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友達の輪が広がるほど、住みよくなる⁉︎ 数珠繋ぎで住み継がれる、家賃2万5千円のシェアハウス(杉並区松ノ木)|みんなの部屋

2020/10/30 14:00 投稿

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一軒家の2階部分を大家さんが友人の息子に間貸ししたのが、そもそものはじまり。そこから数珠繋ぎ的にひとがひとを呼び、代々住み継がれてきた(壮大なサーガ?)、「松ノ木ハウス」。

「僕が何代目の住人なのかも、まったく見当がつかないんです」と話すのは、カルチャーWEBメディアCINRA.NETを運営するCINRA, Inc.のディレクター・四位拓郎さん。

ここに越してきたのは2018年8月のこと。丸2年が経ち、この暮らしからますます抜けられなくなるばかりとか。

それは、ここに集う仲間たちとのかけがえのない時間と、その“痕跡”ゆえ。

お名前(職業):四位拓郎さん(CINRA, Inc.のディレクター)
場所:東京都杉並区松ノ木
面積:45㎡
家賃:25,000円(ルームシェアひとりあたり)
築年数:築36年
住宅の形態:一軒家

お気に入りの場所

ホームパーティを不定期開催! リビングが友人たちのハブに

築36年と年季の入った一軒家。その2階部分が四位さんのお部屋

松ノ木ハウスは、最大20人くらいを収容できる“箱”。

というのも、四位さんのホームパーティ好きが高じて、友人が友人を呼び、自粛期間前なんかは月に1、2回の頻度でホームパーティが開催されていたのだとか。

「たとえばおなじ人数で飲み会をするにも、居酒屋でやるのと、ここでやるのとでは全く趣が異なります。

ここはクローズドの空間ですし、席も固定じゃないから自由にいろんなひとと話せる。たとえ初対面のひと同士でも、ぐんと距離が縮まりますよ」

表札は友人の手作り

ちょっと待って、さすがに20人も集まってホームパーティしていたら、下に暮らす住人から苦情が来るのでは?と気になる……。

聞けば「下の階には大家さんが住んでいます」って言うんだから、なおさら!

「結構うるさくしてると思うんですが、じつは一度も苦情が来たことはありません(笑) というのも、大家さんは、ザ・高円寺生まれ高円寺育ちのカルチャーが大好きなひと。

フジロックにも毎年行くような人で、いつも爆音で音楽を聴いているんです。だから、幸い2階の騒音も気にならないのかも?(笑)」

この部屋に決めた理由

カフェで面談、家賃2.5万円、リフォーム自由

そんなおもしろい大家さんだからか、賃貸契約もかなり特殊なもの。

入居者は完全紹介制。

まず、住んでいる(or出ていく)住人が新しい住人候補を連れてきて、カフェで20分くらい大家さんとの面談を行う。そこで問題がなければ、ここの住人とあいなるわけです!

「しかも、家賃は2階全体で5万円(ふたりで住めば、ひとり2.5万円)で、初期費用もゼロなんです」

四位さんのお部屋

もちろん(もう何が「もちろん」なのかもわからなくなってきた……)、入居者は内装を自由にリフォーム可能。

カフェで面談、家賃2.5万円、リフォーム自由って、規格外すぎる~! 

とはいえ、自由である反面、それなりの問題も多いんじゃない?なんて疑問も。

「入居当初のリビングには、『このエアコンだけは絶対に点けるな』と代々言い継がれてきたという、見たこともないような古いエアコンが設置されていて……」

ほうら、やっぱり落とし穴があった! と妙に納得していると、

買い換えた新しいエアコン

「でも、買い替えるとき、大家さんが設置代まで負担してくれたんです!」

カフェで面談、家賃2.5万円、リフォーム自由、おまけに手厚いなんて、そんな馬鹿な……。

残念なところ

イケメンと暮らした、そのさきに…。

四位さんが松ノ木ハウスに入居してから、同居人はすでに2回入れ替わっています。

「いまの同居人は、僕が地元・宮崎県にいる頃にローカルメディアを手伝ってくれていました。

歳は5、6個離れていて、この春、大学を卒業したばかり。ちょうどコロナで就活がうまくいかなかったので、『とりあえず東京に出てきたら?』と誘ってみたのが入居のきっかけです」

四位さんの部屋からリビングを挟んだ向こうが、同居人の部屋。
押し入れをデスク代わりにしている

現在の同居人との暮らしはいたって快適、とはいうものの、他人と寝食をともにするのは、なまじ簡単なことじゃないはず。

とりわけ、「もともと仲がいい間柄であるほどうまくいかない」というのは、やっぱり定説のようで……。

「最初の同居人は、7年来の友人でした。とにかくイケメンで、Tinderで3000マッチという実績の持ち主。

それだけに、家に帰ったら知らない女の子がいる、なんて状況が何度かありました……。自分の分の家賃を払って部屋に連れ込んでるわけなので、注意するわけにもいかず。

でも、どうにか鬱憤を晴らしたくて、玄関に置いてある女の子の靴を撮って無言でツイッターに投稿する、という陰湿な抵抗をしていました(笑)」

ルームシェアの鉄則:イケメンと暮らすべからず。

お気に入りのアイテム

This is “松ノ木ディスコマシーン”

