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リビングも浴室も、境界線はつくらない。団地をリノベーションした、子育て特化型の住まい(横浜)|みんなの部屋

2020/05/10 14:00 投稿

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閑静な住宅街の中に、茂木さんご夫婦の住まいはありました。

リノベーションのコンセプトは「子育てに特化した住まい」。

お名前:茂木さん夫妻
職業:建築士(夫)、管理栄養士(妻)
場所:神奈川県横浜市
面積:1R 66.31㎡
リノベ費:1,500万円
築年数:築40年
住宅の形態:団地

今回は、建築士としても、子を育てていくひとりの親としても必要な挑戦と工夫を凝らしたというお住まいにお邪魔してきました。

お気に入りの場所

森へつながるリビング

「マンションの場合、窓が1面に限られることが多いため、どうしても閉鎖的に感じられてしまいがちなのですが……。
リノベーションで部屋の境界線をすべてなくし、庭までひと続きになった開放感を感じれるようにしました。

周辺は住宅街なのですが、工夫することで森の中に住んでいるような空間を作りたかったんです。

子どもの感性を育てるのにも、植物や花に触れられる環境がいいと思っていました」(ご主人)

庭も、リビングから見た時に、緑が一面に広がるようなイメージとなるよう手入れを心掛けているとのこと。

ご夫婦が特にお気に入りなのが、リビングから望む春の景色。

団地を購入してから存在を知った庭先の桜の木を眺めながら自宅でお花見をするのが、毎年の楽しみなんだとか。

リビングと繋がる浴室

お部屋に入ったと共に驚いたのが、リビングと仕切りなく繋がる浴室スペースがあったこと。違和感なく居住空間に一体化しているものの、なぜこのような設計にしたのでしょうか?

「建築の師匠が、浴室を居室のように設計していて、私が独立してから作っていく住まいも同様の意識を持って設計していきたいと思っているんです。

浴室と居住空間がつながっている部屋は師匠の下でたくさん設計してきたものの、住む経験はしたことがなかったので、正直、使い勝手は半信半疑でした。
今後、自信を持ってお施主様に提案できるように、自分自身で暮らして試しておきたかったんです」(ご主人)

結果、住み始めて1年が経っても自信を持って紹介できる居心地のいい空間で、夫婦ともに、各自が浴室スペースで過ごすのが特にお気に入りの時間になっているのだとか。

「浴槽にゆったり浸かりながら読書をしたり、テレビを見るなどのひとときが好きです」(奥さん)

「湿気対策に既存梁を活かして蒸気をせき止めるようにしたので、暖かい空気がリビングに流れていくことはほぼありません。

また、洗い場を隣のスペースに分けたことで、カビの原因となる体の汚れや石鹸類の残りカスなどは浴室に残らないので、カビなどの心配もないんです。

入浴中も子どもの声が聞こえて安心ですし、快適ですよ」(ご主人)

希望をすり合わせ、完成した理想のキッチン

料理好きである奥さんと、話し合いながら完成させたキッチン。

「妻の最初の希望はアイランドキッチンだったのですが。スペース的にどうしても圧迫感が出てしまうので、何度も対話を重ねて今の形に落ち着きました」(ご主人)

「私がキッチンに求めるポイントは、作業スペースが広いことと外に見えない十分な収納スペースがあることの2点。

そのことを主人に伝えた結果、調理スペースをひとつの面にまとめることで、私の希望は叶えつつ部屋の開放感も保ってくれました。

いまのキッチンは料理がしやすくて、とても気に入っています」(奥さん)

いま、全力で楽しめる庭づくり

今回の住まいは、子どもが「自分の部屋を持ちたい」と言うくらいまでの期間を想定して設計されたとのこと。

「だからこそ、子どもが遊べるような庭も絶対に欲しいと思っていました」(ご主人)

「私自身、年を重ねるとお庭全体の手入れをすることが体力的に難しくなるかもしれないので。いまだからこそできる、庭の楽しみ方を満喫したいと思っています」(ご主人)

この部屋に決めた理由

夫婦で考えた条件を満たす、庭付きの住まい

「庭スペースを気に入ったことも大きいのですが……。

元々物件を探し始めてから、決定を迷わないように、夫婦で譲れない立地条件や建物条件について書き出していました。

その後2週間で8〜10件ほど見て、即決で今の家に決めることができたんです」(ご主人)

