そこで、普段から交流のあるブランドやショップを訪ねてみることを思いついたROOMIE編集部。グレーという色とどのように付き合い、世界観を表現しているのか、紐解いていきます。
今回訪れたのは、北欧発のアウトドアブランド、ヘリーハンセン。ブランドの新作アウターは、アウトドアの機能をミニマルなディテールに落とし込んだ、シンプルな1着。
カラーリングは、都会に映えるグレー。アウトドアウェアというと視認性の高いカラーリングのものがなにかと便利そうなのに、どうして? そこには、ブランドの生まれ故郷である北欧ならではの自然との向き合いかたが、じつは関係しているのでした。
ヘリーハンセンのライフスタイルラインに注目!
ノルウェーの元船乗りが立ち上げた生地工場に端を発する、ヘリーハンセン。海や山を知り尽くしたブランドならではの高機能なアウトドアウェアは、世界中のアウトドアマンたちから、根強く愛されています。
そんなヘリーハンセンは、新ラインの「NATURE FITNESS(ネイチャーフィットネス)」を2018年にローンチ。「見える機能よりも心と身体が感じること」をたっとぶライフスタイルを提案しています。
「ライトストレッチフルジップ」を着用してくれたのは、原宿店スタッフの柳田さん。
そのなかでも、軽やかさとストレッチ性を兼ね備えたウェアを展開するのが、「LIGHT STRETCH(ライトストレッチ)」シリーズ。
生地は、前述の通り軽くてストレッチ性があり、さらに撥水性も加わったポリエステルタフタ。
ソフトな肌触りとやわらかな着心地でありながら、いっぽうで、ウィンドブレーカーとしての役割はしっかりと果たしてくれる、まさにすぐれもの。
この1枚だけでは厳しい真冬には、ロング丈のアウターと組み合わせるなど、レイヤードを意識すれば、中間着兼差し色としても機能してくれるというわけ。
また、速乾性もあってコンパクトに持ち運べるとなれば、旅行用のエマージェンシーウェアとしても活躍することうけあい。都会に生きる僕らに嬉しい機能が、満載だ!
これぞ、機能美。ミニマル極めるディテールワークの数々
フロントやポケットのジップは、フラップが施されているから閉めると隠れる。脇下のベンチレーション(通気穴)は、生地のほつれを防ぐためにポリウレタンコーティングで補強。この加工によりフラットな通気穴を実現しています。
また、袖のゴムが、さりげなくフィット感を高めてくれる。詳しく見れば見るほど、ミニマルでスマートな見た目を損なわない工夫が、そこかしこに。
おなじみの「HELLY HANSEN ロゴ」をあえてつけていないところにも、ヘリーハンセンの本気を感じられる。
ランニングやフィットネスウェアとしてだけでなく、ファッションにも取り入れやすいことを考えると、全方位的に都会の暮らしに馴染みよいアウターと言えそうだ!
そして、なにより。アウトドアの機能を抜かりなくまといながらも、普段の装いにすんなりと溶け込むのは、グレーというカラーリングがなすところも大きいような気がするのです。
自然と調和する。北欧のアウトドアマインドとは?
そもそもの話。
ヘリーハンセンのものづくりは、つねに“水”とともにあります。1877年に防水ウェアのパイオニアとして生まれてこのかた、ウォータースポーツやアクティビティにおける問題を解決しながら、いっぽうで、積極的に水を楽しむことを第一義にしてきたとか。
その根っこにあるのは、北欧のアウトドア文化。船の所有率は日本とは比べものにならないほど高く、ヨットセーリングといったアクティビティも、日常的に楽しまれています。サマーバケーションには、湖畔のほとりにキャビン(小屋)を立てて暮らすというのも、彼らのスタイル。
ヘリーハンセンに落ち着いた色味のアイテムが多い理由は、ひとえに、そうした文化や習慣をしっかりと製品へと反映させているがゆえ。
いわゆるアウトドアウェアと聞いてイメージするような、赤、緑、黄色といった発色のよいカラーリングをまとって「頂を制す」のではなく、自然環境と心地よく調和すること。それが北欧生まれのヘリーハンセンが掲げるアウトドアマインドであり、それがそのまま、ウェアやギアのカラーリングに表れているのです。
アーバンなたたずまいに感じられる「ヘリーハンセンのグレー」は、そのじつ、自然との調和をおもんじる北欧の文化が生み出したものだったのでした。
Photographed by Kaoru Mochida