出してみると、

イザナ「もう、笑い事じゃないよおばあちゃん」
ユレ「うふふ、ごめんなさい。でも、良かったわ。あなた予定より遅れてたから心配してたのよ。そうだわ、義足も調整が必要ね」

という会話なのだが、何の話をしているかは、はっきりと語られていない。だが、これはおそらく、中性(性別未分化者)であるイザナが女性になりはじめたことを表しているのだろう。(中性は、男性でも女性でもなく、相手に合わせて性別が変化する。)

[ユレと何かの話をしているイザナ]

このイザナのお風呂シーンは、裸であることで義手義足を強調する一方で、肌という女性的な部分も強調する面白いシーンだ。もし、イザナが女性になり始めたのなら、それはイザナが「長道と助けたい」と思う背景には、長道を異性として認める部分(=恋)があることを表している。

[突然、泊めてほしいとやってきた長道]

長道は相変わらず星白にぞっこんで、イザナのことなど異性としてみてはいないのだろうが、イザナは着実にヒロインとして成長を遂げている。SF的にもストーリー的にも、ヒロインになりかけのイザナという存在は面白い。お泊り展開は果たしてどうなるのだろうか?

[イザナがこんなに動揺しているのも、ちょうど性別の話をしていたからだろう]

このように、第5話はきちんと補完すれば、イザナに関しても、しっかりと恋に関するストーリーになっている。面白い。そしてかわいい。

■残された謎

①落合とつむぎはどうやって通信しているのか?
②落合の研究室にいた小さな騎士は何か?
③落合はなぜ100年前、極端な行動に出たのか?
④ガウナとはどういう生物なのか?
⑤カビとは何か?
⑥市ヶ谷総一郎とは誰か?
⑦閑の体には秘密が?
⑧閑が衛人操縦士を目指した理由とは?
⑨有機転換炉には秘密が?

■ストーリー詳細

(第4話回想)

E ガ550を撃破するものの、つむぎが危機的状況であることが分かる。

(回想終わり)

(格納庫)

E 負傷したイザナが搬送される。右腕と左足に重症を負っている。
E つむぎも体組織の90%を失っているという。

P 落合は長道に「つむぎの体は必ず元に戻す」と言う。

L 弦打がサマリに抱きつく。
F サマリが弦打をぶっ飛ばす。

(病院)

P 長道、纈、ヒ山がイザナを見舞う。
G イザナの右腕と左足は機械式で修復されている。

F イザナはつむぎの心配をしている。

(岐神開発)

F 長道とイザナが岐神開発を訪れる。
F 入り口にはお見舞いの花や寄せ書きが置かれている。

F つむぎは徐々に回復しているようだ。

(高台)

P 煉と焔が長道を新しい戦闘糧食の試食に行かないかと誘う。
F しかし、長道はつむぎのことを気にした様子で断る。

(食堂)

P ヒ山や纈が長道の心配する。

(岐神開発)

P 長道が海蘊からつむぎがエナがほとんど回復し通常層に戻ったと聞く。

GL つむぎの意識はまだ戻っていないが、触手が動いたので、長道は元気を取り戻す。

(その後、長道の夢/岐神開発)

L 長道が星白の夢を見ている。

LG 長道が目を覚ますと、つむぎの意識が回復している。

L そこにイザナが猫を連れてやってくる。
L つむぎも再会を喜ぶ。

(司令室)

P 纈と小林が話をしている。

(小林の部屋)

P 落合(クローン)が、小林と新しい兵器について話す。

(つむぎの部屋)

P つむぎの部屋が外壁の星が見える区画に移される。

P 部屋には本も置いてあり、つむぎは本があるので平気だという。

F 長道はつむぎの部屋が居住区から遠いことを気にしている。

(司令室)

LF 長道とイザナは纈につむぎを居住区に入れたいと頼む。しかし、猛烈に怒られる。

(つむぎの部屋)

F つむぎは本を読んでいるが、やはり寂しそうだ。

(通路)

L 長道とイザナが何やら通路を進んでいる。

(司令室)

P シドニアが逆噴射し、惑星ナインの衛星軌道に近づく。

(通路)

EG 逆噴射の衝撃で、長道とイザナが振り回される。

(通路外)

L 長道とイザナが目的のダクトを発見する。
L そこからつむぎの頭が出てくる。

L つむぎが感動する。

(寮)

P 長道が寮から追い出される。

(イザナの家)

P イザナがお風呂でユレと話をしている。
P そこに、行く宛てのない長道が泊めて欲しいと連絡してくる。

L イザナは驚く。

(つづく)

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コメント

ギルバート
No.1 (2015/05/14 22:55)
記事お疲れ様でした。

アニメで改変されたものの一つとして、イザナの機械化のタイミングがありました。原作だと紅雀の初登場の戦闘と小惑星の戦闘の間で発生した戦闘で負傷し、機械化するという流れだったのを、つむぎの負傷と同じタイミングにしていました。

そこによって変わった展開の一つに、アニメ一期10話の探検シーンに当たる原作の話で、暗い場所で驚いた余りイザナが義手の力の調整ができず長道の腕を握りつぶすシーンがあったのです。(ちなみに長道はしばらくしたら何事もなく腕を動かしています。)
これがまさしく記事主のおっしゃった『イザナの気持ちに反して「機械式の手足が長道をぶっとばしてしまう(L-F)」シーン』にあたるのではないのかと思いました。
ginji (著者)
No.2 (2015/05/15 12:24)
>>1
コメントありがとうございます!

そうなのですね。その流れだと、イザナが自分のことではなく、長道やつむぎをフォローしている今回の流れは自然ですね。(義手化してから時間が経っているので。)

星白不在の中で、イザナにチャンス!の展開は嬉しいですが、いかんせん長道があの調子なので、もう少しぶっ飛ばして記憶を飛ばした方が良いかもしれません(願望)。
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