わたしが子どもの頃に見たアメリカ映画に登場するニューヨークは、とても「危険な街」でした。特に地下鉄(Subway)のシーンと言えば、不穏な空気に満ち溢れ、これから何か危ないことが起こる気配をヒシヒシと感じたものです。
事実、1980年代のニューヨークは今とは比べ物にならないほどの高い犯罪率で、日本人観光客は地下鉄に乗ることを避けていたのです。
今回紹介するのは、まさにそんな時代、1981年に撮影されたニューヨークの地下鉄の写真作品です。タイトルは「THE NEW YORK SUBWAY, 1981」。
撮影したのはChristopher Morris。現在はパリを拠点に活動する写真家です。これらの写真は撮影されて以降長く未発表となっていたもので、最近になって発見され発表に到りました。その眠っていた数十年の間にニューヨークは奇跡とも言われる変化を遂げ、その事実がこれらの写真の意味も変化させたように思います。
溢れる落書き(グラフィティというべきでしょうか)の中を、スーツの男性が通勤する姿。そのコントラストがなんとも奇妙に感じられます。
当時、地下鉄の中でシャッターを押すのは危険な行為だったのではないかと推察されます。いまでは(基本的な対策をすれば)ほとんど危険な目に合うことはなくなったニューヨーク。当時の風景を刻んだ大変貴重な記録です。
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