リチャード・リンクレイター監督が同じキャストで12年間にわたって撮影した画期的な映画『6才のボクが、大人になるまで。』。もうご覧になりましたか?
劇中では、先日ルーミーでインタビューを紹介したエラー・コルトレーン扮する主人公メイソンの成長が印象的ですが、それとともに移り変わる時代背景も懐かしさを感じさせるものばかりです。
2003年、7才のメイソンが使っているのは、この物語がはじまる少し前に発売され、パソコンの常識を塗り替えた初代iMac(上の写真)。斬新なフォルムとスケルトンカラーは、それまで人々が持っていた“機械”のイメージを覆し、世界中で大ヒットしました。
この時「こんなオシャレなパソコン、見たことない!」と驚いていたものが、まさか今、カバンに入るサイズになるなんて、きっと誰も想像していなかったはず。
2008年にはバラク・オバマ氏が出馬したアメリカ合衆国大統領選挙が行われ、イーサン・ホーク扮するメイソンの父親はオバマを猛プッシュ。世界中が沸いたアメリカ史上初の黒人大統領の誕生に、メイソンたちも立ち会うことに。
サブカルチャーの代表として忘れてはいけないのが、「ハリー・ポッター」シリーズ。若き日の母オリヴィアが第2巻「ハリー・ポッターと秘密の部屋」を子供たちに読み聞かせていたと思えば、その3年後にはメイソンが第6巻「ハリー・ポッターと謎のプリンス」の発売会に並んでいたりと、月日の流れをメイソンを通して実感。
他にもアニメ「ドラゴンボール」の再放送を観ているメイソンの姿や、冒頭でメイソンが遊んでいたゲームボーイアドバンスが、映画の後半にはWiiに変わっているなど、劇中には日本人にもなじみ深い懐かしい風景がたくさん登場します。
リンクレイター監督は時代の流れを表現するのに、これらの文化や出来事が大きな役割を担ったと話しています。
「その時代の文化がかなりの程度統一感を維持してくれた。計画通りさ――フィルムで撮るっていうこともね。この映画についてはちゃんとヴィジュアル的なプランがあった。そのスタイルを変えたくなかったんだ」
一方で、テクロノジーやカルチャーの変換とは異なり、変わらなかったものもあるといいます。
「iMacを見たときには思ったよ――『これは変わるだろう』って。テクノロジーのあるものは、はっきりと変化する。だが、自然界ではほとんど何も変わらない。これには本当に驚いたよ。テクノロジーの変化よりもずっと興味深かったな」
12年という時間の流れを楽しむことのできる『6才のボクが、大人になるまで。』。メイソンの12年間と自分自身の12年間を重ね合わせて観てみるのも、面白いかもしれません。
『6才のボクが、大人になるまで。』
原題:Boyhood
監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演:パトリシア・アークエット、エラー・コルトレーン、ローレライ・リンクレーター、イーサン・ホーク
11月14日(金)TOHOシネマズ シャンテ他にて公開
©2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved. 『6才のボクが、大人になるまで。』[東宝東和]