臨床に役立つ「患者教育」と「行動変容」

理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.8】『誰のために雪寄せをするの?』

2020/02/11 20:00 投稿

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理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.8
『誰のために雪寄せをするの?』

 A歯科医院の院長からスタッフ同士のイザコザが起き、対処して欲しいと連絡がきました。原因は朝の雪寄せでした。雪が積もる地方の冬は、雪寄せという仕事が加わります。歯科医院の玄関はもちろん、患者さんが歩きやすいように歩道や駐車場と医院の規模によっては、雪寄せは大変な労力です。A歯科医院では、雪寄せ担当を決めていました。

 事の発端は、一人のスタッフが朝礼ギリギリに出勤したため雪掻きをしなかったこと。朝礼で他のスタッフが『大雪の日は手が空いているスタッフも雪寄せを手伝って欲しい』と、一個人に対し言ったのではなく、全体に対して言いました。すると、その後、朝礼ギリギリに出勤したスタッフがマネージャーへ『なぜその日担当ではない私に言うのか』と不満を漏らしたのです。

 イザコザが起きた日の雪積量は、今年一番と言われるくらいの大雪でした。医院の前の雪寄せ以前に、スタッフ自身もいつもより早く自宅を出ないと、渋滞に巻き込まれ遅刻することが予測できました。積雪量を考えると、2人で診療時間までに雪寄せを行うのは大変だったと思います。

 この話が何か特別な話というわけではなく、このような類いのスタッフ同士のイザコザは何処にでもあります。誰がこう言った言わないのような水掛け論になる点末が既に見えています。
 「本質」を見ない、まるで子供のケンカのようなイザコザが頻発すると、どうしてもペリオや手技よりも先に教えなければならないことがあるのでは?と考えてしまいます。

 そんなある日、スタバに勤めていた経験のある息子から『ジャスト セイ エイス』の話を聞き、自分の盲点に気付かされ、愕然としました。詳しい内容は端折りますが、アルバイターにも「お客様の要望にできる限り応える」精神をしっかり教えているのです。
 歯科に言い換えれば、『患者さんのために最前の処置をする』でしょうか。『患者さんのために自分は何ができるのか』この精神を持っていれば、今回のようなイザコザは起きないでしょう。

 私は歯科衛生士教育で1番重要な『全ては患者さんのために』の精神が希薄となっていることに危機感を感じました。さらに、躾やマナーが出来ていないスタッフや人に興味関心がないスタッフに、どうやって良好な人間関係を築くためのコミニュケーションを教えていけば良いのだろう、と頭を悩ませています。

 一部の歯科衛生専門学校では、学校経営のために基礎学力や適性を重視せずにただ学生を入学させているのではないかと感じてしまいます。彼女らを離脱させないように、叱ることもせず指導はゆるくなり、「国家試験に合格させることだけ」に力を注ぐ。歯科衛生士としての役割や医療人としての立ち振舞いなどは全く教えない。学校教育を否定しているわけではないのですが、この子は学校で何を学んできたのだろう?と疑問を感じてしまうことがあるのです。

 多くの歯科医院は歯科衛生士不足から、募集要項には業務内容よりも福利厚生の充実や年間行事の豊富さと贅沢さをアピールしています。そのため問い合わせがあれば即採用。その結果、『レベルやモチベーションが低い』と院長先生から相談を受け、私の教育が始まるのです。

 しかし、最初は歯科衛生士のスキルアップ目的で研修をスタートさせるのですが、段々と整理整頓やルール決め、しまいにはスタッフ同士や院長とスタッフ間のイザコザの対処に労力が費やされてしまうのです。院長先生から先にこっちを解決してくれと言われ対応しているのに、気づけば『歯科衛生士教育に半年も投資したのに、売上が伸びない!』とクレームを言う院長先生もいます。経営者である院長先生までもが『誰のための歯科医療か』という歯科医師としての役割をどけかに置き忘れきてしまったように感じます。

 少し長くなりましたが、この話が、スタッフの文句や不平不満ばかり言うのではなく『患者さんのために自分は何ができるのか』を考えるキッカケになればと思います。

~素敵な私たちでありますように~
長岐 祐子

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