学生時代、私のiPodはロック一色だった。キラキラした運動部の女の子たちの好む恋愛についての曲はどうにもしゃらくさく、根明(ねあか)そうな人の歌には意味もなく反感を覚え、「うるせえ私はロックなんだよ」と、理解などを拒み剥き出しの激情をぶつけるような歌声にこそ心酔していた。今思うと王道ではないニッチな曲を偏愛する自分、みたいなものに酔っていた部分もあったのだろう。中学時代は魔女狩りの呼び水でしかなかったサブカルの趣味やどうしたってひねくれている性格は、やがて趣味で繋がる仲間を呼んだ。『ふつうの軽音部』を読んでいるともう物語の中に飛び込んでいきたくて仕方がなくなる。 
週刊文春デジタル