そんな中から、これは自信を持ってみんなに普及したい!と思ったものをテーマで区切り3回にわたってご紹介。
最後は「カルチャー」編です。
小島秀夫監督の最新作『デス・ストランディング』 by野田
『メタルギア』シリーズの生みの親である小島秀夫監督の最新作『デス・ストランディング』は、ゲーム体験を根っこから変えてしまった名作。ゲームといえば戦闘が華として扱われがちですが、このゲームをやるモチベーションは「運ぶこと」。主人公も配送を生業としています。
こう言うと一見地味に聞こえるかもしれませんが、運ぶ舞台はある現象により荒廃の地となったアメリカ。
道路もなく、岩と土とコケ、崖と川が人を阻み、配送をしようとすればテロリストに襲われる……。
そんな世界だからこそ、モノを運び、人と人、都市と都市を繋ぐことが、「こんなとんでもないことが出来るのはアンタくらいだ」と賞賛される。
しかし同時に、繋がれば不幸を運んでくると言われたり、「かつてネットが世界を繋いでも誰も幸せにならなかった」と言われていたりと、繋がることのネガティブな側面にもスポットライトが当たります。
それでも、他のプレイヤーとゆるやかに繋がって助け合いつつ、キーワードである「分断」を超えようとする名作。テーマが現代的だからこそ、いまプレイする意味があります。
カネコアヤノ『燦々 ひとりでに』『わたしのまっしろときんいろ』 by岩澤
2019年の1年間、間違いなくもっともたくさん聞いたであろう、カネコアヤノの「燦々」。嘘や媚びへつらいのない頑固で愛に溢れたことばと声が、そのままパッケージされたようなカセットと詩集です。
ジャケットに写されているのは、カネコアヤノの愛猫「日の出」。
シンプルでまっすぐなカネコアヤノの歌に惹かれるのは、猫の生き方に憧れる理由と同じ理由があるからかも。
彼女の歌の中に守りたい自分がひとりでも見つかれば、この先もほんとうに笑って生きていける気がします。
homecomings 「pet milk」 by松崎
4月にキネマ倶楽部で行われた「slow summit」はライブとしては珍しい2部構成。これが忘れられず、今年は今まで以上にhomecomingsを追っかけてきたような気がします。それをふまえての2019年最後のライブは、聴く人を明るく前向きにさせてくれる素敵な時間に。ギターの福富さんが「つらいこともあるし、優しくないと感じることもあるけど前を向いていこうね」というお話を聞いていた時は、心がグッと熱くなりました。
新しい姿をたくさん見せてくれるホムカミに、来年も期待してついていきます。
「スパイダーマン・スパイダーバース」 by田口
冒頭のコミックスコードからコマ割りや吹き出しを意識した映像表現、そして“漫画原作者”であったスタン・リーからのメッセージも含めて、「これはアニメーションムービーでありコミックでもあるんだ!」と強く思わされた傑作。
コミックへのリスペクトを感じる革新的な映像の中で展開されたのは、さまざまな愛の物語。悪役もヒーローも、登場するほとんどの人物の行動原理にはかたちの違う愛が隠されていて、それらがストーリーの進行と共に紐解かれていくたび、キャラクターたちが皆愛おしくなっていった。
年末の鑑賞リストに加えて欲しい1本だが、情報量がとにかく多いので個人的には吹替版がオススメ。