ホームパーティに集まる友人たちは、めいめいにユニークなアイテムを持ち寄ってくるんだとか。

ひとえに、自分たちにとって居心地のいい空間をつくろうとするがゆえ。

「先日は焼き鳥キットを友人が持ち込んで、焼き鳥パーティを開催しました。ちなみに今度は、ここでラーメンを一から作ってみたいからと、寸胴を買ってこようとしている友人もいます(笑)」

そうやって半ば強制的に集められたアイテムのなかでも、“松ノ木ディスコマシーン”と名付けられたミラーボール(名前負けにもほどがある!)は、特に四位さんのお気に入り。

2,000円ほどと安価なのに、Bluetoothで音楽を聴くこともできる。

アジアのクラブさながらの雰囲気を演出してくれる安っぽい光が、むしろいい感じです。

譲ってもらった棚と作業スペース

譲ってもらったというこちらの棚は、四位さんが最初の同居人と一緒に塗った壁の色に、蛍光イエローが絶妙マッチ。

まるで、ずっとここにあったかのような馴染み具合! ようこそ~。

仕事はリモートで作業することも多く、最近は友人と集まってコワーキングすることも多いのだそう。

「家で作業をすることもあるので、モニターやオフィスチェアも揃えました。おかげで、部屋の作業環境は格段に充実しましたね」

身近な友人たちの作品

松ノ木ハウスに集まる友人たちのなかには、写真家やイラストレーターといったクリエイターが多いとか。

ひとつ前と現在の同居人も、じつはフォトグラファーだったりします。

部屋のなかに飾られている作品は、どれもこれも、そうした友人たちのもの。

「いろんなひとが訪れるからこそ、彼らの作品をここに置く意味もあると思うんです。ゆくゆくは、家とギャラリーの中間のような役割を果たせる場所にできたら……そんな風に考えています」

暮らしのアイデア

グーグルホームは、連絡用にも、いたずら用にも

暮らし方の違いが、ともすれば大惨事をまねくのがルームシェアというものですが、これまで暮らしてきたなかで比べると、現在の同居人との間にはそうした“ズレ”はほとんど無いのだと、四位さんは言います。

「彼は、基本的に生活力が高いんです。ゴミの分別を細かくしてくれたり、朝起きるとコーヒーを淹れてくれたり。

ただ、まだ東京に越してきたばかりでお休み期間中なので、僕より早く寝て、僕より遅く起きる。そうすると、『こっちは仕事してるのに!』という気持ちになってしまう(笑) そこで、最近導入したコイツが役立っているんです」

レトロアパートの壁にも難なく馴染んでしまうデザイン性には、目を見張るな〜

と示されたるは、「グーグルホーム」。

リビングにひとつ、お互いの部屋にひとつずつ、と計3つを設置しています。

「ご飯ができたときなど、これを経由してメッセージを飛ばせるので、なにかと便利。音楽を聴くこともできます。

たまに、向こうがだらだら遅くまで寝ているときに『起きろ~!』と叫んでみたり、変な音楽を流してみたりして、いたずらしています。自由な生活への単なる嫉妬なのですが……(笑)」

おふざけDIYこそ、ライフハック!

ホームパーティを開くときは、その会のメインディッシュにまつわる曲をテーマソングに、ちょっとしたひと工夫をすることもあるとか。

「たとえば、以前餃子パーティをやったときには、CHAIの『ほれちゃった』(餃子愛をうたった曲)に掛けて“ほれちゃったナイト”と銘打って、自分たちでフライヤーまで作りました!」

ちなみに、そもそも“松ノ木ハウス”という名称は、もちろんあの『テラスハウス』を文字ったもの。

「新しい入居者が入ってきたときは、『テラスハウス』のオープニング映像のパロディとして、右下に白文字でプロフィールをあしらった画像を作るようにしています(笑) 

じつは知り合いに頼んで、いま松ノ木ハウスのロゴやタグラインも制作中。ただのおふざけなんですけどね」

ちょっとした工夫で、なんてことない暮らしも、遊びも、楽しみ倒す。

それって底なしにハッピーで、すんごく素敵なライフハックなんじゃない?

これからの暮らし

「この暮らしから、どんどん抜けられなくなっていくんじゃないかという、不安もあります。

これまでのふたりの同居人は、どちらも彼女と同棲することが決まってここを出て行ったのですが、このままだと僕は婚期も遅れてしまいそうだし、“寮長”的な立ち位置が、ますます確立されていきそうです……」

安い、広い、なによりひとが集まって楽しい。三拍子そろって快適このうえない松ノ木ハウスでの暮らしに、とっぷりと浸る寮長(じゃなかった、四位さん)。

抜け出せなくなる不安を打ち明けながらも、いっぽうで、「次は一軒家に暮らしたい」と次なる野望もちらり覗かせます。

「友人の輪が広がるほどに、この広さでも、少々手狭に感じるようになってきて……」

いやはや、こりゃ、パーティの規模はまだまだ大きくなっていきそうな予感!

また一軒家に越した頃に、もう一度お邪魔したいものです。大所帯を引き連れる、立派な寮長の姿も気になるし。

Photographed by Kaoru Mochida

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