というわけで、大人も子どもも楽しめる絵本の紹介をしていきたいと思います。
第14回は、トミー・アンゲラー作・絵 今江 祥智訳 『すてきな 三にんぐみ』です。
1969年初版のロングヒットで、推薦図書などにも名前が挙がっている絵本。トミー・アンゲラーさんは、1998年には国際アンデルセン賞画家賞を受賞している、世界的にも有名な絵本作家。
ストーリーはこんな風。
黒いマントに黒い帽子の、怖いどろぼうの三人組は、夜になったら山を降り、獲物を探します。馬車を襲っては、奪った財宝を山のてっぺんの洞穴にある隠れ家にためこみます。
ある夜、三人組が襲った馬車に乗っていたのは、みなしごのティファニーちゃんだけが乗った馬車。奪うものがなかった三人組は、ティファニーちゃんを隠れ家に連れて行きます。
ティファニーちゃんが宝の山を発見し「これどうするの?」と聞くと、これまで、財宝の使い道を考えたことがなかったのですが、すてきな使い方を思いついた三人組は……
表紙からして、青い表紙に黒マントと、黒い帽子、そして人相の悪い目がギロギロとしていて、ちょっと怖そうな印象。でも、題名は『すてきな三にんぐみ』。なんだかアンバランスな感じですが、読み進めていけば、この表紙の画像と題名の不一致感の謎が解けます!
三人組は最初馬車を襲い、人々に恐れられ、とても怖い存在として書かれています。脅しの道具は、「らっぱじゅう」「こしょう・ふきつけ」「まっかなおおまさかり」と、意外とかわいいものも含まれていますが、なんといっても場面が暗い! 子どもは怖いという印象を持ちそうです。
でも、みなしごのティファニーちゃんを隠れ家に迎え入れてから、お話が急展開。
それまで、使い道など考えていなかった財宝をどんな風に使うのかな、と思っていたら、なんと、寂しく、悲しく、暗い気持ちで暮らしているみなしごたちをたくさん集めて、彼らのために使うことにしたんです。きっと、ティファニーちゃんと出会ったことで、本当に大切なもの、すなわち宝物の存在に気がついたのかもしれません。
三人組は、お話を通して、「目」と「黒い影」でしか、登場しません。そして、会話もしません。
でも、ティファニーちゃんを連れて帰るときのやさしい目、そして、みんなで暮らすために買ったお城に引越しをするときの子どもたちは、おそろいの赤い帽子に赤マント。
彼らが何も語らなくても、ハッピーな展開であることは、一目瞭然。
大きなお金を手に入れても、使い道がわからなければ、それまで。でも、すてきな三にんぐみは、すてきな決断をしてくれました。といっても、人々から奪ったお金なんですが……。作者のトミー・アンゲラーさんの風刺が効いている気がします。
無駄な会話や描写が一切なく、最初はちょっと怖い印象なので、最後まで読んで、ハッピーエンドでよかった、と思える1冊です。
3,4歳くらいからオススメされていることが多いですが、個人的には、5,6歳~小学1年生くらいになるとちょうど、いいかなと思います。大人は、こんなお話だったっけ? と思いつつ、三人組の表情など細かい部分に注目してみると、また違った印象を受けるかもしれませんよ。
トミー・アンゲラー作・絵 今江 祥智訳 「すてきな 三にんぐみ」(偕成社)
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