今、この原稿を書いている段階では、乗客の安否はわからない。ただ無事を祈るだけだ。タイタニック号見学ツアーの潜水艇の話である。
行方不明になったことがこれほど騒がれているのは、あの伝説の豪華客船タイタニック号への郷愁もあるだろうし、三千五百万円払う乗客への興味もあるに違いない。
が、閉所恐怖症の私は、ただドキドキしながらニュースを見ている。四千メートルの深海で密室のようなところに閉じ込められる。あたりは真暗、酸素は切れようとしているのだ。これほど怖ろしいことがあるだろうか。
閉所恐怖症の人たちは案外多くて、今日も仕事先でこの話になった。
「あんな大金を払って、どうしてあんな場所に行くのかしら」
「生存者が壁を必死で叩いているかと思うとつらすぎる」
そしていきつくところは、MRIの話となった。あのほら穴のようなところを進んでいくだけで、汗をびっしょりかいてしまうという人もいる。私も語る。
「何年か前、看護師さんが何かあった時の呼び出しボタンをくれなかったの。すぐに終わるからって。その時間の長かったこと。心臓がバクバクしてきたよ」
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