先月お亡くなりになった中島貞夫監督の作品の魅力は「燻り」にある。炸裂し切れずに燻る情念。一見するとギラギラと熱くも、最終的にはその闘いには空しさが去来する。そんな物語を描き続けた。
そして、中島ワールドを最も体現した役者が渡瀬恒彦だ。怒りや苛立ちを抱えながら、そのエネルギーをぶつける先がない。中島作品で渡瀬はそうした役を演じ続け、また燻ぶった芝居が抜群だった。
今回取り上げる『鉄砲玉の美学』は、若き日の渡瀬が出ずっぱりの作品だけあって、中島らしさが凝縮されている。
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