京騒戯画第7話「母が帰還してついでに父も帰還した」のストーリー解析を行う。第一弾(全一話)、第二弾(全五話)共に未視聴。→前回 →次回
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■評価
★★★ スタンダード
[ニコニコ本編]http://www.nicovideo.jp/watch/1385695261
■総評
第7話は、両親の帰還とそこで揺れ動くコトの心境、そして鏡都に迫る危機を描く。全体としては淡々としたストーリーで、感動ものというよりはこれから厄介ごとが起こるといった雰囲気である。若干、コトの心理描写が目まぐるしくてついていけない部分もあるが、ストーリーとしての強度はまずまず。
■基本情報
原作 東堂いづみ
監督 松本理恵
シリーズ構成 東堂いづみ、松本理恵
脚本 中瀬理香、丸尾みほ
アニメーション制作 東映アニメーション
->Wikipedia
■登場人物
[主人公]
コト - 釘宮理恵(くぎゅ)
[式神]
阿(ね)- 日髙のり子
吽(こ)- 白石涼子
[子供たち]
明恵(みょうえ) - 鈴村健一
鞍馬(くらま) - 中原茂
八瀬(やせ) - 喜多村英梨
[両親]
稲荷(いなり) - 石田彰
古都(こと) - 久川綾
[鞍馬寺の面々]
ショーコ - 斎藤千和
伏見(ふしみ) - 竹本英史
■ドライバー分析
第7話のメインドライバーは次の3つ。
①古都が鏡都に帰還し、子供たちと話をする(P-L-L-F)
②コトが周りが何も教えてくれないと嘆き、それを明恵が慰めようとする(E-G)
③稲荷が鏡都に帰還する(PまたはG)
また、サブドライバーとして、
④神社の聖域などの説明(P)
⑤鏡都崩壊の危機が訪れる(E)
などがある。第7話は前半が「古都の帰還(①)」、後半が「稲荷の帰還(③)」となっていて、その間に「コトの心理描写(①および②)」がはさまれているという構成。
少し気になるのはコトの心理描写で、今までの余裕のある態度から一変して、泣いたり喜んだり忙しすぎるような気がする。帰還の際は明恵に泣きつき、夜は古都に甘え、また明恵に泣きつき、稲荷が来た途端はしゃぐ。一つ一つはそんなに不自然ではないのだが、これらが連続して描かれるとちょっとついていけない。もう少し感情を絞って、ためを作った方がエモーショナルラインが追いやすい展開になっただろう。
例えば、無邪気に喜ぶコトと、鏡都に降りかかる災い(コトはそれに気がついていない)を対照的に描くぐらいでも良かったか。
■残された伏線
①古都は神社の聖域に封印されていた?
コトによると、古都がいた宇宙空間のような場所は“神社の聖域”なのだという。神社の聖域とは何だろうか?もし、神社の聖域が単なる隔離施設であれば、鏡都の扉と繋がっているのは不自然だし、古都がコトといっしょに聖域にいたというのも不自然な感じがする。
元々は宇宙の一部(上人たちが住んでいた京都?)だったが、上人とコトが神社に所属する際に、古都と共に領域ごと隔離されたということだろうか。
②コトの近くに現れるアサガオは何?
神社の聖域でコトと古都が結界のような檻に包まれた場面を見返してみると、警報がなる前にコトの近くにいたアサガオが光を放っている。アサガオはコトが鏡都にいたときから近くにいたので、神社の聖域固有のものではない。となると、アサガオはコトを監視する目的で近くをうろついていたのかもしれない。
[コトと古都を捕らえる結界]
③鏡都崩壊の危機は誰のせい?
鏡都崩壊の危機の直接的な原因は、コトのアラタマによる強制介入のように見える。しかし、古都は夢の続き(=鏡都崩壊)の理由はひとつしかない(=稲荷?)といった感じの発言をしており、根本的な原因は稲荷にあると言っている。
合わせて考えると、崩壊を止めるために、稲荷は神社に隔離され、鏡都と古都はそれぞれ封印されたが、その封印をコトが破ってしまったという感じだろうか。
[コトによる鏡都への強制介入の跡]
④稲荷の夢とは?
第7話で古都はコトに「夢に捕らわれた可哀想なあの人を救ってあげられる?」と尋ねている。この発言からは、稲荷が何らかの願望を持っていることが分かる。しかし、今まで上人(稲荷)にそういう願望があることは全く語られておらず、その内容は謎である。ただ、古都の発言のニュアンスから考えると、稲荷の持つ夢は、多くの犠牲払うようなものであって、古都はそれを心配しているようだ。
稲荷が古都や子供たちに対して「必ず迎えに来る」と約束しているあたりを考えると、その夢は悪いものではなく、単に家族全員が幸せに暮らすことかもしれない。
深読みすると、古都は自分を救うことが困難なことを知っており、自分のことはいいから稲荷は自分の幸せを考えてほしいと言っているようにも見える。
また、叶えるコトが困難な原因には、仏眼仏母のいう“歪み”も関係しているかもしれない。
⑤神社はなぜ稲荷を恐れるのか?
