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ハンドルだけで3時間。俳優・田中 陸さんが、愛車のカスタムをDIYにこだわった理由|みんなの自転車

2021/03/19 10:30 投稿

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「そこで妥協したら、人生のいろんな局面で負けてしまう気がして」

正解もわからないなか、悪戦苦闘しながら、自分の手で愛車をカスタムした田中さん。達成感はひとしおだろうけど、どうしてそこまでして?

その答えが、かかる言葉でした。ともすればケレン味たっぷりに聞こえるひと言。

でも、実際のところ、暮らしの隅々までをつぶさに見つめ、自分ごととして考える田中さんのまじりけない本心。

よどみなく言い放った言葉には、彼のひととなりと物事への眼差しがそのまま表れているのでした。

名前(職業):田中 陸さん(俳優)
年齢:25歳
愛車:FUJI Feather
価格:およそ8万円
自転車歴:1ヶ月

買って早々、衝突事故に…

以前、「みんなの部屋」にも登場してくれた田中さん。あのときは、植物とレトロ家具が雑多に溢れるユニークな一室を披露してくれました。

一方で、俳優業においてもメキメキと実力をつけており、舞台や映像作品にと精力的に活動中。

さて、そんな田中さんに今回の出演を依頼したのは、取材の1ヶ月ほど前のこと。

「自転車を買った」という投稿をインスタグラムで発見するや否や、すぐさま連絡。二つ返事で快諾してくれました。

ただ、それから1週間もしないうち、彼の投稿を見ているとなにやら不穏な空気が……。どうやら、買ったばかりの自転車に乗っていて事故に遭った様子。大丈夫だったの?

そうなんです……! サウナに行く途中のことでした。僕が車道を走っていたら、脇道から自転車が飛び出してきて……。気付いたときには道路に仰向けになっていました。顎を5針縫ったほかは、幸い大きな怪我はありませんでしたが。

まるっきりもらい事故だったのですが、せっかくだから今日は、『自転車の運転には気をつけてください』と読者のみなさんに伝えられたらと思って(笑)。

とにかく、大事に至らなかったということでひと安心。見たところ、自転車も大きく損傷していないよう。

破損したのは、サドルと小さなパーツくらいでした。もともとフレーム以外はぜんぶカスタムする予定だったので、事故にあったついでというのもなんですが、サドルとハンドルなどは変えてしまいました。

「ここで妥協したら、いろいろと負けてしまう気がして」

FUJIを選んだのは、ほとんど直感。ギアまわりの見た目がすっきりしているシングルスピードが好みで、ならばと「Feather」を選んだのだとか。

細かなルックスや機能をとりわけ気にせず選んだのは、最初からフレーム以外のパーツはぜんぶ自分好みにカスタムする予定だったから。

フレーム以外はブラックのパーツで統一されていましたが、黒はあまり好きじゃないんです。

最終的には、すべてのパーツを未塗装のシルバーのものに付け替えたいと思っています。

かくして、不慮の事故に図らずも後押しされるかたちで、サドルとハンドル周りをさっそくカスタムしたというわけ。訊けば、カスタムは自分でおこなったのだといいます。


詳しい友達に聞いたり、カスタムできるお店を探したりしました。

でも、『なんかダメだな』と思って。自分の愛車なのに、だれかの手に委ねちゃいけないなと。それで、パーツをネットで購入して、カスタムの方法も調べて、ぜんぶDIYしました。

やはり専門の職人さんがいるくらいなので、そう簡単にできるものではありませんでした。ハンドル部分も、『外して付け替えるだけ』くらいに考えていましたが、実際は、ブレーキのワイヤーまで引き抜く大工事に。ハンドルだけで3時間くらいかかりましたね。

苦労の色をにじませながらも、どこか嬉しそうに話す田中さん。カスタムすることで自分色になるのはさることながら、自分の手をつかって試行錯誤の末に完成した一台。愛着もひとしおでしょう。でも正直、どうしてそこまでして?とも感じてしまいます。

お金を払ってしまえば、ラクにカスタムできる。それが悔しくて……。たとえ壊れたとしても、自分でやってみたかったんです。そこで妥協したら、この先の人生でいろいろ負けてしまう気がして。

自転車ひとつだからといって、“人生”にまで拡大解釈してしまうのも、決してドラマチックに見せようとしているわけではなく、あくまで田中さんの等身大。そう感じるのは、自転車のカスタムはもとより、彼が暮らしのさまざまなことにつぶさに思いを巡らせているのがわかるから。

お芝居も、正解がわからないなか手探りで進めていくことが多いんです。それを経て、いいお芝居ができたあかつきに人から評価される。その喜びを知っているからかもしれません。そうした感覚を忘れたくないんです。


それに、自転車って、子どもの頃から好きだったもののひとつです。

大人になって時代が便利になって、お金も手に入れたからといって、それを頼りになにもかも簡単にしてしまいたくないんです。『そんな大人になりたくない』と、たしかあの頃は考えていましたし。

自転車を買ったことをきっかけに、自分のなかにあるジュブナイルを再発見することに。

自分の“真ん中”に立ち返ることができたのが、田中さんはなにより嬉しいのだといいます。

自転車は有酸素運動。オートミールがささみに?

狙いすましたわけではなく、あくまで結果論として。自転車に乗りはじめたことによる意図しない気づきは、ほかにもあったようです。

シングルスピードは、漕いだぶんだけスピードも出るし、それだけの距離を進める。“やった分だけ”というのは自分の性に合っているなと、乗っていて気づきました。

そしてまた、自転車を引き金にして、暮らしのさまざまがドミノ式に変化してもいるようです。

以前から、体づくりのために筋トレをしていたのですが、自転車を手に入れたことで、そこに有酸素運動をプラスできました。そして、せっかく有酸素運動をしたからにはと、食生活も見直すように。

かねてからかなり節制をしていて、三食とも『オートミール、味噌汁、卵、納豆』の組み合わせでしたが、いまは『ささみ、味噌汁、卵、納豆』に。それに加えて、野菜とプロテインもしっかり摂るようになりました。

運動や食生活にそこまでこだわらなきゃいけないなんて、俳優業って、やっぱり一筋縄ではいかないのですね……!

それだけやっていても、オーディションに行くと、ひょいと飛び越えてくるひとがごまんといるんです。そういう世界なんだと、特にこの1~2年の間に思い知らされました。僕の場合は事務所にも入っていないので、自分で追い込まないといけませんし。

自転車とはいっけん無関係のことがらも、田中さんにとっては、わけへだてなく地続き。だからこそ、カスタムひとつも自分ごと。だからこそ、暮らしの隅々までをつぶさに見つめ直すきっかけにもなったのでしょう。

彼が見つめる先の風景は、これからは、いつでも自転車とともに。きっと。

Photographed by Masahiro Kosaka

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