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6DKの平家をセルフリノベで改装。無機と有機が調和する、心地よい空間づくりとは?(福岡県北九州市)|みんなの部屋

2021/02/26 14:00 投稿

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福岡県は北九州市。小倉から九州の東部を通り鹿児島までを繋ぐ、日豊本線の駅から歩いて5分ほどの場所。

ここに、今回ご紹介するミツルさんの住まいはあります。

お名前(職業):ミツルさん(会社員)
場所:福岡市北九州市
広さ:6DK 120㎡
家賃:非公開
築年数:40年
住宅の形態:戸建

 

ミツルさんが住んでいるのは、6DKのひろびろとした平屋の一軒家。

希望の物件がなかなか見つからなかった頃、新しく貸し出すかもしれない家の見学に同席させてもらったことがきっかけで、今の住まいを見つけたそう。

平日は仕事をしながら帰宅後の時間でセルフリノベを進めるミツルさんの、住まいづくりや物づくりに関するお話を伺いました。

お気に入りの場所

心地よい木漏れ日がそそぐ縁側のデスク周り

リビングに入ってまず印象的だったのが、縁側を利用した木漏れ日が降りそそぐワークスペース。

「住まいづくりの中で最初に着手したのが、この縁側スペースでした。いちばん気持ちよくて面積の小さなスペースからはじめようと思ったんです。

全体を白く、壁は石膏ボードで固定し、パテで埋めました。もう少し落ち着いてきたら、さらに床に手を加えようと思っています」

ショップの内装から着想を得たダイニングスペース

まるでお店のようなダイニングスペースは、リノベの作業スペースとしても活用中。

こちらの内装は、ミツルさんが各地を訪れる中で琴線に触れたお店を参考にしているそう。

「広島にあるフランスアンティークショップcite’さんと、新潟にあるインテリア用品のお店oblaatさんを参考にしてつくりました」

「光をまだうまく取り込めていないので、カーテンなどは見直しつつ、インテリアの充実を図っていきたいですね。作業スペースも、より作業がしやすいように改良を図っていくつもりです」

和室の構造を活かしたオーディオスペース

「偶然だったのですが、もともと持っていた機材と押入れの奥行きがピッタリだったんです。父親から譲り受けたスピーカーと合わせてオーディオスペースが完成しました。

テレビを置いておらず、普段はラジオか音楽をかけて生活しているので、帰宅するととりあえずオーディオの電源を入れています」

最近DJを始めたというミツルさん。

もうひとつターンテーブルを購入すればアナログDJもできるようになるとのことで、今後少しずつ機材が増えていく予定だそう。

もとの家財と自作のカウンターが調和したキッチン

キッチンをのぞいてみると、ダイニングスペースとはまた少し違った雰囲気に。

カフェのようなカウンターが印象的な空間です。

「もともとあった備え付けの食器棚が最初は好きになれなかったのですが、ガラスを外すといい感じになったので、そのまま使っています」

「漆喰などを混ぜながらつくったカウンターは、見た目や質感でどれだけ奥行きが出せるかを研究しながらつくりました。

コーヒーが好きなので、カウンターでも淹れやすく。かつ、居心地がいい空間を意識しましたね」

全面的に改装するのではなく、元の空間を活かして心地よく。

既存のものにミツルさんの工夫が注がれ、住まいの歴史が深まっていくようです。

この部屋に決めた理由

理想の空間づくりができる、リノベ可能な物件

以前の住まいは、一般的な賃貸集合住宅だったというミツルさん。

スペースに限界を感じ、新たな物件を探す中での条件は、「リノベ可能、広さは当時の2倍以上になる45㎡」。

ネットや不動産屋を複数件まわる中でも見つからず、ようやく出会えた物件はリノベ可能で、当初の希望よりも広い120㎡。

内見の際にまず確認したのは梁だったそう。

「当時は、具体的に住まいの使い方を固めていたわけではなく、空間自体を自分で手がけられるようなポテンシャルの高い物件を探していました。

最初に住まいを訪れて屋根裏を見せてもらったとき、梁を確認して、この住まいなら理想の空間がつくれそうだと感じましたね」

ミツルさんの空間づくりのルーツは衣服。最近では、洋服に関するInstagramアカウントの運営もはじめたとのこと。

リビングにも、アパレルショップのように吊るされた洋服掛けがありました。

「昔から洋服が好きで、そこから洋服をつくる人の住まいにも関心を持つようになったんです。

そうした中で、できあいの空間より、部屋も自分が手を動かしてつくっていきたいと思うようになりました」

「この物件は、大家さんがキッチンの一部をセルフリノベされていてリノベのハードルが低かったのと、お風呂場などの水回りはリフォーム済みで手を付ける必要がなかったところがよかったですね」

