人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。
 ラブラブ期が少し過ぎると、やってくるのは“なぁなぁ期”というやつ。
 世間ではそれを倦怠期と呼ぶが、そこまでの深刻さは全くない。
「恋人を通り越してもう、兄妹みたいなカンジだよね」
 と彼女は言うが、ひとりっ子で育った僕にはイマイチ、そのカンジが掴めずいた。
 ただひとつ、気付いたのは、ラブラブ期には決して言わなかったセリフを彼女がやたら言うようになったこと。特にこの強烈なセリフは初めて聞いた時、一瞬、自分の耳を疑ったくらいだ。
「食い込んでる」 
週刊文春デジタル