物を見るということは複雑である。
眼球が一個テーブルの上にころがっていても、眼球が見ているとは考えにくい。テーブルの上で眼球に視神経と脳を接続すれば「見ている」と言えるかもしれないが、凝視しているのか一瞥しているのか睨んでいるのか観察しているのか眺めているのか監視しているのか、知りようがない。「見る」は物理学や生理学で説明がつくような簡単なものではない。最近、その複雑さを実感している。
まず、わたしは自分の顔を長年直視していない。
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