「椅子の巨匠」こと、ハンスJ.ウェグナーが1949年にデザインしたYチェア。60年以上に渡り、不動の人気を誇っています。
しかし、一体どこがそんなに魅力なのか、20年使ってきたIさんに聞いてみました。
60年愛されるだけの形
やっぱり、まずは形としての美しさじゃないでしょうか。
光に当てたり、見る角度を変えたりする度に、いろいろな表情を見せてくれるんです。
後ろから見た姿なんてね、ちょっと彫刻的ですらあるんですよ。
そう語りながら、どこか遠い目でYチェアを見つめるIさん。
末の娘が生まれたタイミングにカール・ハンセン&サンで購入してからはや20年。
家族の歴史を共にしながらも、まだまだ飽きは来ていないといいます。
疲れない座りごごち
「座ってみてもいいですか?」と聞くと、「もちろん」と嬉しそうなIさん。
少し遠慮しながら礼儀正しく座ってみると、「違う違う、そう座るんじゃないんです」とIさん。
Yチェアは「くつろぐ」ことにこそ、その力を発揮するんです。
例えば、背板が斜めになっているから、もたれて座ることに適してる。
なにより背中のY字に注目です。そこが二股になっているから、寄りかかっても背骨が背板に当たらないでしょう。
なるほど、もたれてみると確かに痛くない!
背板にクッションがあるわけではのに、デザインの工夫ひとつで気持ちよく座っていられるんですね。
長ーく使える
このYチェアはね、15年目くらいで一回ペーパーコードを張り替えてもらってるんですよ。
※ペーパーコード:Yチェアのヒモ。実は紙でできてる。
表面も磨いてもらってね。だから、20歳とは思えない美しい木肌をしているでしょう。
まったくその通りです。話を伺うまで、てっきり新品なのかと思っていたほど。
リペアは手間や金額など、大変ではないのでしょうか?
いや、ぜんぜんですよ。青山のカール・ハンセン&サン ジャパンに持っていけば、2週間くらいでやってくれますから。
金額も確か2万円くらいだったかな。すごくキレイになって帰ってきてくれて、感動しましたよ。
う〜ん、この手厚いサポートが愛好家を増やしていくのかもしれない……。
価格的にも手が届きやすいのが嬉しい
あとはね、こんなことを言うとアレだけど、比較的手が届きやすいんですよ。
本体価格で10万円くらい。名作椅子ってどうしても30万とかするものも多いからね……。
それに比べたら手が届くし、すこし頑張れば何脚か購入できるから。
そう口にするIさんは、窓際のワークデスクにYチェアを添えていました。
毎年1万脚が日本市場に出ると言われるYチェア。
不思議とMacとも調和するその姿に、一体どれだけの家庭で愛され、親から子どもに受け継がれてきたのか思いを馳せてしまいます。
ー僕もいつか、息子や娘に受け継いでみたいな。そう思いながら、I邸を後にしたのでした。