結局、私は何者にもなれていない。そちら側ではなかった、のかもしれない。激しい衝動や慟哭を形にする才能がなかった。それがどれだけ尊いものか分かっているからこそ、本や、マンガや、映画や舞台を仰ぎ見るように陶酔しているのだろう。『ダンス・ダンス・ダンスール』は読むたびにその事実を思い起こさせる。
幼い頃からバレエに魅了されるも、父の死をきっかけに“男らしく”あらねばとその道を断念し、格闘技の道場に通う村尾潤平。けれどバレエへの想いは捨てきれず、こっそり動画を見ては独学で練習を続けていた。転校生の五代都はそんな潤平が教室で披露したのがバレエの技だと気づき、母親の営むバレエスタジオへと誘う。
潤平を躊躇させるのはバレエがやりたいと告げた時の亡き父の表情や、バレエに対して「男なのに?」と嘲笑する外野の存在だ。

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