今回は、さわやか天文部ラブコメ『宙のまにまに』のヒットで有名な柏原麻美さんが出した短編集を紹介します。これがもう、さわやかな絵柄で素直にぐいぐい引き込んでくる恋愛マンガ(ただし百合)となっています。
■届かない遠くを見据える高校生の姿にぐっとくる
『宙のまにまに』は気がつけばヒットしていて、読み逃した作品なのですが、アニメを見ていてさわやか展開にグッときました。いつか時間ができたとき、一気読みしようとストックしてある作品のひとつです。
そんな柏原麻美さんが一迅社から4編の読み切り短編集を出してきました。しかもガールミーツガールな展開とくればこれは気になるところです。タイトルもいい。『少女惑星』なんて!
そう、高校生はひとりひとりが世界の中心であって、実は手に入らない遠くの世界を観測してるようなものです。
つかもうとしているのは、勉強やスポーツで近づこうとする夢かもしれないし、ほんの近くにいる誰かの心かもしれません。うまくいくことよりも、うまく行かないことの方が多いことを知るのが、中学生や高校生の世界です。
そんな世界はいつも、気持ちが揺れ動いているからこそ、中高生は“絵”になります。
■惑星と同じ数の女の子がめぐりめぐり、涙する
タイトルに掲げた『少女惑星』が示唆するように、登場する女の子の名前には惑星のキーワードが使われています。惑星がぐるぐる巡り、近づいたり離れたりするように、登場する女の子たちの距離も縮まったり遠ざかったりします。
しかし、惑星が太陽の引力から離れることができないように、それぞれの女の子もエンディングへと向かっていきます。そのとき、いずれのストーリーにおいても女の子が涙をこぼす姿が描かれ、その泣き顔や台詞にグッときます。
まじめに、そして真剣に、相手のことを考えるからこそ、涙を流してぶつかりあったりする。でもそれが中高生の特権でもあります。(あと、女の子の特権でもあると思う)
とはいえ、涙がやるせないエピローグの導線になることはなく、すべてのエピソードは気持ちの良いエンディングにつながっていきます。作者の絵柄のやさしさが、そのまま読後感の心地よさにつながっていて、とても気持ちよく読める一冊になっています。
『宙のまにまに』ファンにも、未読で「実は読みたかった!」という人にもオススメできる一冊です。シリーズの途中から手を出せなかったけれど、実は読みたかった作家さんを知るうえでも、短編集は本当にいいですよね。