つば迫り合いの音がまぶしい人生:そんなことより海老炒飯

~グローバルな搾取のためのルール~ #TPP #著作権 #医療保険 #農業(農業帝国主義)#グローバリズム  

2018/07/11 22:00 投稿

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そしていま、これはTPPとして装いも新たに復活したのである。

 そして政治的にも有力なコネクションを有する、強力で裕福なアメリカ企業などが他国からいっそうの富を搾りとるための、実につまらないいくつかの新しいルールもそこに加わった。

 こうした企業はもはや製品を売るだけで莫大な金を稼ぐことができなくなった。 国内生産をさほどしなくなったアメリカのメーカーは、富を増やすためには別の手段を弄せざるをえないのである。 もちろんTPPには、生産という中間的な過程をを経ずに金を生み出そうとする金融機関のための、あらゆる権利が含まれている。 そして彼らには、以前であれば海外の経済圏に持ち込むことのできない場合もあった「金融商品」から、金を生み出すための権利が付与されることになっている。

 アメリカ政府が日本の保険やそのほかの金融サービス市場への参入を狙っているというのは秘密でもなんでもない。 要するに、金融危機を生み出した張本人である同じ金融機関に、さらなる権力を与えようというのがTPPの目的なのである。

 このようなもくろみが現実化すれば世界中に貧困が広がり、人々はいっそう困窮してしまうことだろう。

公益可能な製品を生産せずに金を稼ぐもう一つの手段として「賃料」を徴収するという手がある。 これを実現しようとアメリカ政府は著作権に関して、他諸国に圧力をかけてきた。

 著作権をめぐってはさかんに論争が行われてきた。 なん年にもわたって著作権を保護するというのが本来の著作権の目的だったわけだが、これはやがて芸術作品全般に適用されるようになった。このことについては理解できる。 産業関連の発明品に特許権を認めるのと同じことだからだ。

 ところが労することなく金儲けの機会を常にうかがっている企業のなかには、貧しい芸術家や作家たちに必要と想われる金額をすべて支払っておいて、その代わりに自らが彼らの作品の権利者であると主張するケースもあらわれはじめた。 また、たとえば植物から抽出された民間療法薬などに使われる医薬成分などのように、以前なら無料だったものの権利の所有者であると主張する事例もある。 あるいはあるアジアの寺院に金を払っておいて、その芸術作品から複製したイメージの使用量を徴収するといった場合もある。

 このような「賃料」を最大化するためには、著作権の概念を拡大し、そこにいっそうの法的重みを加える必要があった。所有権という概念をもまたしかりで、それにもとづいて窃盗であるとか、著作権侵害であるといった主張もなされるようになる。

 特にアメリカの右翼的思想において所有権は神聖視されている。道理でアメリカ政府は知的所有権という概念を広めようとしてきたわけだ。ただしこれは知性とも、知的研究ともなんら関わりはない。著作権を設定できるものであればなんでもかまわないのだ。

 しかし本来の著作権というのは、作品の著作者や芸術家、発明家などが、それぞれの創作活動を続けていけるよう保護することを目的としていたはずである。ところが「賃料」をなんとかせしめようとするアメリカ的資本主義の趨勢(すうせい)のなかでは、この本来の概念はもはや通用しなくなってしまった。

 著作権によって利益を得るのは著作を書き、発明をする個人ではなく、その作品の権利を買い取った企業なのであって、そうした企業は作者の死後も半世紀以上にわたってその恩恵をこうむり続けることになる。すでにたびたび一般公開され、てれびやDVDなどを通じて所定の利益を生み出した映画作品であっても、もし従来以上に厳しく複製を禁止するなど、国際規模でとり締まれば、インターネットを通じてダウンロードをする人々からさらに金を徴収することができるようにもなる。

 ダウンロードをするといった行為を盗みだとする解釈が、世の人々にこれほどあっさりと受け入れられたことは実に驚きである。

 ここに私が記したことこそ、参加を迫られた国々が知らないこの協定の内実の一部である。
さまざまな規定とともに、きょうていによって生まれる状況がどのようにコントロールされ、また付随する法的取り決めに照らし合わせてどのように判断されるのかは重要な問題である。

 アメリカについて言えば、新しい規定の導入によって多大な恩恵に浴すのは、アメリカ政府に大きな影響力をおよぼす巨大企業である。

 著作権規定がアメリカにきわめて有利なものであることは言うまでもない。アメリカは他国にも自らが提唱する知的所有権の規定に従わせようとしている。

 つまりアメリカ大衆文化という名のヘゲモニーを拡大すると同時に、アジアからさらに金を搾り取ろうとしているのだ。そうなればある国で大衆文化を生み出す人物が、アメリカが牛耳る著作権をめぐる訴訟に巻き込まれて、自国であるにもかかわらず金銭的に立ち行かなくなり、社会の片隅に追いやられる場合があるかもしれない。

