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日本独自の展開で席巻中! 「ザ・ノース・フェイス」がかっこいいブランドであり続ける理由

2021/07/08 15:30 投稿

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数あるアウトドアブランドの中でも、長年に渡ってナンバーワンの座を守り続けているザ・ノース・フェイス

自然の中での機能服としてはもちろん、普段使いのファッションアイテムとしても支持を集め、老若男女からも知られた大人気ブランドです。

創業は1966年と歴史は古いですが、いまでも進化を続けるそのブランド戦略とは何なのか? ブランドに携わって16年、ザ・ノース・フェイスマーケティンググループのマネージャー田中博教さんに、ザ・ノース・フェイスのブランドとフィロソフィーを聞いてきました。

ブランドの根っこは55年経っても変わらない

──突然ですが、ザ・ノース・フェイス(以下TNF)ってかっこいいですよね(笑)。これだけ長い間ブランドが続いているのに、ずっとイケてる存在。ブランドコンセプトがしっかり定まっていないとブレそうなものですが…。

ありがとうございます(笑)。確かに、アメリカで1966年に創業以来、ブランドのコンセプトは当時と変わっていないんです。

ブランドが大切にしていることが3つありまして、ミッションが『自然環境保護に積極的に関わり、持続可能な地球環境を創造する』。ビションが、『アウトドア業界の中で常に最高の製品を作り続ける』。バリューが『自然の素晴らしさを自らが楽しみ、より多くの人を楽しませる』です。

──なるほど。55年も前から“持続可能”と掲げているあたり、先見の明がありますね。本国はアメリカですが、世界中で展開するブランドとなったいま、グローバルで掲げている目標はありますか?

TNFはアウトドアブランドとしての認識があると思いますが、いまは『エクスプローラーブランドになる』という目標を掲げています。アウトドアブランドの本質を保ちつつ、より多くの人、より多くの挑戦をする人たちに愛されるブランドになるということを目的にしています。

Never Stop Exploringっていうタグラインがあるんですけど、それは「飽くなき探求心」という意味。その「飽くなき探求心」をアウトドアの人たちだけでなく、より多くの人に広げていくっていうのがブランドの今の考え方です。

──たしかに、最近はキャンパー向けやマタニティ向けなど、ターゲットの多様化も伺えます。

はい。でも、僕らが気をつけないといけないのが、多様性があるのはいいけど、多面的になるのはよくないと思っています。

ブランド価値が散らばっていくのではなく、あくまでもアウトドアブランドです。その本質を持ったまま、多様性があっていろんな方に愛されるというのを強く念頭においてマーケティングやモノ作りを行っていますね。

素材開発の拠点は富山にある「テック・ラボ」

──そもそもですが、日本で売っているTNFのアイテムって日本独自企画のものなんですか?

はい、1994年に弊社が日本と韓国における商標権を買い取りました。ですので、日本で販売している製品の企画やショップの売り場作りは日本独自のものです。アパレルは9割程度が日本企画ですね。バッグやシューズはまだ輸入物も多いですが、ほとんどが日本企画です。

──なるほど、となると素材開発なども自社工場で?

富山県にあるゴールドウィンのテックラボ。ここでは、ザ・ノース・フェイスをはじめゴールドウィンで取り扱うブランドに搭載されるテクノロジーが生み出すべく、日々研究を重ねている。

富山県に「ゴールドウイン テック・ラボ」という研究開発施設があって、そこで新素材の開発や研究を行っています。ゴールドウインの前身は富山県にあった津澤メリヤスという工場でして、第一回東京オリンピックのとき、東洋の魔女といわれる女子バレーチームのユニフォームもそこで作っていたんです。

そういった技術力が今にも継承されていて、テック・ラボには3次元計測装置を備えたスキャナー室やさまざまな気象条件を人工的に再現して製品テストを行う人工気象室、モーションキャプチャーによる動作測定が可能な運動研究室など、最先端の設備が揃っています。

