「たとえば子どもがいないのに最初から子ども用の部屋を用意しておくのは無駄だと思っているんです。家族が増えたら、そのときに広い部屋の購入を検討すればいい。自分たちもライフステージに合わせて住み替えていきたいと思っています」と夫の博之さん。
そんな渡辺さん夫妻が結婚後、最初に購入したのがこちらの部屋。中目黒という人気の立地を選んだのも「いずれ売却しやすいように」と考えてのことです。
おふたりの好みやライフスタイルを考慮しつつ、売りやすさも考えてリノベーションしたという住まいをさっそく見せていただきましょう。
お名前(職業):渡辺博之さん(設計士&デザイナー)、友季さん(会社員)場所:東京都目黒区
広さ:ワンルーム+WIC/50.64㎡
リノベーション費用:約800万円
築年数:42年(1979年築)
住宅の形態:マンション
間取り図:
お気に入りの場所
ホームパーティで活躍するキッチン壁付けのキッチンとカウンターテーブルがL字型に配置された渡辺家のキッチン。「作業スペースが広くて動きやすいところが気に入っています」と博之さん。
コロナウィルスの発生前は月に2~3回のペースでホームパーティをしていた渡辺さん夫妻にとって、ゲストと会話をしながら準備がしやすいところも気に入っているとか。この部屋をリノベーションしたときのテーマも、もちろん「人が集まる部屋」でした。
キッチンはもともと設置されていたものをそのまま使い、カウンターテーブルは一枚板のような雰囲気を出して造作しました。
「一体感が欲しかったので、置き家具としてのダイニングテーブルは最初から考えませんでしたね」(博之さん)
カウンターテーブルの裏側は、使いやすそうな収納になっていました。「柔軟性があるのが気に入っています」と友季さんがいうように、リノベーションで設置したのはごくシンプルな棚だけ。無印良品のケースや取っ手をつけたりんご箱を引き出し代わりに使っています。
キッチンの床面がほかのスペースより1段下がっているのも、ホームパーティにぴったりだったとか。ホスト&ホステスとしてキッチンの中にいても、「カウンターテーブルやソファに座っているゲストと目線がちょうど合って会話がスムーズなんです」(博之さん)
頭上にあるオープンな吊り棚には、海外の旅行先で購入した思い出の品をディスプレイしています。「でも、私はこんな風に高いところに物が載っているは好きじゃないんです(笑)」と友季さん。夫婦間での話し合いの結果、重いものは置かないという落としどころをつけて今に至っているとか。
ちなみに、これまで行ってよかった旅行先のベスト3を尋ねるとモルディブ、ギリシャ、メキシコというお答えが。博之さんも友季さんもダイビングが趣味で、「コロナが終息したら行きたいですね~」という声に実感がこもっていました。
可能な限り広くとったリビングご両親の仕事の関係で子ども時代をアメリカで過ごした博之さん。その後イギリスの大学に進み、設計士の資格を取得してそのまま現地で就職したのだそう。
友季さんは国際物流会社の企画部門にお勤めで、おふたりが出会ったのはシンガポール。それぞれがシンガポール支社に赴任中だったときに出会った国際派夫婦です。
「海外の住まいはもともと広いんですけど、細かく間仕切りされていないんですよね。この部屋も暮らしのメインになるリビングルームをできるだけ広く取りたいという希望がありました」(博之さん)
その言葉どおり、こちらの住まいは「ほぼワンルーム」。くつろぎの場であるリビングが最大限にとられ、隣接するベッドスペースとワークスペースは出入り口に扉がなく、パーテション風の壁でゆるく仕切られているだけです。
「リビングの窓まわりをバーチカルブラインドにしたのはよかったよね」と友季さん。
「カーテンにしようかと思っていたときに、リノベーション設計をお願いしたnu(エヌ・ユー)リノベーションの担当デザイナーさんからブラインドをすすめられて。窓の面積が大きいので、カーテンだとちょっとしんどかったかもしれないです。ブラインドですっきりした印象になってよかった」(博之さん)
現在はプロジェクトマネジメントやデザインを手がける国内の会社にお勤めの博之さん。英国設計⼠の資格もお持ちですが、日本でのレジデンシャルの経験が無いため、この家のリノベーションではベースとなる基本設計をご自身で手掛け、細かい部分はnu(エヌ・ユー)リノベーションの担当デザイナーさんにお任せしました。
もともと博之さんは無骨なインダストリアルテイストが好みだそう。でも、売却のしやすさを考慮してリノベーション時にはその好みを全面には出さなかったといいます。
その代わりに無垢のオーク材の床、塗装や使用済みのコーヒー豆を配合したエコ建材で仕上げた壁など、(経年劣化ではなく)経年変化が楽しめる素材を選んだといいます。
ゆるく仕切ったワークスペースソファ背面の壁の裏をチラッとのぞくと、集中できそうなワークスペースが。リノベーションを進めていたのはコロナ以前でしたが、自宅でも仕事ができるスペースが欲しいという希望と、できるだけリビングを広くという希望を両立させるために、ゆるく仕切っただけのコンパクトなこのスペースが生まれました。
「ゲストに泊まってもらえる部屋にもできるように造り付けのデスクは折りたためる仕様にしたのですが、今のところここに泊まった人はいないです(笑)。コロナで在宅勤務になって、PCモニターをフィックスしてしまったので、人を泊めるのはちょっとむずかしいかな……」(博之さん)
現在、友季さんも在宅勤務中。友季さんの定位置はキッチンのカウンターテーブルです。「ほぼワンルームのわが家でも、間仕切りのおかげでそれぞれ仕事ができるところが気に入っています」(博之さん)
この部屋に決めた理由
