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【踊る<インド>哲学者の思考遊戯 4】菩薩思想としてのドラマ『妖怪人間ベム』

2013/03/25 18:00 投稿

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【三浦宏文 みうら・ひろふみ】長崎市生まれ。東洋大学文学部印度哲学科卒業。同大学院文学研究科仏教学専攻博士後期課程修了。博士(文学)。東洋大学東洋学研究所研究員を経て、現在、桜美林大学オープンカレッジ講師、実践女子短期大学講師、神奈川県立衛生看護専門学校講師。その他、複数の予備校や高校でも講師を務める。専攻分野はインド哲学だが、教育問題や映画、テレビドラマやアニメーション等も考察の範囲に置く。著書に『インド実在論思想の研究-プラシャスタパーダの体系』ノンブル社、『絶対弱者-孤立する若者たち-』長崎出版(渋井哲也との共著)がある。
 一昨年の2011年に日本テレビ系列で放送された『妖怪人間ベム』という連続ドラマがある。このドラマは1960年代後半に放送された同名のアニメーション作品を原作としていた。ジャニーズ事務所所属のアイドル亀梨和也や人気子役の鈴木福が出演した事から若者を中心に話題になり、2012年には劇場映画にもなった。

 この作品は一見するとアニメーション作品をCGで実写化し、アイドルや人気子役で高視聴率を狙う、いわば「キワモノ」的な作品に見られがちである。しかし実はその物語の奥に深い仏教思想の影響が見られる。結論を先取りしていえば、この物語の登場人物であるベム・ベラ・べロの行動が、大乗仏教における菩薩の行動そのものなのである。このことは、あまりこの物語を語る上で話題にされることがない。

 そこで、曲がりなりにも印度哲学科・仏教学専攻出身の踊る<インド>哲学者としては、この実写版『妖怪人間ベム』における菩薩思想を明らかにしなければいけないと思う。

「菩薩」とは何か

 では、その「菩薩」とはどんな存在なのであろうか。「菩薩」とは、古代インドの言語サンスクリット語bodhisattvaを音写した言葉「ボダイサッタ」の略語形というのが従来の説であったが、現在ではその俗語形を写して「菩薩」とした説が有力で、通常「悟りを求める人」と解される。大乗仏教の経典では様々な菩薩の姿が描かれるが、中でも有名なのは浄土教が重視する経典『無量寿経』等に表れる法蔵菩薩である。

 法蔵菩薩は元ある国の王であったが、王位を捨てて修業を積み長い間思索を重ねて「もし自分が仏になった時にこういう事が実現できていないのなら自分は仏には成らない」という四十八願を立てる。その四十八願の中で注目すべきものがこの二つである。
 

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