縁側からのきれいな木漏れ日

メインのワークスペースには、庭からたっぷりの木漏れ日が降りそそぎます。そんなところも住まい決定への後押しになったそう。

「平日は昼の時間、仕事で家にいることがないのですが、休日はこの木漏れ日にすごく癒されますね。カーテンに写る影も気に入ってます」

残念なところ

室内でも息が白くなるほどの寒さ

取材に伺った前の週、ミツルさんが住む北九州市では大雪。

部屋の構造上ただでさえ寒い上に、ストーブの灯油も購入できない状態に。

「窓が多いこともあり、夏場は風通しがよく涼しいのですが、冬場はその分寒さが堪えますね。

いまは一般家庭用のアラジンストーブなのですが、将来的には業務用を購入して温めていくしかないと思います」

お気に入りのアイテム

各地で探し回ったデスクランプ

縁側のワーキングスペースで使っているデスクランプの「Gras Lamp」は、長い間使ってみたくて各地を探しまわり手に入れたインテリアのひとつ。

「兼ねてから狙っていた照明でした。会社の研修で東京に訪れたときに探し回ったのですが、数が少なく、しかも高くて。

たまたま福岡で見つけた際に金額も想定より安価に販売されていたので購入しました」

「見た目はもちろん、オリジナルのパーツが残っていて、シンプルな構造が気に入っています。

関節部はクリップで止められているだけだったりと、壊れてもその原因が分かるところも好きですね」

コートジボワールのヴィンテージチェアとスツール

ダイニングスペースにあるチェアとスツールは、色合いもデザインもかわいらしく、部屋の中で印象的なワンポイントに。

一見高そうですが、こちらも偶然の出会いからお得に手に入れられたアイテムなのだとか。

「セレクトショップで購入するとかなり高額だと思うのですが、たまたま民芸店で安価に販売されていたのを見つけたんです。

お店側もなかなか買い手が見つかっていなかったようで、お互いにとっていい出会いでしたね」

ミツルさんの頭の中では常に気になっているアイテムがリストアップされていて、そのアイテムと出会った際にすぐチェックできるようにしているんだとか。

状態や金額など知識があるからこそ、いいものを見定められるんですね。

SNSで見かけて関心を持ったチェア

「ワークスペースにあるHans J. Wegnerのヴィンテージチェア『CH36』は、SNSでフォローしていた編集者の方がご自宅で使われているのを見て、興味を持ったんです。

ウェグナーだとYチェアの方を見かけることが多いですが、個人的にはシンプルなデザインがすごく気に入って、一目惚れで購入しました」

技術と手仕事感がある器類

キッチンの食器棚に並ぶのは、ミツルさんこだわりの器類。ポイントは「軽さ」なんだそう。

「昔からフランスアンティークや作家物の器が好きで、気に入ったものがあれば購入しています。

プロのつくった食器は、触れたときの軽さから薄くても形状を成立させる“技術”を、また、染めのラインに出る手仕事感から“伝統”を感じるんです。使ったとき、作り手のすごさを感じさせるモノがいいなと思いますね」

初めて購入した器は、大谷哲也さんの器

マットな白の色合いと、裏側から見たとき平面になっているデザインが美しく、触り心地もいい器でした。

暮らしのアイデア

“真似る”から“学ぶ”暮らしづくり

お部屋の空間づくりはもちろん、ミツルさんが暮らしの中で大切にされていることが、いいと思ったものを手に取り、製作者の意図に触れること。

そうした中で新たなアイデアも得ているんだそう。

「例えば今の部屋でいうと、先ほどのテーブルランプで使われていたクランプはコード類を散らさず留めておく機能があるんです。

そこから着想を得てリビングのデスクも同様に、コード留めとしてクランプを利用しています」

お店でもよく見ていたと話す、照明と陶器の融合。

ミツルさんは接続部の木をコーヒー染めして、住まいの色合いと調和するようにアレンジしたそうです。

アウトプットではなく、インプットを見る

各空間が洗練された雰囲気の、ミツルさんの住まい。

その感性の源がどこにあるのか気になるところですが、意識されているのは触れた先にあるインプットの場所。

「日々の生活や地方でいい場所や人に出会えたとき、可能な限り同じ目線で話ができるように、インプット元の目線を合わせるように意識しています。そうすることで、吸収できるものの質を高められたらと考えているんです。

源泉を辿ることで得たものを、アウトプットに活かしていきたいですね」

無機と有機の融合

「自分自身が空間づくりをする上では、常に無機と有機を融合させることを心がけています。

直線だけで構成されると無機ですが、そこにどれだけ自分のアイデアや痕跡を残せるかがコンセプトだと考えているんです」

「そのとき、有機的なものとして何があるかを考えたときに出てくるのが、石や木漏れ日といった自然がつくり出すもの。それをどう空間に組み込んでいくかを大切にしています」

床の間に吊るされた石は、真ん中に穴を開けたお香立てです。

「床の間を活かしたいという思いはもともとあったのですが、石の有機性も加えて作成しました。コンクリート用のドリルで、何とか思い通りのものができましたね」

これからの暮らし

人を巻き込んだ住まいづくり

季節や、自然といった外部の有機物を取り込んでいくことはもちろん。部屋の可能性を広げる“人”との関わりも、これからの暮らしのイメージにはありました。

「現在のDIYの完成度は20%程度で、着手できたのは2部屋ほど。これからの1年で残りの4部屋分を完成させていきたいと考えています。

写真撮影のスタジオとしてだったり、DIYの工房、出張の料理教室など、私自身がそうだったように、人との関わり合いの中でより使いやすい部屋をつくり込んでいきたいですね」

眼科や歯科だった場所を改装しながら暮らしたい

「現在の住まいを探すにあたって、本当はふたつの選択肢があったんです。ひとつは平家で梁を見せた住まい。もうひとつは古い眼科や歯科を活用した住まいでした。

前者である今の空間ができあがったら、後者の住まいを改装しながら暮らしていきたいです。そうした場所は、2階に開けたテラスのようなスペースがあるイメージなので、そこでより自然を取り込んだ暮らしをつくっていきたいですね」

玄関入ってすぐの場所にあった小さなボックス。

それはミツルさんが帰宅した際に創作意欲が沸くようにと置かれた、ご自身の作品を象徴する制作物でした。

飽くなき探究心に、日々大切な想いを振り返りながら創造を進める行動力。

まだまだ可能性溢れる平家でミツルさんのアイデアを具現化した先にはきっとまた、今からは想像が付かないような空間が広がっているはずです。

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