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壊されゆくオフィスビルがストリートアートの美術館になったんだ

2014/09/29 12:00 投稿

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この夏、東京・四谷にある取り壊しが決まったオフィスビルにストリートやグラフィティで活躍するアーティスト達が集結。そこで開催されたイベント BCTIONは、たったの2週間で1万人を超える来場者を集め、大きな注目を浴びました。

アーティストたちは、9階建てビル一棟の床や壁、全てを使用し、美術館として再利用したのです。

一つのアクション「A」が次のアクション「B」を促すようなクリエイティブが連鎖して膨らんでいく様子から「ACTION」×「ACTION」=“BCTION”と名付けられたそう。

今回はその様子をご紹介します。



会場の入口を抜けると、来場者がイベントの協賛であるターナーの絵の具を使って、自由にペイントできる壁”フリーウォール”が。

子供達も夢中になって参加していたのが印象的です。また、ほぼ連日、会場のどこかでパフォーマンスが行われていました。



各階ごとにある程度のテーマが設定されており、来場者も思った以上にすんなりと作品達を受け入れる事ができます。

床から壁、天井まで広い会場が存分に使われています。それは、表現を決められた枠へ押込められる事無く、外へ外へと広がっていくストリート系のアーティストの特徴でしょうか。



3階のスモーキングルーム。

ここでは高い確率で、参加アーティスト達に出会うことができます。



スモーキングルームの隣には、yang02さんの作品が。

ディスプレイにスプレーを吹き付ける作品は、インターネットにおける動作を現実に作用させるというコンセプト。インターネットで起こる変化を、スプレーの匂いの充満した部屋で感じる、現実との融合です。



4階には茶室を思わせる空間が。

丸岡和吾さんは陶芸を主軸に活動する作家です。今回は、ここで制作しながら吸った煙草で畳を焦がして髑髏を描き、茶室の下部の模様は漢字の「死」という文字のみで構成しています。ちなみ制作後に数えたところ、吸った煙草の合計は555本だったそう。

まだまだ写真があるので、どんどん紹介していきましょう。



ビルの中をまわっているうちに、どこかに作品が潜んでいるんじゃないかと、隅から隅まで観察するようになってしまいました。



倒れているクマのフロアーは、どうやらひとつのストーリーになっているようです。



染色体のYが¥マークになっているのがツボですね。



9階の窓には、N.Yをベースに活動する山口歴さんの作品。

一発で描いたという巨大な抽象画に、カッティングの手法が混ざった表現です。都会の夜景に映えますね。



9階には、他にSSSKさん、BORUTANEXT5さん、SD duet with NUKEMEといった、ストリートやグラフィティのカテゴリーを超えて参加したアーティストも集結。

この9階と “架空の10階” をディレクションしたのがHOUXO QUEさんです。



「16,777,216VIEW」というタイトルのついたこの部屋は、SSSKさんの部屋と共に、今回の展示の中で数少ない”会場がオフィスビル”であったことを彷彿とさせる部屋です。



タイトルの数字は24bitのモニターで置き換えられる色の数で、実際にこの全ての色がランダムにモニターから発せられています。そのモニター上には、蛍光塗料で描かれた抽象的なペイント。

モニターの世界と、現実の世界は、ディスプレイを境に隔てられているのですが、モニターから放たれる光の影響で描かれているペイントは姿を変え続け、そのペイントを私たちの眼に確かなものとして捉える事は困難です。



イメージを印象付ける為に描かれる絵画と色彩、光、反射といった複合的な問題に真正面から取り組み、しかもそれがストリートアートとモダンアートをモニターの世界と現実のを繋げる様に接続してくれているのです。

また “架空の10階” についても書いておかなければなりません。

“架空の10階” とは、“BCTIONの最上階はインターネットにつながっている”という妄想のもと作られたエキソニモによって生み出されたインターネット空間です。オンライン画像合成ツールのBCTION Mixerを使い、#BCTIONでSNSに投稿される画像を自由にリミックスすることで、自由に表現をしていく。ストリートの精神をインターネットで再現していくものです。この空間は、このビルが取り壊された後も残り続けるのだそう。

QUEさんがインタビューの際に語ってくれた「ストリートの日常を更新していく」という言葉はとても印象的でした。



今回のイベントは、立案者の嶋本丈士さんの作業スペースが元々このビルの中にあり、取り壊しを聞いた時に思いついたそう。共同主催者である大山康太郎さんに相談し、幾度のプレゼンを重ねて開催にこぎつけたとか。



一般的に退廃的、破壊的など、ダークなイメージが強いストリートアートやグラフィティアートの発表の場にするということで、プレゼンテーションには気を使ったそうです。

しかし、そもそも普段から公共の場を舞台にして活躍しているアーティスト達は、社会的なイメージの理解を当然しっかりしていて、開催前の混乱はほとんどおきませんでした。



むしろ、ほとんどのアーティストが協力的で、情報の共有も、アイデアのシェアも頻繁に行われたそうです。それは全員が同じ地平に立って、同じ景色を見渡そうとしたからこそ可能だったのでしょう。

ここではストリートやグラフィティ、アンダーグラウンド、コンテンポラリーと言ったカテゴライズはあまり正しくなく、境界を超えて、繋げている作家達が数多く参加していた事がとても嬉しく思いました。



今回関わった多くのアーティスト達が、このオフィスビルのある東京の日常の風景を更新しました。それは2020年へ向けて変貌を続ける東京の始まりを予感させるもの。今後このようなチャレンジが定着し、世界中からアーティストがこの街の日常の更新に携わるために訪れ、情報や価値観をシェアして新たな表現を産み落としていく最初の歩みなのだと思います。

このイベントは、9月15日で終わってしまっているのですが、取り壊しの寸前、9月27日、28日の2日間のみ再公開されます。入場は無料ですが登録制ですのでこちらにアクセスしてみてください。

[BCTION]
会期:2014年9月1日(月)- 9月15日(月)
アンコール開催:9月27日(土)9月28日(日)
入場:完全予約制(無料)
協賛:株式会社インヴァランス
ターナー色彩株式会社
株式会社アスプルンド
株式会社gloops
株式会社デザインワークスプロジェクト
website:http://bction.com/

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