古都によれば、神社は稲荷を恐れて神社に隔離したのだという。しかし、その理由は鏡都崩壊の問題だけではないようにみえる。おそらく、神社が稲荷を恐れる理由は稲荷の夢とも関係しており、それは鏡都崩壊以上の災いを神社にもたらすものなのだろう。
[物語の核心はやはり稲荷か]
⑥コトの何が“特別”なのか?
稲荷はコトを特別な存在だという。それはどういう意味だろうか。状況証拠から言えば、コトは神社の研究チームから検査を受けており、宮司にも目をかけられている。しかし、コトには今のところ何か特別な能力があるようには見えない。とはいえ、ストーリー展開上は、鏡都の危機や稲荷の夢の問題など、色々な問題が発生し始めており、その解決を図れる能力がコトにはあると考えるのが自然だろう。
また、前回から引き続き、
⑦古都と稲荷はなぜ離れ離れに?
⑧なぜ人間の姿の古都と、黒い兎の姿の古都が存在するのか?
⑨薬師丸が受けた術式はどういう意味があるのか?
⑩明恵はどうやったら死ねる?
⑪明恵上人を預けるとはどういうことか?
⑫拾い子である明恵と稲荷がなぜ似るのか?
⑬稲荷が明恵上人を預けなければならなかった理由とは?
⑭コトはどうやって人形を手にいれたのか?
⑮鏡都に行くための鏡は何?
⑯伏見はどういう立場なのか?
⑰コトが受けた検査とは?
⑱コトや稲荷と神社の関係は?
⑲集合図の稲荷はなぜ子供の姿なのか?
⑳古都が予知した災いとは?
(21)眼仏母像の言う明恵上人の歪みとは?
などの伏線が残されている。
■おまけ
今週のベストショットは古都に甘えるコトちゃんです。
[甘えたい気持ちが伝わってきて素晴らしい演技でくぎゅう]
■ストーリー概要
G 鏡都。ビシャマルに飲み込まれたコトが古都を連れて帰ってくる。
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(回想)
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L 宇宙空間で古都と出会うコト。2人は出会えたことを喜ぶ。
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E 突然、警報のような音が鳴り、2人は結界のようなものに包まれる。
G それをコトが破壊する。
P 2人は門から鏡都に帰還する。
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(回想終わり)
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L 八瀬、鞍馬、明恵たちと再会する古都。
L コトは「死ぬかと思った」と明恵に泣きついている。
P 八瀬は大喜びしているが、鞍馬はそうでもないようだ。
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P 京都を練り歩く一行。古都が目立つ。
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P 古都が鞍馬寺、明恵の家、八瀬の家を回り子供たちと話をする。
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FG 一回りした後、寺に集まった皆に古都が「そろそろ帰る」という。
F コトや八瀬は驚き、それを残念がる。
P 一方、鞍馬は古都がどうやって“帰る”のかを気にする。
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L お寺での夜。コトは古都に寄り添い甘える。
P 古都はコトがまだ赤ちゃんの頃にあの宇宙空間(神社の聖域)にいたことがあると話をしてくれる。
L 古都はコトの髪をすいて、リボンを結びなおしてくれる。
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E コトは両親のことなどを知りたいのに、稲荷も神社の人も何も教えてくれないと嘆く。
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P 古都によれば、明恵上人(=稲荷)は古都を迎えに来ると約束をしていたらしい。
L 古都はコトに、「夢に捕らわれたあの可哀想な人(=稲荷)を救ってほしい」という。
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P 三人議会の会場。鞍馬寺の面々の前に時空を割いて稲荷が現れる。
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P 深夜。明恵の家にコトが帰ってくる。コトは何だか元気がないようだ。
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E 明恵がコトの話を聞くが、コトは「皆が自分に頼みごとばかりする」「自分だって色々あって知りたいことがあるのに」と泣き出してしまう。
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G それに戸惑う明恵だったが、そこに突然稲荷が現れ、「それは君が特別だからだ」という。
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P(古都は災いの夢の続きを見る。)
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L コトは喜んで稲荷に抱きつく。しかし、稲荷はあまり嬉しそうではない。
P 明恵は稲荷に驚く。
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E(京都が崩壊をはじめる。)
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E 稲荷はコトに「とんでもない事をしてくれたね」という。
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(つづく)
次回に続く
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