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増田セバスチャン監督の『くるみ割り人形』はカワイイだけじゃない

2014/12/03 06:30 投稿

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1979年に公開された実写人形アニメーション『くるみ割り人形』が、この冬、生まれ変わります。オリジナル作品に最新のデジタル映像技術を投入し、3D作品へと“リ・クリエイト”したのは、世界を席巻する“Kawaiiカルチャー”の火付け役、増田セバスチャンさん。公開を前に、ルーミーの独占インタビューに応えてくださいました。

クリスマスシーズンに上演されるバレエのイメージが強い「くるみ割り人形」。今作の色鮮やかでキュートなポスターを見て、子ども向けのクリスマス映画なのかな…と試写室へ足を運ぶと、そこには予想外にダークなファンタジーが待っていました。「まさに僕の思惑通りです」と増田監督は言います。

「小学生の頃、地元にあったサンリオ劇場でオリジナル版を観ました。よく覚えていないんですけど、“怖いな”、 “不思議だな”っていうイメージは残っていたんです。ちょっとトラウマ的な思い出があるので、そのトラウマは大切にしたいな、と思って。現代においても、“何だか分からなかったけど、そこだけは覚えているよ”という風に作ろうと考えました」

映画は、くるみ割り人形をネズミの大群にさらわれてしまった少女クララが、ネズミを追って人形の国に迷い込み、大切なものを守るために“いのち”をかけて闘う姿を描いています。1コマずつ人形の動きを変えるため、1日に3秒分の撮影しかできず、完成まで5年間もの月日が費やされ“奇跡の映像”と言われたオリジナル版のリ・クリエイト。さらには3D化という重責ですが、監督が初監督作品にして今作を引き受けた理由は、意外なところにありました。

「オリジナル版で辻さん(※オリジナル版を手掛けたサンリオの辻信太郎社長)は、僕の好きな詩人の寺山修司さんが書いた最初の脚本を子ども向けに直して映画を作ったそうです。僕は10代の頃、寺山修司さんにすごく影響を受けたので、オファーをいただいたときに引き受ける動機になりました。旧作の脚本を、現在の人々にも直感的に響く為に脚色・改変する作業には、かなりの時間を費やしました」

また、常に作品のコンセプトから「どのようにメッセージを発信していくか」を考えてものづくりをしているという監督は、今作における自身の役割を次のように説明してくれました。

「オリジナル版が公開されたのは1979年。そこから日本のカルチャーが脈々と受け継がれてきて、今はこうして世界中に波及している。昔の作品を現代の人に紹介するということは、過去から未来への接続で、それが僕の役割なんです。今の子どもたちも今作がトラウマになって、大人になった時に自分もこういうものを作りたいと思ってくれれば、そこで僕の役割はできるのかな」

映画では3D映像も手伝って、観る側もクララと一緒に人形の国へ迷い込んだような気分になります。「今作のためにたくさんの3D作品を観ました。自分だったら3Dをどう使うかという時に、小さい箱庭の中に舞台があって、その中で動いているような視覚効果を使おうと思ったんです。今作での3Dのポイントは、ダイナミックさよりも、箱庭の中で人形がちょこちょこ動いている感じ。いろんな人から、その考え方は初めてだと言われました(笑)」

「僕にとって“カワイイ”は、一言で言うと“自分だけの小宇宙”。自分だけの小宇宙の中に、思い入れが詰まったものが“カワイイ”というものなので、入り込んでいって、まるでのぞいているかのような、そういう世界観にしたかったんです」

長年にわたって愛されている原作が、1979年のオリジナル版と監督ならではのフィルターを経て、2014年の今にぴったりな作品へと生まれ変わった今作。その独特な世界観や鮮やかな色彩がスクリーンいっぱいに広がっています。

「カワイイって派手だったらいいんでしょ?とか、奇抜だったらいいんでしょ?とかよく言われるんですけど、実はそういったものの裏側にある、そこに行き着くしかなかった人たちのものというのがある。そこの部分をちゃんと伝えない限り、基本的なものは変わらないって僕はいつも思っているんです」と監督。

「毒っ気のあるものと表面的にかわいらしいものは、表裏一体。そこは必ず表現していきたいです」

『くるみ割り人形』
監督:増田セバスチャン 3D監督:三田邦彦
キャスト:有村 架純、松坂 桃李、藤井 隆、大野 拓朗、安蘭 けい、吉田 鋼太郎、板野 友美(友情出演)、由紀 さおり(特別出演)、広末 涼子、市村 正親
テーマ曲:きゃりーぱみゅぱみゅ 「おやすみ -extended mix-」
11月29日(土)全国ロードショー <3D/2D同時公開>
©1979, 2014 SANRIO CO.,LTD.TOKYO, JAPAN 『くるみ割り人形』[アスミック・エース/サンリオ]

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