プレスルームには次シーズンの新作サンプルが並んでいます。

──そういったさまざまな技術を生み出せる研究環境が、日本国内にあるというのはすごいですね。

いまは日本のクリエイションや技術力が、グローバルなザ・ノース・フェイスに大きな影響を与え始めているという状況が起きています。その最先端にあるのが、テック・ラボ。

例えばスポーツクライミングであれば、金メダルを取れそうなアスリートに着用してもらってモーションキャプチャーをやり、何度もテストを重ねて製品化します。そのユニフォームを、アメリカ・オーストリア・韓国・日本の4か国がオリンピックで着用することになりました。

日本のクリエイションがアメリカへ逆輸入

ザ・ノース・フェイスらしい雰囲気の原宿店内。テイストはどの店舗も統一し、ブランディングにも一役買っている。

──TNFは各店舗の作り込みもおもしろいですね。どこに言っても違う雰囲気で、ついつい見つけると足を運んでしまいます。

僕は入社して16年になりますが、一番変わったのはTNFの直営店が増えたことです。やっぱり自分たちの世界観をブレずに伝えるっていう意味では、直営店のほうがよりそのブランドの深さは伝えられるんです。

ウィンドウディスプレイにしても、店頭に置くPOPにしても、すべてですよね。お客さんが触れるもの、見るものすべてをTNFの世界観で提供できるように工夫しています。

──キッズやレディースといったカテゴライズでの展開もおもしろいですね。どうやってTNFの世界観をブラさないように心がけていますか?

何を伝えたいのかを明確化しますね。

キッズであれば、生きる力を育ませるために自然に触れ合う大切さを伝えたい。アイテムを通して、しっかりとそのメッセージを伝えていく。ウィメンズであれば、例えばジェンダーレスをブランドの考え方として伝えるために、店で情報をアウトプットするイベントをやったりしています。

モノ作りと店ってかなり連動している側面があるので、企画も売り場の担当も一緒に打ち合わせすることが多いですね。

本国アメリカに逆輸入された「ジオドーム4」。カタログにも掲載しました。

──アメリカのTNFもこだわった店舗作りをしているんでしょうか?

いえ、これも日本独自の取り組みです。アメリカの社長がこの取り組みを見て、逆に日本にストアディレクションをお願いするということがありました。

ほかにも日本のクリエイションが本国からも評価をされていて、2018年に発売した「ジオドーム4」というテントはアメリカに逆輸入されました。

売上だけを求めない、日本流TNFとは

当時話題となった「ムーン・パーカ」最大の特徴は、現在の洋服の主原料となっている石油などの化石資源に依存せず、微生物による発酵プロセスによってつくられた構造タンパク質を使用しています。

──日本の企画が本国に認められるというのはすごいことですね。2019年に発表した、人工タンパク質を使った「ムーン・パーカ」も話題を集めましたね。

ブランドを支えてきたハップ・クロップが当時からよく言っているのですが、小さなことをコツコツやるのも大切だけど、社会の仕組み自体を変えるような破壊的創造みたいなことは、やる必要があると。

スパイバー社とのプロジェクトはまさにそれを体現しているのですが、ムーン・パーカはようやく一部のお客さんに届けることができた段階です。もっと多くの人に届けるというのは今後の大きな目標ですね。

──話題作りといえば、各種ブランドとのコラボレーションが毎回注目を集めています。あれも日本企画でしょうか?

日本主導で行ったのは、コムデギャルソンにはじまり、最近だとHYKEやエンダースキーマですね。シュプリームやグッチはアメリカ主導、サカイはアジア主導です。

こういったコラボ展開を始めたことで、よりブランドがライフスタイルにも取り入れられるきっかけにもなっているのは事実なんですが、売上を目指してあまりマスになりすぎるのを日本では避けるようにしています。なので、モノ作りに対する姿勢においてお互いに共感できるブランドとご一緒させていただいています。

──売上至上主義ではない、というのもブランドがブレないポイントなんですね。

実際、もう少し広域なマーケティングをし、母数を増やすべきではないかという考えが強い方々もいます。ただ広域なマーケティングを行うことで売上は伸びるかもしれませんが、ブランドが大事にしている本質が失われることが多くあります。それが私たちが本当にやりたいことかと考えるとそうじゃないんです。

たとえばヒット商品と言われるダウンにしても、売上重視というよりは作りすぎず、必要最低限を届けるようにすることで、私たちがブランドをしっかりと育てていくことを大切にしているんです。

Photographed by Kaoru Mochida

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