ちなみに立地条件には、職場からの近さ、子どもの学校からの近さやハザードマップの危険地帯から外れているかなどの11項目が。

建物条件としては水回りの移動ができるかどうか、集合ポストやエレベーター内に厳しい文言の注意書きがないかなどの9項目があったそうです。

残念なところ

将来を見据えた子ども部屋

物件選びから妥協なくこだわった住まいだからこそ、残念なところや気になることは今のところないのだとか。

「強いてあげるなら、今の家をとても気に入っているからこそ、この家に子ども部屋を設計してしまってもよかったかもなという点でしょうか」(ご主人)

お気に入りのアイテム

身軽で使い勝手のいいニーチェア

住まいの空間を極力区切らず柔軟な設計にしたのに合わせ、インテリアも動かしたり、可変しやすかったりするものを選んでいるそうです。

「家具は、その時々で空間に合わせた使い方ができることを条件に選んでいます。

例えばこちらのニーチェアは、妻でも楽に持ち運べる軽さ。普段は室内で使っていますが、晴れた日にはバルコニーに移動させてゆったり過ごすんです。使い勝手がよくて気に入っていますね」(ご主人)

味わいを深める、作家の器たち

奥さんは、職場の人と行った益子で益子焼に出会ったのがきっかけで、作家さんの器たちを集めるようになったのだとか。

「いまでは益子焼以外の器もありますが、器によって料理の味が驚くほど変わるからおもしろいんですよね。

キッチン収納を多くした分、ついつい安心して数を購入してしまいがちなので、最近は意識して慎重に選ぶようにしています」(奥さん)

夫婦の出会いを生んだカメラたち

建築士と管理栄養士、一見すると出会う機会がなさそうな異業種のおふたりが出会ったのは、写真が趣味で集まる社会人サークルのグループ展だったそうです。

「ふたりとも写真が好きで。子どもが生まれる前は、いろんな場所へふたりで写真を撮りに行きましたね。

いまでも季節毎に、息子と3人で遠出しては写真を撮っています。そのひとときが、家族にとって掛け替えのないものになっているなと感じています」(奥さん)

暮らしのアイデア

お気に入りの家具と花を置ける空間づくり

家のベースカラーをベージュ、ホワイト、グレーの3色に統一したのにも、理由があるそうです。

「空間の色合いとマッチしないことを理由に、気に入っている家具を処分しなきゃいけないのは避けたかったんです。

内装は背景としてベーシックな色合いにすることで、手持ちの家具や今後気に入るであろう家具や小物、妻の好きな花が引き立つようにしたいと考えました」(ご主人)

収納は壁側へ

「開放感は保ちつつ、収納スペースは確保できるよう強く意識しました。子どもがいると持ち物も増えていきますから。

視界を遮る要因になる飾り棚などは設けず、収納スペースをすべて壁側に寄せることで、全体がスッキリと見えるようにしました」(ご主人)

育児を窮屈にしない、水回りスペース

お子さんがまだまだ小さく、目を話した隙にどこかへ行ってしまうことから、お子さんのすぐそばで作業ができるように水まわりのスペースは元の間取りよりも一回り大きくしたのだとか。

「お風呂上がりに髪を乾かしたり歯磨きをするときに窮屈にならないよう、カウンターも広めに設けてもらいました」(奥さん)

これからの暮らし

家族のライフスタイルの変化とともに、未来の住まいの創造を

「ここは今後5年~10年、息子が思春期を迎えるまでの家だと割り切って購入しリノベーションした住まいです。その後は売却するか賃貸物件にできればと考えています。

そして別に一軒家を建てたいねと夫婦で日頃から話しては、将来の理想の住まいについてイメージを膨らませています」(ご主人)

「いまは、ほとんどの人が、子どもの人数を含めた家族の最大値に合わせた設計で家を建てるので、結果的に子どもが家を出た後に居住スペースが余ってしまうケースが少なくありません。

そのような悩みを解決するためにも、これから10年後、またその次の終わりまでを見据えた未来の住まいをどう作っていけばいいのか、公私ともに、これからじっくり考えていきたいと思っています」(ご主人)

10年後、その答えとなる家が建ったらぜひまた取材で訪れたい。そんな風に思ったのでした。

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