 新しい著作権法の違反行為を標的にするアメリカの法的組織というのが、重厚長大産業とも称すべき様相を呈している事実については、よく理解しておくべきだろう。それでいてこれは非常にご都合主義的でもある。

 要するに、著作権保護を認めさせようとするアメリカのもくろみは、およそ道理には反しており、これは関する要求の多くは搾取を狙ったものに他ならないということだ。そもそも著作権保護期間を著作者の死後70年にまで延長するという規定からしてばかげている。しかもそれは決して芸術や発明、イノベーションといった創作活動をうながすものではなく、逆に妨害する可能性が高いのである。
 
アメリカ経済をも破壊するTPP 

 TPPと権力、つまり企業権力にまつわる取り決めである。そしてその目的はアメリカを支配する富裕階級がみずからの利益をさらに増すことにある、という観点に立って考えるべきものである。

 ただし、読者の心のなかで、TPPに反対すれば反アメリカ的だということになるのではないかと居心地の悪いを思いをしている人がいたら、この点を忘れないでいただきたい。なぜならTPPをアジアに押し付けようとするのはアメリカ国民ではないからだ。

 TPPはアメリカ国内でも評判が悪い。どの世論調査でも、失業が増えたことなどを理由に、TPPの前身とも言える北米自由貿易協定(NAFTA)などの取り決めは、自国にとって弊害が大きいと、一般のアメリカの人々が考えていることを示す結果が出ている。そのための大多数のアメリカ人は韓国やコロンビア、パナマとの「自由貿易」協定締結に反対した。

 政治家たちは、日本経済も社会もTPPに参加できるほどに成熟しているのだから、内向き菜姿勢を打破するためにこれは参加すべきであると、菅氏に倣うかのように主張するが、それはこの協定の本質を認識していないからだ。

 そのひとつが医薬品であるが、TPPに加われば、この分野はこれまでよりもさらに独占的傾向を強めることになるだろう。すると世界の公衆衛生に悪影響を及ぼすことになる。

 多数の政治家に政治資金を提供するアメリカの製薬会社は、知的所有権保護強化を訴える急先鋒である。もちろん新薬の開発には莫大なコストがかかるのだから、それを続けるための製薬会社はその見返りとして利益を得ることには必要だろう。

 しかし原特許の存続期間が終了すれば、ジェネリック医薬品が製造され(特にインドなど)、これまで先発薬を買うだけの財政的な余裕がなかった患者や医療保険制度においても、有効成分の同じ薬を利用することが出来るようになる。実際、ジェネリック医薬品によって、それまで延命効果の期待できる薬を買えない患者が多かったアフリカなどの地域では、HIVウイルスの広がりを抑制できるようになった。

 2011年に韓国がアメリカと結んだ自由貿易協定も、TPPに組み込まれる可能性がある。韓国のジェネリック医薬品産業も非常に発展しているし、また国民の全てに適用される優れた医療保険制度もある。

 だがいまや韓国では、アメリカと新しい貿易協定を締結したことで、将来、医薬品のコストが急激に上昇し、医療保険制度の民営化を余儀なくされるのではないかと懸念する声が上がっている。韓国ではまちがいなくTPPに反対する動きが出るだろう。アメリカ政府の支援を受けたアメリカのアグリビジネスによる猛攻勢に直面すれば、農業を続けられなくなり、田畑を失いかねないのは韓国の農民たちも同じだからだ。 

日本を脅かす「農業帝国主義」

 ここで思い浮かぶのは、日本の激しい反対を引き起こしたTPPのもうひとつの側面である。TPPに対する農業界の反対があったにもかかわらず、それを認めようとしない個人や企業があったわけだが、それはもし日本がこの協定に参加したら、この国の農業がどうなってしまうかについて、彼らは十分に知らないからなのだと私は強く感じている。

 TPPを歓迎する日本人は、これに反対する側の主張をあまりに単純にとらえている。彼らは、過保護で甘やかされた日本の農業は、自分たちの望みを達成する上での障害物だと見なしているが、これは沖縄県の海兵隊基地計画をめぐって、アメリカの意向を支持する側が、それに反対する沖縄の人々を厄介な存在と見なすのと同じだ。それがいかに的外れな見方であるかについては、後述することにしよう。

