日本にも浸透しつつあるスウェーデン発祥の家具ブランド「イケア」。その魅力は、なんといっても「徹底した低価格戦略」を貫いているところ。

約9000品目以上あるイケア製品の中で、とりわけ価格設定の高い「ストックホルムコレクション」は、そんなイケアの中でも特に注目度の高いコレクションの一つ。



「STOCKHOLM/ストックホルムコレクション」とは、クラフトマンシップの追求、上質な素材とデザインへのこだわり、心地よい使用感を高めた、イケアの高級コレクションのこと。約80種類からなるこのコレクションは、ソファからベッド、テーブルウェアから花瓶まで様々なジャンルの製品で構成されています。

イケア製品の中では少々高めの値段設定ですが、そのクオリティから比べると市場価格の約1/3ほどの低価格を実現しています。



1980年代のイケア誕生から続くこのコレクションは、今年2013年に第4世代目となる新たな「ストックホルムコレクション」が発表されており、欧米でも話題となっています。

先日、8月末にスウェーデン大使館で開催された発表会では、クリエイティブ・ディレクターのヴィヴェカ・オルソン氏とデザイナーのオーラ・ヴィールボリ氏を迎え、新作の「ストックホルムコレクション」のプレゼンテーションが行なわれました。



3年間の準備期間を経て、新たに発表された「ストックホルムコレクション」。クリエイティブ・ディレクターのヴィヴェカ氏が強調していたのは「フォルム・品質・機能・持続性・低価格」の全てを徹底的にこだわったコレクションであるという点でした。



「フォルム」の面では、コレクションテーマでもある「スウェーデンの自然」からインスピレーションを受けたデザインを採用。イケアが「恋する素材」と表現するように、家具にはウォールナットの突板、高級レザー、ウールなど「品質」にこだわった素材を使用しています。

また、イージーチェアの可動式ヘッドレスト、一人用ソファは回転式であったりと「機能面」へのこだわりも。特に、ダイングテーブルは同シリーズのイスが自然に収納できるようデザインされており、アームの傾きがテーブルの裏面とピッタリ合うように設計されています。



一つ一つのパーツにはクラフトマンシップのこだわりを反映。使い続けるほどに手に馴染むよう設計された「持続性」のあるデザイン。その自信の表れとも言えるソファは、25年保証というから驚きです。

しかし、どんなに良いものとは言え、値段が高くてはイケアの哲学に反してしまいます。このコレクションも他の製品同様、無駄なコスト削減を徹底することで市場価格の1/3ほどの「低価格」を実現しています。



「真面目になりすぎないでユーモアを取り入れることが大事」と語っていたヴィヴェカ氏。ソファが回転したり、ミッドセンチュリーなフォルムを意識していたりと、高級家具の装いの中に心地いい「ユーモア」を取り入れているのがとても印象的。他のイケア製品にも合わせやすいコレクションではないでしょうか。

プレゼンテーション終了後、クリエイティブ・ディレクターのヴィヴェカ氏とデザイナーのオーラ氏の二人に時間を頂き、もう少し詳しくお話を伺ってみました。



── 今回はコレクションは「スウェーデンの自然」がテーマですが、具体的にどのような自然からインスピレーションを受けたのでしょうか?

ヴィヴェカ:具体的なもので言うと。シダ植物のフォルムやスウェーデンに広がる畑などからインスピレーションを受けています。スウェーデンは四季がハッキリしているため、春の黄色、夏の緑、秋は茶系のアースカラーなど、スウェーデンの四季が感じられる「スウェーデンらしい」色を家の中で楽しめるようなコレクションになっています。

オーラ:コーヒーテーブルは「葉っぱ」、ペンダント照明は「開いた花」、ダイニングテーブルとイスのセットは「森に並ぶ木々」など、自然の形やイメージを直接的に引用してデザインをしています。コレクション全体では「コントラスト/対比」を強く意識したデザインをしていて、「直線と曲線」「グロスとマット」など、リビングルームやダイニングで心地いいコントラストを生み出すように素材やフォルムを決定していきました。

── このコレクションは通常のイケア家具と同じく「ノックダウン(組み立て式)」です。クオリティが求められる高級家具を「ノックダウン」としてデザインする難しさはありましたか?

オーラ:ノックダウン家具のデザインは常に工夫が必要で、難しいところでもあります。私はイケアの家具を長い間デザインしているため、ノックダウンに必要な知識も持ち合わせていますが、それでも毎回苦労することがあります。今回は高級路線のコレクションでもあるため、商品開発のための予算や研究時間も十分に用意されていました。1つ1つの部品の精度や組み立て方法を納得がいくまで検証することもできたので、そこまで難しいということはありませんでした。

ヴィヴェカ:今回のコレクションでキャビネットなどに新しく採用された「クリックシステム」などは、一般のユーザーでも簡単に精度が高い家具を組み立てられる新しいノックダウン技術を使っています。「ストックホルムコレクション」のために大幅に予算をかけて研究した「イケアの技術」は、他のイケア製品にも応用することができるため、結果としてイケア商品全体のクオリティを底上げすることにも貢献しています。


ソファであれベッドであれ段ボールに「フラットパック」にされて売られているのがイケア家具の特徴。ユーザーは小分けにされた段ボールを台車で運び、レジで精算することになっています。ノックダウン、フラットパックはイケアが低価格を実現する上で、とても重要な役割を果たしています。

しかし、ノックダウンにはデメリットもあります。家具であれば、デザイン的、構造的な制約を受けてしまうこと。そして、最終的な組み立てを一般ユーザーに依存してしまうところ。

このストックホルムコレクションは、市場で売られる他の高級家具に対して、イケアのやり方で「低価格」を実現しながらハイエンドユーザーをも満足させようと挑戦を続けているコレクションとも言えます。

常にイノベーションを続けるイケア。日本にもDIY文化が少しずつ浸透している中、なんだかイケアのことがもっと知りたくなってきました。

STOCKHOLM/ストックホルム コレクション

[IKEA]

RSS情報:http://www.roomie.jp/2013/09/101004/