リノベーションしやすそうな正方形の形と「中目黒」という立地シンガポールで出会ったおふたりは、日本に帰国後、一時的に墨田区の賃貸物件に暮らして日本での住まい探しをはじめました。立地でこだわったのは楽しそうな街であること。
「商店街があるとか、人が集まるとか、ワイワイしている街がよかったんです」(友季さん)
物件探しも、リノベーション設計を担当したnu(エヌ・ユー)リノベーションのサポートで進めました。中目黒のこちらの物件は、候補の中でもいちばんバランスのいい物件だったとか。
「正方形に近い形でリノベーションしやすそうだったこと、あとはやはり、中目黒という立地が、いずれ売却するときに有利なんじゃないかなと考えました」(博之さん)
実際に暮らしてみて中目黒ってどうですか?と尋ねると、「楽しいよね」と友季さん。
「話題のお店がオープンしたりと、トレンドが集まりやすいところだから、変化があって楽しいです。目黒川の川沿いを散歩するのが桜の時期以外も心地いい。あと、日比谷線の始発駅というのも、狙っていたわけではなかったんですが便利です」(友季さん)
残念なところ
個室がないパーテション風の壁で寝室とワークスペースをゆるく仕切ったワンルームスタイルの渡辺家。開放的な間取りはこの家の魅力でもあるのですが、ふとしたときに個室がないというデメリットを感じるときがあるとか。
「就寝時間が違うので、私が先に寝てしまうと、音を立てないように夫が気をつかってくれているんじゃないかなと思います。遊びに来た友人と夫が遅くまで飲んでいて、私は疲れたから先に寝るね、ということも、この間取りだとできないですよね」(友季さん)
ベッドまわりのコンセントが邪魔だった!「ベッドスペースの枕もとにコンセントをつけたんですが、これが邪魔でしたね(笑)。両端につければよかった」(博之さん)
住まいの細かい使い勝手の部分は、住んでみないと分からないこともありますよね。
「初めての持ち家であるこの家は“お試し”という側面もあって、2軒目、3軒目……とブラッシュアップしていければいいかなと思っています」(博之さん)
お気に入りのアイテム
メキシコの木彫りのトカゲお気に入りのアイテムを尋ねると、おふたりが「間違いなくこれ」と教えてくれたのがこちらのトカゲ! メキシコ旅行で購入したもので、1本の木から削り出されたオアハカウッドカービングという現地の民芸品です。緻密なペイントは手作業によるものなのだとか。
犬や鳥など、さまざまなモチーフのものがあるオアハカウッドカービングですが「以前に何かの本で生年月日から分かる“自分の動物”を調べたことがあって。夫も私もトカゲだったんです」(友季さん)
個性的な植物住まいのところどころに配されているグリーン。これらもおふたりのお気に入りです。
キッチンのカウンターテーブルに下がっているのはネペンテスという食虫植物だとか。
「ただ葉が生えてるんじゃなくて、房があるのがユニークですよね」(博之さん)
大きめの鉢で床置きしているのはブラッサイア。「二股に分かれたフォルムがユニークで選びました」と友季さん。渡辺家のグリーンはユニークがキーワードのようです。
「インテリアにあまり色を使っていないので、グリーンがあるとそのコーナーが華やかになるのがいいですね」(友季さん)
今年からベランダ菜園にも挑戦中のおふたり。ブルーベリーとフィンガーライムを育てています。気を付けているのは根腐れと害虫を防ぐことで、ていねいに世話を続けているおかげで順調に育っているとか。
「鉢に水分がたまらないように通気性のいいものを選んで、虫の卵を産み付けられないように表面の土の部分をカバーしています」(博之さん)
収穫が楽しみですね!
イギリスや北欧のヴィンテージ食器幼少期をアメリカで過ごした博之さん。身近にヴィンテージ品を扱うお店が多く、自然と古くて味わいのあるものが好きになったそう。学生時代には友人が運営するヴィンテージ食器店の買い付けの手伝いもしたことがあり、「ヴィンテージ食器にハマったのはそこからですね」(博之さん)。
イギリスや北欧の素朴な雰囲気のカップ&ソーサーが、さりげなく並ぶキッチンのオープン棚。カウンター下の収納にも、プレートやボウルなど、まだまだたくさんのコレクションがふだん使いの食器として納められていました。
暮らしのアイデア
作業効率を上げるセットアップを追求友季さんいわく「生産性を高めるPCのセットアップにこだわっている」という博之さん。業務上、図面のチェックバックが多いので、画面が3つのこのスタイルになることも多いそう。
デスクパッドとマウスリストレストはDELTAHUBの製品で、自身のセットアップを紹介する海外のユーチューバーから情報をキャッチすることもあるそう。モニター掛け式のライトはBENQの製品で「光が目に入らず、手元だけ照らすので作業がしやすいんです」(博之さん)
これからの暮らし
ステージごとに住み替えていきたいマイホームを選ぶときから「売却すること」を念頭に置いて物件探しをしたおふたり。
「一生、同じ家に住もうとは全然考えていなくて、家族が増えたらそのときにもっと広い物件に住み替えればいい。ライフステージに合わせて住み替えていくことを考えています」(博之さん)
もうしばらくこの住まいに暮らすことになりそうな場合、博之さんが考えているのが個室をつくる仕掛けづくり。必要に応じてベッドスペースやワークスペースの入り口部分に配置できるキャスターつきの家具がつくれないかと考えているとか。実現したら「個室がない問題」が見事に解決しますね。
海外で暮らした経験をもつおふたりの住まいは、訪れた人がリラックスできる大らかさと、無駄のない合理性をあわせ持った空間。しなやかな考え方が印象的なおふたりが、次に選ぶ住まいにも興味津々です。
Photographed by Kenya Chiba
取材協力:nuリノベーション
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