「地産地消」とは、地域で収穫された農産物をその地域で消費すること。
生産者から消費者へと旬の食べ物が新鮮なうちに届けられ、地域の経済活性化や食文化の継承にも役立つことから、近年、日本でも定着しつつある消費スタイルです。
さて、比較的都市部に近いエリアに農場が広がるポートランドは、「地産地消」のお手本のような街。毎日、街のどこかで、マーケットがひらかれ、地元で収穫された野菜・果物などを求めて、地元の人々が買い出しにやってきます。
中でも、大規模なものとして知られているのが、3月から12月までの期間、ポートランド州立大学(Portland State University)で毎週土曜日に開催されている、ファーマーズマーケット。
平日、多くの学生が行き来するキャンパスは、週に一度だけ、野菜・果物・花のほか、卵や乳製品、加工肉、パン、ワインなどが所狭しと並ぶ、「ポートランドの台所」のような空間となります。
食料品や日用雑貨などの最寄品は、つい効率や利便性ばかりを追求しがちですが、ひとつひとつ、形や色が異なる食材を、自分の目で確かめて選んだり、お店の人と何気ない会話を交わしながら買い物できるのが、ファーマーズマーケットならではの楽しみ。
このファーマーズマーケットでは、地元の食材を利用したローカルフードが食べられる屋台も出展。
さわやかな青空のもと、緑あふれる大学のキャンパスで、食材の買い物のついでにブランチをいただくのも、ポートランド流です。
また、「地産地消」が広がるポートランドらしい特徴として、生産から加工・流通までのサプライチェーン全体を、地元の事業者や企業が主体的に担っている点が挙げられます。
ポートランド市内に13店舗を抱えるスーパーマーケット「New Seasons Market」や生活協同組合型のスーパー「Food Front」、オーガニック食材の宅配サービス「Organics to You」、デリカテッセンとケータリングサービスを手がける「Elephants Delicatessen」などが、その例です。
地域の豊かな自然の恵みのもとに地元の農家が作物を栽培し、収穫された食材を利用して様々な商品がつくられ、これらを地元の商店や企業が販売し、地元の人々が消費する。
ポートランドでは、地元の農とクラフトマンシップ、そして、ローカルビジネスが融合し、持続可能な「地産地消」のかたちが、実にうまく循環しています。
Photographed by Yukiko Matsuoka