そうだ、熊本へ行こう。あの太陽のような笑顔のみんなの居る。
地震の後にそう心で思うものの、現地の様子はなかなかNYには伝わらず、途方にくれた。KUMAMOTOという曲を書いてネットに載せてみたり、自分も心の平安を保っているようなところがあった。5月に一回プロモーションで帰国した時にオールナイトニッポンのスタッフの方が、このKUMAMOTOを聞いていてくださり、なんと番組のゲストに僕を呼んでくださった。発信することは一方通行ではない。熊本へ繋がったようで嬉しかった。太陽の国に一歩近づいた。
7月、NYのJazz Galleryで『Answer July』のリリースコンサートを行った時、東京ジャズプロデューサー八島さんが日本から来てくださった。リリースコンサートもさる事ながら”Music for Tomorrow”(被災した場所や地球上の傷ついた人たちを音楽で応援するプロジェクト)の一環として、僕が東京ジャズ2016に緊急参加することになり、その細かな打ち合わせも兼ねていた。
「このコンサートで熊本へ何かを発信できればいいですね」と八島さん。
「できれば自分で投げた球をキャッチしに熊本へ行ってコンサートができればいいのですが」と僕。
「じゃあ9月17、18日あたりを目処にそういうことができないか熊本の色んなところに投げかけてみましょう」
「はい!」
八島さんと僕はそういう会話をした。そこには「音支援の種」をまきたいという気持ちとがあった。しかし、そのあとなかなか熊本からの返信はなかった。おそらくそれをやるにはまだ機が熟していないのかもしれない。混乱もあるのだろう。半ば諦めていた頃のこと。ふとPND RECORDSの受信箱をチェックしていたら、以下のようなメールを発見した。
「”Rise Up Again KUMAMOTO”への出演依頼。
初めまして大江千里様
私は、熊本に住みます宮里浩造(みやざとこうぞう)と言います」
それはクリックする前から電子の文字なのに炎のようなパッションに溢れていた。熱い思いが満ち満ちていて開けるのを少しためらったが、思い切ってクリックしてみると、
「早速ですが、お願いを先に書かせていただきます。来る10月8日(土)9日(日)に熊本の南阿蘇にあります熊本県のアスペクタ野外音楽劇場で”Rise Up Again KUMAMOTO”と題した復興支援フェスを開催します。4月の地震で甚大な被害にあいながらも無傷で残ったこのアスペクタを復興のためのエンターティメントの象徴とした熊本県民民間ベースでのフェスです」
とある。
「この多くの方々のエンターティナーのかたに協力いただく復興支援フェスに、ぜひ大江千里さまのご協力出演をしていただけないものか? と連絡をさせていただきます」