「あなたが世界中で一番落ち着ける場所ってどこですか?」
「そうだなあ、住んでいるLAでも日本でもないなあ。敢えて言えば、飛行機の上かな」
86年の春、LAで会ったカメラマンはそう僕に言った。あの日のアメリカへの憧れは天国まで続きそうなパームツリーとともに、広大なカリフォルニアの空へ吸い込まれていった。そのあと逃げるように日本へ戻った僕には、とてつもない空虚だけが残った。夢に全力加速し、アクセルを吹かし、近づき過ぎたのかもしれない。
あの年のカリフォルニアでのひと夏の「旅本」はジェットコースターのような目まぐるしい経験を「To be Continued( この先へ続く)」もなくフリーズだけさせ、胸の引き出しの奥の奥に押し込んだ印象がある。久しぶりにそれを開ける鍵を見つけ、恐る恐る鍵穴に入れ回してみる。するとそこには膨大な量のメモ書きが詰まっていた。あの数日間で感じた全てがそこにある。瞬きする
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