14年ぶりだそうだ。そんな気がしない。

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博多から新幹線で市内が近づくと懐かしい景色。穏やかにゆっくりと深呼吸をしている広島。注ぐよエネルギー今夜!

早々にホテルにチェックインしてSony Publishing にいなと二人ランチする。乗り打ち(乗り打ち=その日にその場所へ入ってコンサートをやること)が3日続くので現実に心がなかなか追いつかない二人。おーい、もう広島なんだぞお。

「じゃあ、一瞬だけ部屋に戻りますか?  15分後にロビーコールで」

「了解」

水の都、広島。

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広島のベニューJIVEは繁華街の中。ちょっとタバコの香りと「音楽ラバー」のオイニーがプンプンする。いいね。

 
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会場に入り早速ピアノに触れる。「元気?」僕が尋ねる。「悪くないよ」ホンキートンクのピアノは相槌を打った。NYのトミジャズのピアノに近いtasteだ。

https://www.tomijazz.com/

なんだかんだでここ3日違うセトリになりそうなので、片っ端から「慣らし運転」で弾いてみる。手に若干の疲労はあるけれど比較的良い状態だ。

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ピアノと僕は出会ったその日に「二人三脚」なので、リハで会話が成立すれば、あとは、本番に力はとっておく。

調律の方が、

「大丈夫ですか? この後にもう一度きちんと全体を調整しておきますね」

と早速リハ後のチェックを開始してくれた。思い切り花咲かせたってください。

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14年ぶりキャンディープロモーションのM氏がリハ終わりで挨拶をしに来てくれる。まるであの頃のポップ時代に戻ったような懐かしい笑い声があふれる現場。若い面々も大集合。そのあと、しばし隣の商業ビルの楽屋基地へ向かいいざ、本番へ向けて!

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広島の1曲目はこの度初出しの、3枚目『Collective Scribble』から「Fried Green Tomato」を選んだ。ホンキートンクなピアノとの相性もいい。

1  Fried Green Tomato

https://www.youtube.com/watch?v=Bx459a4S-U4

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そのあとは博多の「Wallabee」を抜いて、「Tommy」「BMS」。若干自分の中で先を急ぐ感じにする。曲を抜かしたりしないようにね。(笑)

2  Tommy who knew too much

https://www.youtube.com/watch?v=UGtvNTL56FE

3  Boys Mature Slow

https://www.youtube.com/watch?v=4-Aq_RWCJR0

Re:Vision」「Bikini」は、アルバムの中からのパイロット。このツアーの「屋台骨」の部分だ。

4 Re:Vision

https://www.youtube.com/watch?v=z-TGZFSsiMw

5   Bikini

https://www.youtube.com/watch?v=Z5vxBwMdIJ4

The Look」はストレッチ用に5.5として入れておこう。その場で抜かしてもいい。本番のノリとタイム感で判断しよう。

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5.5 The Look

https://www.youtube.com/watch?v=pC3n5JhPB_M

しかしくれぐれも「Poignant Kisses」を抜かないように今日は気をつけること。

6 Poignant Kisses

https://www.youtube.com/watch?v=7hzXgtyuWLw

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ツアー日誌3で「この後トリオの Ross & Matt が合流して東名阪が続く」とワクワク綴っていた頃が懐かしい。ちょっと読んでみて。詳しくはこちら。

https://note.com/senrigarden/n/n2927349ee144

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Poignant Kisses」では歌詞を朗読する。これでポップ好きの人をジャズに引き込むことをやれるし逆にジャズ好きの人に「へえ、こう言うアプローチもするんだ」と興味深く感じてもらえるも思う。どうだっただろうか?

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弾き語りのコーナーは(って全部ピアノソロなんですけど真ん中あたりの少しまったりとお送りすると言う意味でのコーナーね)「B&G」と「The Very Secret Spring」をセレクト。ポップ時代のアイコン的な曲をジャズにアレンジして演奏することと、これぞジャズスタンダードと思い作った曲を並べて広島のみんなにお披露目するスリル。みんな気に入ってくれるかな?