 このように農業部門があたかも日本の「進歩」に反するかのごとく見なされるというのは、いまにはじまったことではない。過去にも同じようなことは幾度となくあった。日米防衛摩擦がたけなわの時代、アメリカの議員たちはもっとたくさんのアメリカ産のコメを日本で販売しろと、日本に市場開放を迫ったではないか。

 企業も、経済団体も、都市部の住人も、日本の農民の懸念をあまりに単純に考えすぎていると私は思う。たしかに農業を保護したために、望ましくない状況は起きた。そしてこうした事情をよく理解する日本人の多くが、日本の農業団体のあり方を真剣に見直すことがこの国にとって望ましい、と一様に考えていることも事実である。

 しかしいまTPPを支持する前に、政治家には学ぶべきもっと多くの事があるのではないだろうか。

 彼らの学習対象のひとつとしてあげたいのはアメリカ企業のモンサント[遺伝子組み換え作物のタネで世界最大のシェアを持つ多国籍バイオ化学メーカー]である。みずからを利するためには、開発途上国の農村にどれほど混乱が生じようか、その結果、農民たちがいかに悲惨な状況に陥ろうが、そのようなことは一顧だにせず、同社は世界各地でビジネスを展開している。

 もしモンサントが日本で自らの意のままにふるまえば、この国の伝統的な農業は破壊されてしまうことだろう。

 当然のことながらモンサントは巨大企業であり、有力な政治的な後ろ盾が付いている。食品の遺伝子組み換えを専門とするこの企業は、海外市場への進出を積極的に進めているわけだが、同社がヨーロッパに参入しようとしたときには、遺伝子組み換え作物への懸念から激しい議論がわき起こった。自分たちが信頼できない遺伝子組み換え作物が、スーパーなどで販売されては困ると、ヨーロッパの人々考えたのであった。

 開発途上の貧しい国々では、農民や政府の農業生産計画の担当者たちが当初、収穫高の多いモンサントの開発した穀物に期待をかけた。しかし現地の農薬部門にかかわる同社の活動は悲惨は結果に終わっている。また同社の技術には収穫後には発芽しないように、遺伝子を組み換えるものがあり、もしそれが商業化されれば、開発途上国の貧しい農民たちは、毎年、新たに穀物のタネを購入する必要から、モンサントに依存せざるを得なくなる。このような企業の姿勢を表現するためには、新しい単語が必要だろう。

 私はこれを農業帝国主義(アグリインペリアズム)と呼ぶ。

 もちろん、日本の農業は国際的な貿易交渉の場では批判にさらされている。この問題に関する日本側の姿勢を決定するのは、農林水産省と農協という強力な組織である。彼らの政策や優先課題がつねに日本にとって最良のものであるとは限らない。また日本のコメ作りは効率的とは言えない。

 しかしこれに関して、我々はここで一歩引いて自らに問いかける必要がある。ではこれを問題視するのは誰なのか?アメリカ精米業者協会(USA Rice Millers' Association)だろうか。同協会はアメリカの農民が生産した作物を日本市場で大量に販売したいと思っている。

 もし団体が意のままに行動すれば、日本の景観は一変し、美しい風景は姿を消してしまうことだろう。

 国際関係の中で農業がとり沙汰される際、農政をつかさどる官僚たちはフランス人とそっくり同じ行動をすべきだ。

 フランスの農民たちも、ある種の穀物の生産をやめるか、生産量を削減しろという海外からの圧力にさらされたことがあった。またフランス政府が付与する農業補助金のあり方を変えるべきだと批判された。

 しかしこれに対してフランス側は、貿易問題に関して国際社会の反応は行き過ぎであり、そんなコトで大切なフランスの風景を台無しにされてはかなわない、と反撃した。

 もしこの先、アメリカ政府に何か言われても、「我々は日本の景観を保ちたいのであって、そのためには非効率的であっても農業は従来通り行いと思っているのだから、お引取り願おう!」と日本政府が応じれば、それで議論は打ち切りになるだろう。

 昨年3月11日の巨大地震と大津波が、東北地方の幅広い地域に与えた壊滅的な打撃、またTPP支持の動きが、日本の農民に新たな不安を巻き起こしている様子を目にするにつけ、これはまさにとんでもない協定だと感じる。また同じ意味で、国内でTPPを支持する人々が、これに反対する農村側の状況を軽々しく見なすことも到底、正当化することは出来ない。

 日本がTPPに署名するとすれば、いったいどのような事態が起きるのかを理解するには、手始めに本書でもすでに言及した北米自由貿易協定(NAFTA)を参考にすればいい。

 カナダとメキシコが加わってのTPPに類するこの協定は、当初、メキシコに大変な恩恵をもたらすとの触れ込みだった。 しかし発効後、実際には同国には問題ばかりが生じた。


次回に続く




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