永塚拓馬『永塚の随筆』第6回「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」
地下鉄・新宿三丁目駅から、徒歩一分。
ビルの狭間に取り残されたように、花園神社が建っている。芸能にご利益があると役者や歌手の間では有名で、僕も今年は初詣に行き、芸事の発展を願って御守を授かっていた。
あくる夜の仕事終わり。久方ぶりに境内の前を通り掛かると、広場に怪しく赤く光るテントが建っていた。花園神社は本殿が赤いので、神事のものかとも思ったのだが、参道横に立て掛けてある看板を流し見ると、どうも違うらしい。
レトロ映画を感じさせるチラシの下には、白い紙が貼り付けてあり、週末になるとこのテントの中で夜毎に野外演劇が行われている旨が書いてあった。
チラシによると、公演しているのは、アングラ演劇の旗手と呼ばれる、劇団唐組。三十周年公演の第一弾“吸血姫”だ。
これは、とても気になる。
さっそく、以前から機会があれば花園神社の野外演劇に行こうと話していた役者仲間の堀江君を誘ってみることにした。
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