7  B&G

https://www.youtube.com/watch?v=BrR5117oA6w

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昨夜の博多とはここらへんの流れは変えて初日の熊本と同じ流れで行こうと思う。「Indoor voices」「AKiuta」と続けていく。Senri Jazzの川のストリームに筏を浮かべて気持ちよく風を感じて河口へ向かっていくそんなイメージ。

9 Indoor Voices

https://www.youtube.com/watch?v=qZ3NIH2fpZI

10 Akiuta

https://www.youtube.com/watch?v=OCuyturXGW0&t=9s

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後半戦のスタートは3枚目『Collective Scribble』から「Autumn Confidential」を。3拍子をここでやるのが新鮮。それともう一つこの14年ぶりのコンサートはどこかにサブテーマ「春と秋の広島」をイメージしていたので。

11  Autumn Confidential

https://www.youtube.com/watch?v=nEbJrCNCLF0

そのあとは迷わずSenri Masterpieces の「Uncle Senri」「YOU」が続く。

12  The adventure of Uncle Senri

13  YOU

https://www.youtube.com/watch?v=_qvyi7yCxww

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最後は「Garden Christmas」。

小さなアップライトピアノが本当に僕によく合わせて答えてくれた。

14 Garden Christmas

https://www.youtube.com/watch?v=p7V8WElJ9b4

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アンコール前に一旦引っ込める場所がなかったので、膝を使い梅田コマ劇場的せり下がりでみんなの視界から一旦消える。(つまり後ろの方の人にそう見えるだけ。縮んだ僕が床にへばりついているのが前の人には丸見え)1列目のみんなは大笑いだ。そしてだんだん広がった大きなアンコールの拍手とともにぐんぐんせり上がる。

大江千里のジャズライブには「せり上がり」が付いてくる。なかなかこの舞台セットがどこでも見えるってないよね。

Encore 15  Mischievous Mouse

https://www.youtube.com/watch?v=freQOXK03OQ

ここで「10 years」をジャズへアレンジさせようと頑張ったのだけれどなかなかのハードルの高い曲で、最後の最後にどうしても判断がつかずに、お蔵入りさせたエピソードなどをピアノの実演でお送りする。どこが自分にとってのジャズなのかみたいなライン決めを音でやるとみんな「ああ、なるほど」と納得してくれる。ワークショップみたいで楽しい。

そして最後の最後にJiveの中に雨が降る。

16  Rain 

https://www.youtube.com/watch?v=On03vwhy3vA

パンパンに入ったお客さんをかき分けて登場してからは一気にハイテンションなまま1時間45分ほどのライブが終わった。

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帰ってこれたことの感謝しかない。ジャンルを超えた音楽ラバーに愛される喜びをこれから増幅させていく始まりのコンサートだったような気がした。

広島、ありがとう。

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「一旦ホテルに戻ってから鉄板焼きの店に行きますか?」

にいなに尋ねられ、

「いや、このまま行こう」

と答える。衣装も譜面も持ったまま。なんかノンストップで広島に身を委ねたかったのだ。

Jiveで、ライブが終わった後わいわい騒いでたら、

「ね。Senriさん。僕のこと覚えてる?」

と話しかけてくださったこのかた。柳ジョージとレイニーウッドのあの!  Live Depotで共演させていただいたことがある。今広島と東京を行ったり来たりしながらJiveのお仕事をされているそうだ。

予想しない再会が嬉しかった。2ショット。

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翌日、広島空港で、こんなにたっぷりお土産を選ぶのに時間をかけますか? っていうくらいににいなとSony Music Direct の宣伝 I 氏とぼくはお土産コーナーを満喫する。3人の興奮は冷めやらず、チェックインまでの時間にカフェに入りいちごのスイーツまで頼んでしまう。思わぬご褒美だ。

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飛行機では3人とも熟睡で、あっという間に羽田空港へ。

「じゃあ、僕はホテルへ帰るよ。次は仙台で会おう!」

「はい、気をつけて」

にいなと I 氏に手を振る。このとき、音楽の道はどこまでも続いていた。

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ホテルに戻り、アメリカの医療関係の友人と連絡を取ったりしているうちにサンフランシスコの病院の現場で感染が始まっている情報を聞く。今何が起こっているのか現実に向かい合わなければいけない時が来た。そのまま最高なツアーを続けるつもりだったのが一瞬にしてそれが色褪せる。今一度、もう一度、この先のツアーを継続するか中止にするかを真剣に考えなければいけない。にいなに早速、電話をする。

to be continued......

*この記事はもともと"Hmmm Japan Tour"の電子パンフ「Senri Jazz Times 2」用に執筆されたものです。途中で頓挫したツアーの「その先へ」心を繋げるために一人でも多くの音楽ラバーの皆さんに伝わればいいなと公開します。楽しんでくれましたか?

文・写真 大江千里 (C)Senri Oe, PND Records 2020