理想の歯科衛生士像【DHブログ - Vol.4】
『大切な人の健康を願っている当人が、自分の健康を考えていないという矛盾』
歯科衛生士になって数年目(1985年頃)に、総合病院とリハビリステーションが併設された歯科診療所に勤務しました。当時は町歯医者に比べてると、設備投資も多種職業の人材も採用されていて、自分は『最新医療の現場で働いている』と感じていました。来院される患者さんも、一般歯科では治療出来ない障害者や高齢者、自閉症のお子さんなど、様々な難症例が多い現場でした。「悪戦苦闘しながら心身ともに困憊疲労した毎日」を充実していると勘違いしていた時期でもありました。
私がこの勘違いに気がついたのは、ポケットベルが普及した頃でした。個人への連絡手段が固定電話だけだった時代に、ポケベルは大変便利な通信機器でした。今ではもうサービスが終了してしまいましたが、当時は今でいうiPhone11のような最新の電子通信機器でした。当時勤めていた歯科診療所でも導入し、スタッフも夜間、休日に当番で持つようになりました。まだ一般の人が持たないポケベルを、20代前半の歯科衛生士が持ち歩き、休日のデパートの中で呼び出しのベルがあり、急いで公衆電話に駆け込む姿は、自分では非常に「カッコイイ!出来る女性!」と思っていたのです。
しかし実際は、緊急で呼び出されて来院した患者さんの治療の介助につくと、随分前から放置していたムシ歯が急に痛み出して電話したとか、治療中の歯が痛いが明日から出張でかかりつけ医に行けないから、などの理由で、夜間, 休日診療に連絡してくる方々が大半でした。本来なら、交通事故など止むを得ない ”緊急事態” のために鳴るポケベルが、患者都合で私たち医療人が振り回されていたのです。似たような話を聞いたり、自身が体験したことがある方もいらっしゃると思います。もちろん本当に ”緊急事態” のケースもありました。
ポケベルに振り回されながらも多くの症例を診てきた中で、『歯科衛生士としての使命を全う出来ているのか』と、考えさせられることもありました。
1つ目は、自閉症の男子患者の母親。思春期を迎え体格のいい自閉症の男子患者のカリエス治療をする為に、麻酔科の専門医と連携して全身麻酔でカリエス治療を行う介助についた事もありました。オペ室から治療した担当歯科医師が出て来ると、男子患者の母親は立ち上がり涙ながらにその歯科医師に感謝の言葉を何回も何回も言っていました。
そして2つ目は、咽頭癌の男性患者の奥さん。Dr.が、咽頭癌で右測咽頭と右顎を摘出した男性患者に下駄のような義歯を作り口腔に装着した時、付き添いの奥さんの感激し、涙ながらに喜び笑顔から見える口腔内には、やせ細った顎に数本の歯しかない事でした。
自閉症の男子患者の母親も、咽頭癌の男性患者の奥さんも、感動していました。しかし、当の本人の口腔内は、「健康的」とは言えない状態だったのです。こんな矛盾をいくつも経験しました。当時の最新医療が出来る総合病院にある歯科医療現場で経験した私が強く思った事は、圧倒的に患者教育されていない事への痛感と、病気を治すのではなくまるで壊れた形を修復するだけのような医療でいいのだろうか、ということ。
病気という結果に対しその原因のプロセスを教えていない医療に、私の歯科衛生士魂に炎が点火されたのです。この時、私は『真の予防』に目覚めたです。
あれから30年以上の月日が経ち、医療の在り方も、世の中のニーズも変わってきました。平均寿命も年々伸びています。100年ライフと言われる現代を、健康で幸福に過ごして行くために、歯科衛生士として何が出来るのか。ずっと考えてきました。
そして私が彷徨い苦悩した答えは、『口元からの健康と美しさを手に入れ、大切な人と笑顔で過ごす』ためのサポートをすること。
私はそれを『美腔®︎ケア習慣』として、『真の予防』を世の中に広めていきたいのです。
~素敵な私たちでありますように~
長岐 祐子
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